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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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275/482

仙台式・天下取り計画(※本人のみ本気)

佐々木玲香は、新橋のヒロ室に入った瞬間から、

もう“勝負”を始めていた。


(さて……まずは戦力分析、ね)


表情はにこやか。

背筋はまっすぐ。

声はワントーン高め。

だが、心の中では完全に査定モードである。


東日本ヒロインたちは、全体的に穏やかだ。

西日本の連中のような、

河内だの京都だの播州だのが飛び交う修羅場感はない。


――これは、いける。


玲香は確信した。


まず目に入ったのは、

イベントコンパニオン兼務の麗奈。


(……顔、強いわね)


正直、容姿勝負では分が悪い。

だが、数秒観察して玲香は口元をわずかに緩めた。


(あ、抜けてる)


書類を逆さまに持っている。

挨拶のタイミングを一拍外す。

話のオチで必ず一瞬止まる。


(ここだわ)


「天然」「隙がある」「愛され系」

それは裏を返せば、

主導権を握れば操れるということ。


(容姿は負けても、立ち回りで勝てる)


次に視線を移したのは、

いつも周囲に人が集まっている陽菜。


(……人気者ね)


顔立ちも良い。

笑顔も自然。

子ども受けも抜群。


だが。


(幼い)


言葉選びが素直すぎる。

感情が顔に出る。

計算ができない。


(持ち上げて、落とすのは簡単そう)


玲香は心の中で、

すでに“仮想インタビュー炎上シナリオ”を二つほど描いた。


次に、

みのりとひかり――通称グレースフォース。


(……あ、ここは無理)


話していなくても分かる。

視線の置き方、会話の間、言葉の精度。


(知的水準が違う)


しかも二人でいる時の結束が強い。

割り込む余地がない。


(勝負は避けましょう。長期戦は不利)


玲香は即座に撤退を決めた。

この判断だけは、かなり賢かった。


詩織と萌音については、

最初から視界にすら入れていない。


(子ども向けイベント専門?

 ……ジャンル違い)


玲香は子どもが嫌いなわけではない。

ただ、興味がない。


自分のキャリアに、

何のプラスにもならないと判断しただけだ。


そして――

最後に残ったのが、月島小春だった。


(……この人)


リーダー格。

空気を読む力が異常に高い。

前に出ないのに、全体を掌握している。


(でも……)


観察しているうちに、

玲香は“ほころび”を見つけた。


(そそっかしい)


資料を落とす。

予定を一日勘違いする。

細かい詰めが甘い。


(ここね)


小春は、

「全体を考えること」に全力で、

「自分を守ること」がおろそかだ。


(取り入って、補佐役を演じて、

 気づいたら主導権を握る)


玲香の脳内では、

すでに「臨時リーダー就任」までの道筋が完成していた。


「小春さんって、すごいですよね♡

 私、尊敬してます♡」


その声は甘く、

その笑顔は完璧だった。


小春は照れて笑う。


「え、そう?

 いやー、そんなことないよ」


(かかった)


玲香は内心、

小さくガッツポーズを決めた。


――だが。


彼女はまだ知らない。


このヒロ室では、

空気を読む人間が一番怖いということを。


小春は、

玲香の“取り入り方”を、

最初の三分で見抜いていた。


そして、

何も言わずに、泳がせているだけだった。


東日本ヒロインたちは穏やかだ。

だが、決して甘くはない。


佐々木玲香の

「仙台式・天下取り計画」は、

まだ誰にも邪魔されていない。


――いや。


邪魔されていないと思っているのは、本人だけだった。


物語は、

ここから静かに、そして盛大に、

ズレ始める。


次に笑うのが誰なのか。

それだけは、もう決まっている。

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