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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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272/474

核も笑いも、落とすな――広島ヒロイン、世界平和を語る

春の陽射しがやわらかく降り注ぐ地方都市のイベント広場。

ステージ上には、戦隊ヒロインのロゴが大きく掲げられている。


司会の声が響いた。


「続いては――

 広島県出身、戦隊ヒロイン屈指の武闘派!

 江波のどかさんによる“平和へのメッセージ”です!」


拍手。

その拍手の中に、わずかに緊張が混じるのを、美月は感じ取っていた。


のどかが一歩前に出る。

筋肉質な体躯に、整った顔立ち。

どぎつい広島弁を封印し、静かな声で語り始めた。


「うちは広島で生まれて、広島で育ちました」


「被爆四世です」


会場が、すっと静まる。


「原爆は、歴史の教科書の話じゃない。

 うちの家族の話で、

 この街の、毎日の空気の話なんです」


最前列の子どもたちが、じっと聞いている。


「核兵器のない世界。

 それは、きれいごとじゃなくて、

 当たり前であるべき未来だと思っとります」


ここまで、完璧。

真面目で、誠実で、胸を打つ。


だが――

美月は知っている。


このまま行くと、

会場の空気が“修学旅行の平和学習”になる。


のどかは続ける。


「ただし。

 うちは、こうも思うんです」


「“話し合いだけで平和になるなら、

 とっくに世界は平和になっとる”」


会場がざわつく。


「平和を願うだけじゃ、守れんもんもある。

 だからうちは――」


一拍、置いた。


「平和のために、戦うヒロインでおりたい」


ここだ。


美月、満を持して前に出る。


「ちょっと待ちぃ!」


のどか、即座に横目。


「……来たのう」


美月、客席に向かって。


「今の流れやと、

 この後“世界は私が守る!”言うて

 マイク投げそうやったで!」


笑いが起きる。


のどか、腕を組む。


「投げんわ!

 マイク高いんじゃけぇ!」


会場、爆笑。


美月が続ける。


「でもな、

 この人ほんまに平和の話になると

 止まらんねん」


「さっき楽屋でな、

 核兵器の話から始まって、

 最後“お好み焼きは世界を救う”言うとった」


のどか、即反論。


「救うじゃろ!

 腹減っとる時にケンカは起きん!」


拍手と笑い。


美月、うなずく。


「確かに。

 世界平和への第一歩は、

 空腹を満たすことやな」


のどか、少しだけ声を落とす。


「うちは、

 戦うことが好きなわけじゃない」


「でも、

 守るために立ち上がることを

 やめたら、

 それは平和を諦めることじゃと思う」


美月、珍しく真顔。


「この人な。

 筋肉ゴリゴリやけど、

 中身は誰よりも平和主義や」


「やかましいわ!」


また笑い。


司会がマイクを持つ。


「お二人は“戦隊ヒロインのゴールデンコンビ”と

 呼ばれていますが――」


美月、即答。


「真面目な話を、

 この人がしすぎるからです」


のどか。


「それを茶化す人が、

 隣におるからです」


二人、顔を見合わせる。


美月。


「つまりな」


のどか。


「世界平和は、

 一人じゃ無理じゃけぇ」


二人同時に。


「ボケとツッコミが必要なんです!」


会場、大爆笑と拍手。


ステージ袖に戻りながら、美月が言う。


「なあ、のどか」


「今日はええ話やったで」


のどか、照れ隠しに。


「美月がおらんかったら、

 説教で終わっとったわ」


美月、胸を張る。


「それがウチらの役割や」


平和は、

重くて、難しくて、

放っておくとすぐ形骸化する。


だから――

笑わせながら、

考えさせる。


江波のどかと赤嶺美月。


この二人の漫才のような掛け合いは、

今日もどこかで、

世界をほんの少しだけ、

マシにしている。


たぶん。

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