粉は正義を裏切らない――のどか vs まどか・鉄板上の和平交渉
大阪府の下町某所。
西日本ヒロインたちの溜まり場と化して久しい
**「てっぱん坂井」**の鉄板は、この日いつもより熱かった。
理由は単純明快。
鉄板のこちら側に立つ
坂井まどか(大阪・粉もんサラブレッド)
そして、腕を組み一歩も引かぬ
江波のどか(広島・柔道有段者・実家お好み焼き屋)。
粉もん宗教戦争、開幕である。
まどかが、営業スマイルで言った。
「今日はな、
大阪の“ちゃんとした”お好み焼きを――」
その瞬間。
「……“ちゃんとした”言うた?」
のどかの低い声。
空気が、鉄板より先に焼けた。
「混ぜて焼くんが正統派やろ?」
「何言いよるんかのう。重ねて蒸して完成させるんが文化じゃけぇ!」
美月、小声。
「始まったで……これは長いやつや……」
まどか、冷静を装う。
「大阪はな、
家庭で誰でも再現できる味やねん。
粉・卵・キャベツ、全部が一体になるんや」
のどか、即座に被せる。
「一体?
それ、全部同時に焼いただけじゃろ?」
「広島はな、
野菜の水分で蒸し焼きにして、
麺で香ばしさを足す。
これは設計図のある料理なんよ」
彩香が腕を組む。
「……あんたら、
料理の話しとるんか、
国家理念の話しとるんか、
どっちなん?」
播州弁のツッコミが刺さる。
紀伊ハンターの3人。
あかり「えっと……ソースは甘い方が好きです」
麻衣「マヨネーズは、どの段階で……?」
美咲「とりあえず肉焼いてええです?」
綾乃、はんなり首を傾げる。
「お二人とも……
粉もんに人生かけすぎどすえ」
美月、爆笑。
「京都の人に言われたら終わりやで!」
ここで、
黙って様子を見ていた真央が箸を置いた。
「ちょっと待ちゃあ」
一瞬で静まる。
「なあ、あんたら。
大阪も広島も、
どっちも人を腹いっぱいにして幸せにする料理だがね」
尾張弁が、妙に説得力を持つ。
「粉の焼き方でケンカするぐらいなら、
食べてから殴り合いなさい」
美月「殴り合いはアカン!」
真央、平然。
「冗談だがね」
綾乃が、扇子でも持ちそうな勢いで微笑む。
「つまりですえ。
大阪は“日常の味”、
広島は“完成された一皿”。
用途が違うだけどす」
まどか「……なるほど」
のどか「……言われてみりゃ、そうじゃの」
彩香、腕を広げる。
「ほな結論は一つや。
どっちも正解、食べる人が勝ち」
後日。
「てっぱん坂井」新メニュー。
平和焼き(広島式)
数日後、広島。
「みさちゃん」黒板メニュー。
平和焼き(大阪ネギ焼き風)
のどか、写真を見て満足げ。
「鉄板一枚で世界は丸うなるんじゃ」
まどか「ほんまそれ」
美月「戦隊ヒロインより、
粉もん同盟の方が世界救えるんちゃう?」
真央、ぼそり。
「少なくとも、
腹は満たせるがね」
こうして――
粉もん戦争は、方言と満腹で終結した。
なおこの日以降、
ヒロインたちの体重と幸福度は
比例して増加したという。
正義は、
だいたいソース味。




