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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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267/501

初手が強すぎる女 ― 広島から来た最終結論

大阪府内某所、ヒロ室西日本分室。

米国大使館占拠事件という、あまりにも重たい極秘任務が秘密裏に解決し、報道もようやく一段落。

ヒロ室には、久しぶりに平和すぎる空気が戻っていた――はずだった。


「だから言うてるやろ、あれは地毛やって!」


赤嶺美月が机を叩く。


「美月はん、あれはどう見てもヅラどす」


はんなりと、しかし今日はやけに強気な西園寺綾乃が即座に返す。


「なんでやねん、どこがやねん!」

「逆にどこが地毛どす?」


――そう。

戦隊ヒロイン西日本分室では、通販会社のI田社長・ヅラ疑惑という、もはや世界平和と何の関係もない論争が、再燃していた。


「私は綾乃の言う通りやと思うで。あれはヅラや」


彩香が腕を組んで参戦。


「いやいや、あの生え際は努力の結晶やと思う」


坂井まどかは美月側につく。


瞬時に分室はヅラ派 vs 地毛派で真っ二つ。


巻き添えを食らったのが紀伊ハンターの三人だった。


「え、えっと……私は地毛だと思います……」


あかりが恐る恐る言うと、


「私は……ヅラ、かな……」


麻衣が小声で続く。


「……美咲はどっちや?」


全員の視線が集まる。


「え? え? えっと……」


美咲が完全にフリーズした、その瞬間。


ガチャ。


ドアが開き、隼人補佐官が入ってきた。


「何の話してるんですか?」


「I田社長のヅラ疑惑や!」


全員が一斉に言う。


隼人補佐官は一瞬考え、真顔で言った。


「僕は……粉だと思います」


「粉?」

「どういう意味や?」


「髪を増やす、黒い粉です。振りかけて、定着させて、自然に見せるやつです」


「なんやそれ!」

「そんな魔法みたいなもんあるんか!」


隼人補佐官は、なぜかホワイトボードを使い、

**“髪を太く見せる理論”**を図解し始めた。


「つまり、地毛かヅラかの二択ではなく、第三の選択肢です」


「余計ややこしなっとるやないか!」

「世界の真理みたいに言うな!」


ひとしきり騒いだところで、隼人補佐官が咳払いをした。


「……では本題に入ります」


空気が、すっと変わる。


「戦隊ヒロインプロジェクトは、今後、中国・四国、そして九州地方にも本格的に展開していきます」


その言葉に、全員が姿勢を正す。


「本日、新しい仲間を紹介します」


ドアの向こうから、ゆっくりと足音。


現れたのは――

整った顔立ち。

だが、肩幅が広い。

太腿が、強い。

全体的に、圧がある。


「……強そう」


彩香が、思わず本音を漏らした。


「広島から来ました、江波のどか言います」


どぎつい広島弁が、分室に響いた。


「柔道は段持ち。戦うんは嫌いじゃないけど、平和が一番ええ思うとります。よろしくお願いします」


一瞬の沈黙。


そして美月が、にっと笑った。


「うち、あんたとはすぐ仲良うなれそうやわ」


のどかも笑う。


「そう言われると安心するわ。大阪の人、うるさいって聞いとったけど、想像通りじゃね」


「なんやと!」


一気に距離が縮まった、その瞬間だった。


美月が、思い出したように聞く。


「なあのどか。I田社長の髪型、どう思う?」


間髪入れず、のどかは言った。


「あれはカツラじゃけぇ」


即答。

一切の迷いなし。


「ほら見ぃ!」

「ほらぁ!」


ヅラ派が一斉に立ち上がる。


美月は一瞬固まり、次の瞬間、大笑いした。


「初登場でそこ行くんかい! 最高やん!」


こうして――

広島弁がきつくて、拳も重くて、結論が早い女、

江波のどかは、

戦隊ヒロイン西日本分室に、あまりにも鮮烈な第一歩を刻んだ。


この日から、

ヒロ室の議題に**「最終結論:のどか判断」**という項目が増えたことを、

まだ誰も知らない。

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