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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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266/474

紅と藍の密命 ― 戦隊ヒロイン極秘任務録  第19話(最終話) 英雄は語られず、日常はだいたいうるさい

騒動は、終わった。

正確に言えば、「終わったことになった」。


報道規制が敷かれ、

テレビからは専門家もコメンテーターも消え、

ネットに残ったのは、


「ヒロ室CIA説」

「実は宇宙人関与」

「エリア51の日本支部」

「戦隊ヒロイン実験体説」


……などという、

もはや誰が最初に言い出したのか分からない

どうでもいい都市伝説の残骸だけだった。


真実は語られない。

記録にも残らない。

そして、誰も責任を取らない。


それが、現実だった。


新橋。

いつものヒロ室ミーティングスペース。


ホワイトボードには

「今月のイベント予定」と

「備品:乾電池 単三×8」と書かれている。


世界を揺るがした大事件の気配など、

ここには一ミリも残っていない。


「ちょっと待ちぃや綾乃」

「何どす、美月はん」


美月と綾乃は、

相変わらず机の前で言い争っていた。


「そもそもな、あのYグループのI社長はな」

「またそれどすか」

「絶対地毛や思うねん!」

「前も言いましたけど、あれは――」

「カツラや言うんやろ!」


二人の口論は、

もはや戦争より長く続いている。


その横で彩香が深いため息をつく。


「……アンタらなぁ。

世界救うた直後にする話ちゃうやろ」


「いや彩香、これは重要な文化論争や」

「何が文化やねん」


遥室長は、少し離れた場所で

書類に目を落としながら、

二人のやり取りを聞いていた。


かつて、

彼女はこの二人を

極秘任務に送り出した。


生きて帰れるかどうか分からない場所へ。

名前も残らない仕事へ。


だが今、

目の前にいるのは――


口喧嘩して、

お菓子の取り合いをして、

くだらないことで笑っている、

いつものヒロインたちだった。


遥室長は、

ふっと小さく笑い、ぽつりと言った。


「結局いちばん平和やったのは、

何も知らんふりをしてた時間だったかもしれんね」


誰も聞いていないようで、

なぜか全員が一瞬、静かになった。


美月は、少しだけ間を置いて言った。


「まぁ……

語られへん英雄ってのも、

悪くないんちゃう?」


「そうどすね」

綾乃も頷く。

「名前が残らへんからこそ、

普通に生きられる、いうこともありますし」


「普通に喧嘩もできるしな」

「それは余計どす」


その瞬間、

またいつもの言い合いが始まった。


その日も、

戦隊ヒロインは任務に向かう。


イベントへ。

訓練へ。

子どもたちの前へ。


誰も知らない。

誰も語らない。


中米のあの国で、

銃声の中を走ったことも、

一人の少年兵と夢を語った夜も、

すべては胸の奥にしまったまま。


英雄は語られず、

勲章もなく、

記録も残らない。


けれど――


「ほら美月、遅刻するで」

「分かっとるわ!今行く!」


今日も彼女たちは、

普通に笑って、

普通に走っていく。


それが、

彼女たちが守った“日常”だった。


そして物語は、

誰も知らないまま、

静かに幕を閉じる。


― 完 ―

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