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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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紅と藍の密命 ― 戦隊ヒロイン極秘任務録  第9話 疑念の銃口、静かに迫る夜明け

大使館の空気が、明らかに変わった。


それは銃声でも怒号でもなく、

音が減ったことで美月は気づいた。


見張りの足音が一定のリズムを刻まなくなった。

廊下の話し声が、途切れ途切れになる。

誰かが「配置」を変えている。


「……来るな」


美月は、床に座ったまま小さく呟いた。


綾乃も同じ感覚を掴んでいた。

これは戦闘任務で何度も味わった、嵐の前の沈黙だ。


ほどなくして、重たいブーツ音が近づく。


テロリスト幹部の男だった。

年齢は四十前後。

無精髭に、油断のない目。


その視線が、まずルイスに向けられる。


「You. Step back」


短く、冷たい命令。


ルイスは一瞬だけ美月と綾乃を見る。

その目に、迷いと、覚悟が混じった。


「Go」


銃口が、床ではなく胸の高さに向けられる。


ルイスは何も言わず、一歩下がった。


美月は思わず立ち上がりかけたが、

綾乃がそっと袖を引く。


「……今は、動かんと」


ルイスが引き離され、

扉の向こうに消えるまで、

美月は視線を外せなかった。


「……あいつら、気づいたな」


美月の声は低かった。


「ええ。遅かれ早かれ、やと思てた」


綾乃は周囲を見渡す。

監視の人数が増えている。

銃の持ち方が変わっている。


——これは、準備だ。


数時間後。

部屋の隅で、美月は壁にもたれて目を閉じる。


耳を澄ます。


遠く、かすかな振動。

建物の奥で、通信機の短い電子音。


「……来てるわ」


美月がぽつりと言った。


綾乃は静かに頷く。


「突入部隊やね。たぶん、今夜か明け方」


二人の間に、言葉は要らなかった。


この任務の本当の始まりが、

ようやく来たのだ。


「なぁ、綾乃」


「何どす?」


「もし、途中でバラけたら」


美月は一瞬だけ笑った。


「その時は、うちが人質まとめる。綾乃は出口探して」


「……役割分担、逆やと思うけど」


「うるさい。河内の勘や」


緊張の中で、ほんの一瞬、空気が緩む。


だが次の瞬間、

外から低く、重たい衝撃音が伝わった。


遠雷のような音。


床が、微かに震える。


綾乃の背筋が伸びる。


「……始まる」


廊下で怒鳴り声が上がる。

走る足音。

装填音。


銃口が、完全にこちらを向いた。


美月は拳を握る。


——守る。

——逃がす。

——生きて帰る。


そのすべてが、一つの線に収束していく。


その時、ふと、美月の脳裏に浮かんだのは

河内音頭の、あの不器用なステップだった。


「……生きてたら、また踊らせたるからな」


誰にともなく、心の中で呟く。


綾乃も、胸の奥で同じことを思っていた。


——この夜を越えられたら。


次の瞬間、

建物の外で、はっきりとした爆発音が響いた。


それは、夜明けの合図だった。

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