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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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紅と藍の密命 ― 戦隊ヒロイン極秘任務録  第8話 銃口の向こうで、夢は踊る

大使館の一室は、昼か夜かも分からない薄暗さに沈んでいた。

窓の外には銃を構えた見張り。

その影が壁に長く伸び、時間の感覚を奪っていく。


美月は、床に腰を下ろしたまま、ぼんやりと天井を見つめていた。

何日目か、もう数えるのをやめていた。


「……ほんま、暇やな」


つい口から零れた独り言に、綾乃が小さく息をつく。


「静かにしとき。聞こえたらややこしゅうなる」


その時、銃を肩に掛けた少年兵が近づいてきた。

ルイス。

ここ数日で、三人の間では名前で呼ぶことが当たり前になっていた。


「You bored?」


カタコトの英語。

それでも、もう十分に通じる。


「Bored. Very bored」


美月が大げさに肩を落とすと、ルイスは小さく笑った。

その笑顔に、最初の緊張はもうない。


綾乃はその様子を見て、胸の奥に小さな違和感を覚える。

これは危険だ。

分かっている。

だが、止められない。


——これがストックホルム症候群だと、頭では理解していた。


ルイスは、床に座り込むと、ふいに真剣な顔になった。


「My father… he was government. Old government」


前政権。

その言葉だけで、この国の歴史がにじみ出る。


「He was not good man. But… this government is worse」


綾乃が静かに頷く。


「腐敗しきってる、ということやね」


ルイスは驚いたように目を見開き、ゆっくり頷いた。


「Yes. Corruption. People starving. Leaders rich」


銃を持つ手が、わずかに震える。


「I don’t want this. I want change」


美月は、思わずルイスを見た。


「変えたいんや、この国」


ルイスは力強く頷いた。


「I fight for my brother and sister. Education. No gun」


綾乃の胸が、きゅっと締めつけられる。

彼はテロリストではない。

ただ、銃を持たされてしまった少年だ。


「……日本来たらな」


美月が唐突に言った。


「銃いらん。代わりに、踊るんや」


「Dance?」


「せや。日本の伝統芸能」


そう言って、美月は立ち上がった。


「河内音頭いうねん」


綾乃が慌てて小声で制止する。


「ちょ、美月、ここで踊る気なん?」


「大丈夫や。静かめバージョンや」


意味不明な理屈だった。


美月は足を軽く踏み鳴らし、手拍子を一つ。


「♪ちょいと聞いてや 河内の噂〜」


低く、抑えた声。

だが、節は確かだった。


ルイスは呆然と見つめる。


「This… dance?」


「せや。輪になって踊るんやで」


美月はルイスの足元を指さす。


「右、左、トン」


ルイスは見よう見まねで動く。

ぎこちないが、妙にリズムがいい。


「おお、ええやん! センスあるで!」


思わず声が弾む美月。


綾乃は周囲を警戒しながらも、思わず口元が緩む。


「……ほんま、場違いにもほどがあるわ」


ルイスは、少し照れたように笑った。


「If peace… I dance more」


「来たらええやん、日本」


美月は即答した。


「みんなで踊ろ」


その瞬間だけ、

銃も、国も、立場も、すべて消えた。


ただ、夢の話をする三人がいた。


だが、廊下の向こうで、足音が止まる。


監視の視線が、こちらを探る気配。


綾乃は、静かに立ち上がった。


「……今日は、ここまでやね」


ルイスは名残惜しそうに頷く。


「Be careful」


その言葉が、あまりにも人間的で、

美月は胸の奥が痛くなった。


銃口の向こうで語った夢は、

あまりにも現実的で、

あまりにも儚かった。


それでも三人は、確かに同じ未来を思い描いた。


——この国に、銃のいらない日が来ることを。

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