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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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251/471

紅と藍の密命 ― 戦隊ヒロイン極秘任務録 第4話 人質交換の交換地点に到着 ――崩れかけた国家、沈黙の大使館

中米某国――

地図の上では小さな国だが、その名を聞いて安定を思い浮かべる者はいない。


政権は短期間で何度も交代し、選挙のたびに武装勢力が街を封鎖する。

軍と警察は名ばかりで、治安維持の実権は民兵組織と麻薬カルテルが握っていた。

国際社会からの支援金は、途中で霧散するか、武器に変わる。

失敗国家――そう呼ばれて久しい。


首都の空港に降り立った瞬間、綾乃は空気の重さを感じ取った。

湿度だけではない。

街全体が、常に緊張をはらんでいる。


「……京都とは、えらい違いどすな」


低く呟いた声は、美月だけに届いた。


「大阪でも、ここまで殺気立っとらんわ」


軍の護衛車両に挟まれ、二人は米国大使館へ向かう。

道端には銃を抱えた若者たちが立ち、信号はほとんど機能していない。

壁には、意味不明なスローガンと宗教的な落書きが重なっていた。


 


今回の犯行グループは、国際的なテロ組織《サン・ロハス解放戦線》。

表向きは民族独立と反米を掲げているが、実態は武器と人質で稼ぐ犯罪集団だ。


彼らの背後には、《ジェネラス・リンク》の影がある。

資金、偽造書類、国境を越える移動ルート。

すべてが“どこかで見た手口”だった。


「思想なんて後付けやな」


美月が吐き捨てる。


「人の命を道具にする連中ほど、立派な言葉を使いたがる」


綾乃は静かに頷いた。


「せやからこそ、厄介どす」


 


やがて車列は、問題の米国大使館前に到着した。


本来なら、国旗がはためき、厳重な警備に守られているはずの場所。

しかし今は、周囲にバリケードが築かれ、武装した犯人たちが屋上と窓に陣取っている。


割れたガラス。

焦げた壁。

敷地内に残る、数か月前の銃撃戦の痕跡。


「……ここが、交換地点や」


美月の声が、わずかに低くなる。


隼人補佐官が、二人に最終確認を行った。


「ここから先は、我々は介入できない。

通信も最低限だ。

引き返すなら、今だ」


綾乃は、迷いなく答えた。


「行きます」


美月も続く。


「約束したやろ。最後まで」


その表情は、戦隊ヒロインとしてではなく、

“覚悟を決めた一人の人間”のものだった。


二人は、武器を持たない。

身分証も、偽装された最低限のものだけ。

人質交換要員として、正面ゲートへ歩を進める。


犯人側の男が、銃口を向けながら近づいてきた。


「止まれ。名前は?」


綾乃が流暢な英語で答える。


「交換要員です。条件は確認済み」


男は二人をじろじろと見回し、薄く笑った。


「ずいぶん若いな」


「そっちも、思ったより雑どすな」


思わず出た綾乃の一言に、美月が横目で睨む。


「綾乃、挑発すんな」


「……つい」


男は意味を理解できなかったのか、首を傾げながら合図を出した。


ゲートが、軋む音を立てて開く。


その瞬間。

二人は一歩、境界線を越えた。


――潜入開始。


美月は、心臓の鼓動を感じながらも、口元だけで笑った。


「なぁ綾乃」


「なんどす?」


「今さらやけど、無事帰れたら」


「?」


「I社長の真相、もう一回ちゃんと調べよ」


綾乃は、ほんの一瞬だけ微笑んだ。


「……生きて帰れたら、何度でも議論しまひょ」


二人の背後で、ゲートが閉まる。


重たい金属音が響き、外界は遮断された。


ここから先は、交渉か、裏切りか。

そして――生還か。


紅と藍は、静かに闇の奥へと歩き出した。

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