げんこつに、静岡の絆を込めて
かつて、東と西の電気を分けた川がある。
その名は、富士川。
今はもう電圧の違いは解消されたが、そこに新たな「境界線」がある。
──それが、政府公認「戦隊ヒロインプロジェクト」の東西連携会議だ。
舞台は、静岡県富士市。富士山を仰ぐこの町に建てられた、政府直轄の防衛・調整施設。
通称「富士中間拠点」。
ここに集うのは、関東の防衛を担う東チームの小春、
関西方面を中心とする西チームの美月と綾乃、
そして2チームをつなぐ司令塔、政府広報官の**芹沢遥**である。
芹沢遥は28歳。
政府キャリアとしての責務をこなしつつ、ライトウィンドレンジャーの調整官を務める女性だ。
富士市生まれ富士市育ち。
長身、知的、クールビューティー。
なのに時折ふっと静岡弁が出るあたりが、彼女の“抜け感”の魅力でもある。
この日も、会議は滞りなく終了。
「では、以上で今月の定例調整を締めます」
と芹沢が告げたあと、3秒の間を空けて、にこりと微笑んだ。
「……さて。お待ちかねの“例の店”へ、行きましょうか」
「出たーっ!遥姐さんの恒例、富士の打ち上げ!」
「小春、毎回元気すぎるわ……」
「ふふ、でもちょっと私も楽しみにしてた」
数十分後、富士市の郊外にあるオレンジ屋根のレストランに、ヒロインたちの姿があった。
地元民にはおなじみの“炭火がウリ”のこの店は、名前こそ伏せられているが、あのソースの香りで誰もがピンと来る。
席に着いた瞬間、小春が手を挙げて宣言する。
「アタシ、げんこつハンバーグ!ソースは……両方ッ!」
「私はおにぎりハンバーグにするわ。ライスは普通で」
「……わたしはチーズトッピングを試してみようかしら」
芹沢は全員の注文を見届けて、静かにグラスを掲げた。
「じゃあ、今日も無事に、東西そろって。
げんこつに、気合い込めて——かんぱい!」
「かんぱーい!!」
こうして今夜もまた、鉄板の上でじゅうじゅう音を立てながら、
ヒロインたちの絆は焼かれ、強くなっていく。
そして誰よりも、芹沢遥がその光景をうれしそうに見守っていた。
「……やっぱ、静岡って、ええとこでしょ?」
それが、彼女の誇りだった。




