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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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247/495

免許もないのにフェラーリをねだる女 ――赤嶺美月・愛車妄想暴走事件――

交通安全イベントが一段落したある日の夜。

赤嶺家の居間では、テレビの音よりも大きな声が響いていた。


「なあ、おとん」


戦隊ヒロイン・赤嶺美月は、やけに改まった顔で父に切り出した。


「ウチな、車が必要やと思うねん」


父は新聞を畳み、眼鏡越しに娘を見る。


「ほう。なんでまた急に」


「戦隊ヒロインの任務や。

 移動も多いし、交通安全イベントも増えとるしな」


母が台所から口を挟む。


「へぇ、えらいやないの」


祖父は黙って湯呑みを持ったままだ。


父は少し考えてから聞いた。


「で、どんな車が欲しいんや?」


美月は待ってましたとばかりに身を乗り出す。


「そら戦隊ヒロインやからな!

 子供に夢を与える車や!

 ごっついアメ車とか、スタイリッシュなスポーツカーとか、

 フェラーリみたいなんがええわ!」


一瞬の沈黙。


次の瞬間、父が一刀両断した。


「住宅ローン、まだ半分以上残っとるわ。

 寝言は寝てから言いなはれ」


「なんでやねん!!」


美月が即座に噛みつく。


「夢がないわ!父親としてそれどうなん!」


「夢と現実は別や」

父は冷静だった。


「そういやな」

と、急に思い出したように続ける。


「学生時代の知り合いが軽自動車のメーカーにおってな。

 小回り効くし、ああいうのがええんちゃうか?」


母がすかさず乗る。


「軽やったらピンクとか可愛くてええやん。

 美月に似合いそう」


「ピンクて!」

美月が頭を抱える。


「ウチ、戦隊ヒロインやで!?

 ゆるキャラちゃうねん!」


そのとき、祖父がゆっくり口を開いた。


「車使うんやったらな、

 ウチの工場の軽トラ使うてもええで」


「……は?」


「赤嶺製作所の社名入りや。

 宣伝にもなるしな」


美月の顔が一気に曇る。


「あのボロ車?」


祖父の眉がピクリと動いた。


「ボロ言うなぁ。

 年季が入っとる言うんや」


「雨漏りするやん!」


「それは味や」


「エンジン音うるさいやん!」


「それが男前や」


母が笑いを堪えながら言う。


「でも、おじいちゃんの言うことも一理あるよ?」


「ない!!」


即答だった。


そのとき、祖父が核心を突いた。


「……そういや美月」


「ん?」


「お前、免許持っとらんやろ」


空気が凍る。


「……」


「どうするんや?」


美月は胸を張った。


「取るで。

 ウチ、本気や」


「ほう」


祖父は満足そうに頷く。


「それならな、マニュアルで取らんとな」


「なんでや!!」


「軽トラ、マニュアル車やからな」


美月の口が半開きになる。


「……オートマでええやん」


「男は黙ってマニュアルや」


「ウチ、女や!!」


父が横から静かに追い打ちをかける。


「免許取るまでは、車の話はなしやな」


母も微笑んで頷く。


「まずは教習所ね」


美月はソファに崩れ落ちた。


「フェラーリどころか、

 軽トラスタートて……」


祖父が笑った。


「人生、そんなもんや」


美月は小さく唸る。


「ぐぬぬ……」


こうして、

免許もない戦隊ヒロインの壮大な愛車妄想は、

赤嶺製作所の年季入り軽トラという、

あまりにも現実的な壁にぶち当たったのだった。


――戦隊ヒロインへの道は、

どうやらクラッチ操作から始まるらしい。

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