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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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245/474

湯の町マネー没収事件 ――城崎温泉・おひねりは誰のもの?――

城崎温泉は、音がやさしい町だ。

下駄の音、川のせせらぎ、浴衣の衣擦れ。

そんな風情ある町に――


なぜか交通安全小劇団が乗り込んできた。


会場は、創業百年を超える老舗温泉旅館の大広間。

畳の上に簡易ステージ、提灯、座布団。

まるで温泉街の大衆演芸そのものだった。


「ここ……ほんまに交通安全やるとこか?」


美月が舞台袖で呟く。


「ええやん、雰囲気あるやろ」

彩香はやけに乗り気だ。


その背後で、

腕を組み、背筋を伸ばしている影。


岡本玲奈――

湯けむり鬼代官、本日も絶好調である。


太鼓がドン、と鳴り、幕が上がる。


「湯の町・城崎!

 浴衣で気分が浮かれると――事故が起きるでぇ!」


飛び出してきたのは美月。


浴衣の裾を踏み、

スマホを見ながら外湯巡り、

挙句の果てに下駄を飛ばす。


「おっとっとっと!」

「危ないやろがー!」


客席、爆笑。


旅館の常連らしきおばあちゃんが、

「上手いなぁ!」と手を叩く。


続いて彩香が静かに登場。


「浴衣の時こそ、足元注意やで」


きれいな所作で一礼し、

下駄を揃え、

ゆっくり歩く。


さっきまで笑っていた観客が、

「ほぉ……」と感心する。


完全に大衆演芸の構図だった。


そこへ紀伊ハンターの3人が勢いよく登場。


「横断歩道は止まって!」

「写真は端っこで!」

「自転車は押して!」


テンポよく、

歌って、踊って、

まるで温泉街版ヒーローショー。


旅館の大広間は、

笑いと拍手で揺れた。


「よっ! 姉ちゃん!」

「面白かったで!」


観客席から、

ぽいっ、ぽいっと――


おひねりが飛び始めた。


千円札、五百円玉、

中には封筒まで。


「えっ……?」

「ちょ、ちょっと待って……?」


ヒロインたち、目を輝かせる。


「すごい……」

「こんなん初めてや!」


美月は両手で受け止めながら、

完全にホクホク顔。


「城崎温泉、最高やぁ……」


――その時。


カツン、と下駄の音。


玲奈が一歩前に出た。


「皆さん」


場が静まる。


「温かいお気持ちは、ありがたく頂戴します」


一瞬、ヒロインたちが安堵した――


次の一言が来るまでは。


「ただし」


間。


「戦隊ヒロインプロジェクトは

 国民の皆様の血税で運営されています」


美月、嫌な予感。


「従って」


玲奈、きっぱり。


「本日のおひねりは

 活動費として全額回収します」


一瞬の静寂。


次の瞬間。


「そんな殺生なぁ~~!!」


美月、畳に崩れ落ちる。


「ウチ、人生で初めておひねりもろたんやで!?」

「手触りもええ感じやったのに!」


彩香が肩を叩く。


「泣くとこちゃうやろ……」


そこへ、

無言で現れたのが経理担当・佳乃。


通称――けちのん。


「こちらで預かります」


一枚一枚、

丁寧に数え、

封筒に分ける。


「用途は?」


と美月が聞くと、

佳乃は即答。


「舞台衣装の小道具購入費です」


「夢が現実的すぎるわ……」


数日後。


美月が腕を組み、不満げに呟く。


「なぁ……知っとる?」


「何を?」


「陽菜が舞台で着けとる

 あの鮮やかなプローチ」


彩香、頷く。


「あれな」


美月、遠い目。


「ウチらが城崎温泉で

 命懸けで集めたおひねりやったんやで……」



その背後で、

玲奈は何も言わず、

交通安全ポスターを貼り直していた。


城崎温泉は今日も平和だ。

そして――

おひねりの行方は、誰も逆らえない。

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