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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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241/507

夢の跡地に旗が舞う――西宮、鬼代官凱旋の日

兵庫県西宮市。

巨大な商業施設の中央広場に設けられた特設ステージは、朝から異様な熱気に包まれていた。


ここはかつて――

阪急ブレーブスの本拠地・西宮球場があった場所。


プロ野球黎明期から昭和の終わりまで、

数々の名選手が汗を流し、

一方で「強いのに客が入らない」という切ない歴史も背負った球場。


野球だけでなく、

戦後の混乱期には競輪まで開催されたという、

スポーツと庶民文化の“何でもあり”な聖地である。


そんな場所が――

この日だけは、超満員だった。


理由はひとつ。


「神戸の鬼代官が来るらしいで」

「戦隊ヒロインも来るんやて」

「しかも、寸劇があるらしい」


期待値が、無駄に高い。


■ 交通安全×音楽隊=カッコいい


イベント開始の合図とともに、

軽快なマーチが流れ出す。


兵庫県警察音楽隊の登場だ。


ブラスの音が響く中、

ひときわ大きな歓声が上がる。


「出たー!」

「あれ、めっちゃ美人やん!」


――そう。

岡本玲奈が、久しぶりにカラーガード隊として姿を現したのだ。


短いスカート、白いパレードブーツ。

本人がかつて「落ち着かへん」と渋った衣装。


だが、フラッグを振る姿は堂々たるものだった。


「……あの人、ほんまに警察官なん?」

「信号より目立ってるで」


フラッグが青空を切り裂き、

会場から大喝采。


玲奈は演技を終えると、

すっと表情を引き締めてマイクを取った。


「今日はな、楽しいだけちゃう。

 帰るまでがイベントや。

 ちゃんとルール守って帰ろな」


拍手、拍手、拍手。


■ 悪い例、再び(そして暴走)


「ほな次、

 交通ルールの寸劇いきます!」


司会の声と同時に、

待ってましたと言わんばかりに飛び出す赤い影。


赤嶺美月である。


「前回な、

 うちの悪い例が好評やったらしいねん」


彩香が嫌な予感に顔をしかめる。


「……調子乗っとるやろ」


案の定だった。


美月は横断歩道に立つや否や、


「よっしゃ!

 信号? 見てへん見てへん!」


と、スマホを見ながらスキップ。


「イヤホン装着!

 帽子で視界ゼロ!

 さらに急いでるフリ!」


子どもたちは腹を抱えて笑う。


「ちょ、ちょっと待ち!」

と彩香が止めに入るが、


「まだや!

 ここから自転車飛び乗るねん!」


「やりすぎや!!」


会場は爆笑の渦。


玲奈、額に手を当てる。


「……事故る前提のフルコースやないか」


■ 正しい例は、落ち着いている


気を取り直して、彩香が登場。


「はいはい、

 正しい例いきますで」


信号確認、左右確認、手を挙げて横断。


「普通が一番安全。

 これ、テスト出ます」


観衆、納得の拍手。


ここで――

紀伊ハンターの美咲、あかり、麻衣が合流。


子ども向けに分かりやすく説明し、

会場は完全に“学べて楽しい空間”に。


兵庫県警の担当者が、

舞台袖で小さくガッツポーズ。


「……これは、成功や」


■ 終了後のどうでもいい戦争


イベントは大成功のうちに終了。


楽屋に戻った瞬間――

火種が再燃する。


「さっきのな、

 うちのスキップ、もっと大きくしても良かったんちゃう?」


「いらんわ!

 横断歩道でスキップすな!」


「やけど、子どもウケは――」


「ウケより命や言うてるやろ!」


いつもの美月×彩香の子供じみた言い争い。


内容は、

**“スキップの歩幅が適切だったか”**という

どうでもよすぎる議題。


そこに、玲奈が静かに割って入る。


「……二人とも」


一瞬で静まる空気。


「子どもらがな、

 ちゃんと止まって、ちゃんと見ること覚えてくれた。

 それで十分や」


美月と彩香、顔を見合わせる。


「……せやな」

「……まぁ、せやな」


玲奈は小さくため息をついた。


「次はな、

 揉めるなら楽屋出てからにして」


「了解でーす!」


西宮の夕暮れ。

かつて野球と競輪の歓声が交錯した場所に、

今は――笑いと学びが確かに残っていた。


神戸の鬼代官は、

今日もまた、

ルールと笑いを両立させて去っていった。


そして美月は、

次回の悪い例に向けて、

もう何かを考えている顔をしていた。


――嫌な予感しかしないが、

たぶん、それも含めて平和なのだ。

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