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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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240/474

止まれ言うたやろが!――尼崎を制圧した神戸の鬼代官

兵庫県尼崎市。

駅前の広場に、やけに物々しい横断歩道のマットと、三色の信号機(※段ボール製)が設置されていた。


その前に立つのは、背筋が一本の直線でできている女。


岡本玲奈、27歳。

兵庫県警交通課、そして――

戦隊ヒロイン界隈ではすっかりおなじみ、神戸の鬼代官である。


「今日はな、難しい話はせぇへん。

 命守る話を、笑って覚えてもらう日や」


集まった尼崎の子どもたちは元気いっぱい。

その後ろで、なぜか一番緊張しているのは、戦隊ヒロインたちだった。


「……なぁ美月」

「なんや彩香」

「うち、嫌な予感しかせぇへんねんけど」


その予感は、秒で的中する。


■ 第一幕:横断歩道は“走る場所”ちゃう


「はい、まずは悪い例からいこか」


玲奈が手を挙げると、

ステージ袖から赤嶺美月が飛び出してきた。


「任せとき!

 悪い例言うたら、うちの十八番や!」


その瞬間、子どもたちがざわつく。


信号は――赤。


にもかかわらず、美月は周囲を一切見ずに、


「行ける行ける行けるー!!」


と、わざとらしく小走りで横断歩道へ突入。


「ちょ、ちょっと待――」


彩香の制止を無視して、


「うわっ! トラック来たー!

 ……て、来てへんけどな!」


子どもたちは腹を抱えて大爆笑。


玲奈、腕組み。


「……はい、論外。

 これはな、笑ってる場合ちゃうやつや」


美月、即座に土下座ポーズ。


「すんません!

 うち、反面教師として生きてます!」


「反面教師は便利な言葉ちゃうで」


■ 第二幕:良い例という名の優等生


「次、良い例。西川彩香さん」


「はいはい、任されましたわ」


彩香は信号を確認し、

左右をきっちり二回ずつ見て、


「右よし、左よし、もう一回右よし。

 ……行こか」


落ち着いた動きで横断。


「おぉ~!」

と、子どもたちから素直な拍手。


美月が横でぼそっと言う。


「……なんやねん、その教科書」


「教科書通りが一番安全なんや」


玲奈、深く頷く。


「その通りや。

 事故起こさん人間は、地味やけど正しい」


■ 第三幕:自転車は凶器になり得る


続いて、自転車コーナー。


ここでも当然、悪い例は――


「はい、赤嶺さん、もう一回」


「またうち!?」


美月、ノーヘル・片手運転・スマホ見るフリの三点セット。


「LINE来てる~!

 ……既読つけとこ」


子どもたち、再び爆笑。


「アウト。

 免停三回分や」


「まだ免許もってへんのに!」


■ 紀伊ハンター、参戦


ここで登場したのが、紀伊ハンターの三人。


「自転車はな、

 ちゃんと止まれるスピードで走らなあかんで」


落ち着いた説明に、会場が一気に聞き入る。


「わかりやすーい!」

「さっきのお姉ちゃん(※美月)と全然違う!」


美月、即ツッコミ。


「そらそうや!

 うちは笑い担当や!」


■ 県警の手応え(そして内心のガッツポーズ)


イベントは終始大盛況。


最後に玲奈が締める。


「今日覚えてほしいのは一つだけや。

 急がんでも、ちゃんと生きて帰る方が大事」


子どもたち、元気よく、


「はーい!!」


その様子を見ていた兵庫県警の職員が、こそこそ話す。


「……これ、イケますね」

「うん、予想以上や」

「“寸劇方式”、全国展開ありちゃいます?」


その横で、玲奈は腕を組みながら小さく呟いた。


「……笑って守れるなら、それでええ」


一方、楽屋。


「なぁ玲奈さん」

と美月。


「次のイベント、

 うちの悪い例、もっと派手にしてええ?」


「……安全な範囲でな」


「ほな、次は信号機ごと倒れます!」


「却下や!!!!」


尼崎の夕空に、

笑い声とツッコミがいつまでも響いていた。


――神戸の鬼代官、

今日もまた、子どもたちの命を守りながら、

しっかり笑いもかっさらっていったのであった。


(なお、美月はこの日、

「悪い例専門ヒロイン」という新ジャンルを確立したらしい)

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