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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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239/474

そのハンドル、即没収や――神戸の鬼代官、講習会を開く

《戦隊ヒロイン専用・安全運転講習会》

※全員参加。逃走不可。


その下に、小さくこう書かれている。


※講師:岡本玲奈(兵庫県警・交通課)


それを見た瞬間、数名のヒロインが一斉に目を逸らした。

特に反応が早かったのは、大宮麗奈と松本美紀である。


「…ねぇ、美紀。今日、徒歩移動だったよね?」

「え? 私は普段から安全運転ですけど?」

「……それが一番怖いんだけど」


やがて扉が開き、コツ、コツ、と硬質な音とともに岡本玲奈が入室した。

背筋は一直線、資料は完璧に整えられ、表情は一分の隙もない。


「はい、全員着席。

 今日は“楽しいお話会”やあらへん。

 命の話や」


一瞬で空気が凍る。


「まず言うとくけどな。

 戦隊ヒロインいう肩書きがあっても、

 道路の上では全員ただの一般人や」


誰も反論できない。


「特に――」


玲奈の視線が、一直線に突き刺さる。


「大宮麗奈さん」


「はいっ!?」

麗奈が過剰に元気よく手を挙げる。


「あなた、ウインカーは“気分”で出すもんちゃう。

 右折する“予定”があったら出すねん」


「え? でも、気分が乗った時の方がスムーズじゃないですか?」


その瞬間、会議室の温度が2度下がった。


「……スムーズちゃう。事故の予告編や」


「あと、“止まれ”の標識。

 あれは『一瞬だけ減速』やなくて完全停止や」


「完全に? 全部?」


「全部や!!!!」


その横で、美紀が正座に近い姿勢でメモを取っている。


「はい……完全停止……3秒……確認……」

「美紀さんはええ。まだ矯正可能や」


「やった……!」


一方、麗奈は腕を組んで不満顔。


「でもさぁ、標識っていっぱいあって覚えきれなくないです?」

「覚えきられへん人間は運転したらあかん」


「えー……」


「“えー”ちゃう」


講習はどんどん地獄絵図になっていく。


「次、個別指導や。

 美紀さん、あなたは――」


「はいっ!」


「松本走り。

 カーブでアクセル踏むな。

 山道をF1サーキットと勘違いすな」


「……すみません。でも、自然と体が……」


「体より脳を使いなさい」


「はい……」


一方、麗奈の評価は紙に赤字で書かれていた。


《再教習推奨:埼玉県鴻巣免許センター》


「なんで鴻巣!?」

「初心に帰れ言うてんねん」


名前が似ている二人――

麗奈れいな玲奈れな


片や標識を感覚で読む女、

片や標識を人生で読む女。


まさに月とスッポンである。


講習はヒロインだけに留まらなかった。


「はい、次はスタッフ講習や」


「え?」とざわつく中、


すみれコーチ、隼人補佐官、遥室長、そして――


「……オイラもか?」

と指差したのは波田顧問。


「もちろんです。

 年齢は免罪符ちゃいます」


結果。


すみれコーチ:

「スピード意識が昭和。減点」


隼人補佐官:

「一時停止、甘い。減点」


遥室長:

「概ね良好。……ただし駐車が斜め。減点」


そして――


「波田顧問」


「なんだい?」


「正直に言います」


一拍置いて、玲奈が淡々と言う。


「免許、返納しはった方が世のためです」


沈黙。


数秒後、波田顧問は深く頷いた。


「……ああ、そうだな。

 ヒロイン守るっつってよ、

 轢いちまったら元も子もねぇや。」



その日の夕方。


《波田顧問、運転免許返納》の報がヒロ室に流れ、

なぜか拍手が起きた。


講習終了後、ぐったりする一同。


麗奈だけがまだ納得していない。


「ねぇ玲奈さん。

 そんな厳しくしなくてもよくない?」


岡本玲奈は、静かに帽子を整えた。


「嫌われてもええ。

 でもな、事故は一回で終わりや」


その言葉に、

誰も笑えなかった。


――が。


美紀が小声で言った。


「……でも、講習会としては、めちゃくちゃ面白かったですね」


玲奈は一瞬だけ、口元を緩めた。


「せやろ。

 命守る話は、笑って覚えた方が身につく」


神戸の鬼代官。

今日もまた、ハンドルの向こう側で、平和を守っていた。


(※当然、講習は継続中である)

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