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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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235/474

前に出る麻衣、止まらんあかり、巻き込まれる美咲

白浜麻衣が変わった、という認識は、すでにヒロインプロジェクト内部では共通理解になりつつあった。

以前は一歩引いて周囲をうかがい、声を張ることにも躊躇があった紀州の舞姫は、今や未就学児向け派生ユニット「ぽかぽかトリオ」のリーダーとして、現場を自然にまとめている。


その変化は、もうひとつの派生ユニット「紀伊ハンター」に所属する同期――三重県四日市市出身の山本あかりにも、確実に影響を与えていた。


この日、三人が集められたのは地方イベント前の簡易リハーサル室だった。

麻衣、あかり、そして奈良出身の春日美咲。

三人とも年齢は近いが、性格も立ち位置も微妙に違う。


最初に異変を感じたのは、あかりだった。


「麻衣、次の段取り、もう決めとるんか?」


あかりの問いに、麻衣は少し考え、柔らかく答えた。


「うん。子ども多そうやし、最初は動き多めにした方がええと思うんよ」


その口調は穏やかな紀州弁だが、内容には迷いがなかった。

以前なら「どう思う?」と周囲に委ねていた場面で、麻衣はすでに判断を下している。


あかりは一瞬、言葉に詰まった。


「……なんか、普通にリーダーやな」


「そ、そうかな?」


「そうやで。前はな、もっとこう……後ろにおったやん」


その言葉に、美咲が横から小さくため息をついた。


「二人とも、始まる前から飛ばしすぎやで……」


大和弁特有の落ち着いた響きだが、声の端にはすでに諦観がにじんでいる。


リハーサルが始まると、変化はさらに顕著だった。

麻衣は全体の流れを見ながら、必要なところで短く指示を出す。

あかりはその指示を受け、持ち前の行動力で一気に動く。


「了解や! ほな、ここは私が前出るわ!」


「ありがとう。無理せんでな」


「そこは任せとき。走るのは得意やで」


一方、美咲は二人の動きを見ながら、静かに位置を調整する。


「……はいはい、はいはい。ほな私がフォロー役やな」


誰に頼まれたわけでもないのに、自然とそうなってしまう自分の役割に、美咲はもう逆らう気がなかった。


問題が起きたのは、段取り確認の最中だった。


「ここ、私が説明入るけど、時間押したらどうする?」


あかりの問いに、麻衣は即答した。


「その時は、私が代わりに締める。あかりは動きに集中して」


「……え、麻衣が?」


「うん。できると思う」


その一言に、あかりは思わず吹き出した。


「ちょ、待って。麻衣、いつの間にそんな自信つけたん?」


「……いろいろあったから」


控えめだが、はっきりした言い方だった。


美咲はそのやり取りを見て、頭を抱えた。


「なあ……私だけ置いていかれてへん?」


「美咲は美咲で、ちゃんと見とるやん」


「それ、慰めになってへんで」


三人のやり取りはどこか噛み合っていないようで、しかし不思議とバランスが取れていた。


リハーサル後、休憩スペースであかりがぽつりと言った。


「正直な……麻衣見とると、焦るわ」


「え?」


「うち、勢いだけで来とった気がしてな。でも麻衣は、ちゃんと考えて前に出とる」


その言葉に、麻衣は少し困ったように笑った。


「私も、あかり見て勇気出たんよ。すぐ動けるの、すごいと思う」


二人の会話を聞きながら、美咲はコーヒーを一口飲み、静かに呟いた。


「……ほらな。こうやって相互作用起こすから、同期って厄介なんや」


「なんでやねん」


「褒めてへんで」


三人は顔を見合わせ、同時に笑った。


かつては誰かの後ろに立っていた麻衣。

走るだけで精一杯だったあかり。

巻き込まれ体質でため息ばかりだった美咲。


だが今、三人はそれぞれの立ち位置で、確実に前へ進んでいた。


紀州が前に出て、伊勢が走り、大和がため息をつきながら全体を支える。

その歪で不思議なバランスこそが、彼女たちの成長の証だった。


そして誰よりも、その変化を面白がっているのは――

たぶん、彼女たち自身だった。

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