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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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225/474

常夏は福島からやって来る ──戦隊ヒロイン非公式最強助っ人・木戸瑠海という生き物──

戦隊ヒロインの世界には、

正式メンバーでも、コーチでも、顧問でもないのに、

なぜか全員に一目置かれている存在がいる。


その名は――

木戸瑠海きど・るみ

通称、るみねぇ。


書類上の肩書きは

「ダンス研修・外部講師(非常勤)」。


だが現場では、

「空気が重くなったら呼ばれる人」

「泣く前に笑わせる人」

「すみれコーチ不在時の最終兵器」

など、肩書きの数がやたら多い。


彼女が初めて戦隊ヒロインの研修に呼ばれたのは数年前。

ダンスの基礎指導という名目だったが、

その初日から様子がおかしかった。


「はいはい! 集合~!

 はい、肩回して! 深呼吸!

 難しい顔してる人、今すぐやめっぺ!」


初対面のヒロインたちは一瞬固まった。


――誰?

――先生?

――訛り強くない?


しかし、五分後には全員が笑っていた。


「今の動き? うん、硬い!

 でも大丈夫だ! 温泉入ったと思えばいい!」


誰も温泉に入っていないのに、

なぜか身体が軽くなる。


それが、るみねぇだった。


彼女の本職は、

福島県いわき市にある超有名温浴施設のトロピカルダンサー。


南国風のステージ、

ヤシの木、

ミラーボール、

そして水着一歩手前みたいな衣装で踊る、

あの“観光名物”のど真ん中にいる人だ。


「昼は温泉、夜は常夏。

 それが私の仕事だがんね!」


本人はあっけらかんと言うが、

実はかなりの実力派。


一日数公演、

年齢層も国籍もバラバラな観客を相手に、

必ず“楽しかった”と言わせる。


つまり――

「場を読む力」が桁違いなのだ。


そして特筆すべきは、

浜通り訛りが一切隠れない福島弁。


「無理すんなって!

 体は正直だがんね!」

「今のステップ、ちっとズレだっぺ!

 でもそれ、逆に味だ!」


最初は戸惑ったヒロインたちも、

気づけばその訛りが安心材料になっていた。


るみねぇは、

褒める。

突っ込む。

笑う。

そして感情を隠さない。


「今日のあんた、良かった!

 正直に言うけど、昨日はダメだった!」


この喜怒哀楽がハッキリした人間味が、

戦隊ヒロインたちには心地よかった。


完璧を求められる現場で、

「ダメな日はダメでいい」と言ってくれる大人。


それが、るみねぇだった。


だから一部ヒロインには、

すでに“お馴染み”どころではない存在になっている。


「困ったら、るみねぇ呼ぼう」

「空気ヤバくなったら、るみねぇ案件」

「とりあえず、るみねぇに聞こう」


本人はその噂を聞いても、ケラケラ笑うだけ。


「えー? 私そんな偉くねぇぞ?

 ただ踊って、喋ってるだけだっぺ!」


だが、彼女が現場に来ると、

必ず空気が軽くなる。


すみれコーチの厳しさが「骨」なら、

るみねぇは「血」と「体温」だった。


最近では、

北関東スリーアローズの臨時リーダーを任されるなど、

完全に“想定外の役割”まで背負わされている。


それでも彼女は言う。


「いいじゃん!

 面白そうだがんね!」


――この人、細かいこと気にしない。


それが、るみねぇ最大の武器だった。


戦隊ヒロインの世界は、

厳しくて、複雑で、

ときどき息が詰まる。


だがそこに、

福島・いわきの常夏が混じると、

不思議とみんな深呼吸できる。


木戸瑠海。

戦隊ヒロイン非公式最強助っ人。

トロピカルで、訛ってて、感情むき出し。


そして今日もどこかで、

彼女はこう叫んでいる。


「はい笑ってー!

 ヒロインはな、楽しくなきゃ意味ねぇんだ!」

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