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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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223/471

煩悩まみれで何が悪い ――ベイサイドトリニティ、涙の高野山と赤鉛筆地獄――

ベイサイドトリニティ再研修、その第一章は――

**高野山**での宿坊修行から始まった。


「……寒くない? ここ、空気が思想ごと冷えてるんだけど」


沙羅は畳に正座したまま虚空を見つめていた。

自分がなぜ、都会のステージではなく山奥の宿坊で数珠を持っているのか、理解が追いついていない。


一方、澪はというと――

朝のお勤めで半分、いや八割寝ていた。


木魚の音に合わせて、

「ポン……ポン……」

「……すぴ……」


僧侶が一瞬こちらを見るが、澪は無意識に合掌したまま夢の世界だ。

すみれコーチは何も言わない。ただ深く息を吸い、

「……起きなさい」

その一言で澪は飛び起きた。


「もう終わった?」

「始まったところよ」


理世は写経と格闘していた。

文字数制限――正確には、紙が足りない。


「おかしいですね……この思想量で一枚に収まらないのは、紙の設計ミスでは?」


「理世」

すみれコーチの声は低い。

「仏は“要点を削れ”と教えているの」


「……合理的ではありません」


沙羅は写経も勤めも終え、再び虚無に落ちていた。

「私……ミラノとパリを目指してたはずなのに……

 今、標高何メートル?」


第二章は、国家特務戦隊ヒロイン中央研修複合学習センター富士川分室。

名目は「精神鍛錬」。

実態は――昭和の内職地獄だった。


・袋貼り

・競輪新聞に付いてくる赤鉛筆にキャップを付ける作業

・造花の花びらを一枚ずつ差し込む


全員、無言。


「……これ、何の修行ですか?」

理世が聞く。


「人生にはね、意味が分からないことが山ほどあるの」

すみれコーチは淡々と赤鉛筆にキャップをはめる。


澪は袋貼りが妙に上手く、

「これ、無限にできる気がする」

と言い出す始末。


沙羅は造花を見つめてぽつり。

「……花って、造られる側の気持ち考えたことなかった」


ちなみに、この赤鉛筆――

後日、京王閣競輪場で波田顧問の手に渡ることになるが、

それはまだ誰も知らない。


そんな地獄のような研修の最中、

澪後援会の会報は相変わらず絶好調だった。


《ベイサイドトリニティの3人は

 世界へ羽ばたくため、鋭意研修中!》


写真はなぜか後ろ姿。

内容は――

・ラーメン屋「○○」餃子半額(会報持参者)

・生田緑地イベント情報

・市バスの正しい乗り方

・自転車の傘差し運転禁止


ヒロイン情報は一行。


「……これ、誰の会報?」

沙羅が呟く。


「地域密着型だね」

澪は感心している。


理世は会報を閉じ、静かに言った。

「……私たち、世界に行く前に、市民生活からやり直している気がします」


すみれコーチは三人を見渡し、穏やかに微笑んだ。


「その通りよ。

 “世界”に行く前に、“人”になりなさい」


三人は、赤鉛筆を持ったまま黙り込んだ。


――こうして、

ベイサイドトリニティの再研修は、

仏と昭和と内職に包まれながら、

今日も静かに、そして騒がしく続いていくのだった。


研修はつづく・・・

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