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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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220/474

歌えば癒えて、乗れば絶叫――歌姫、助手席に座る

藤原詩織は、少し成長していた。

小児週末ケアセンターで歌ったあの日から、

「歌うこと=評価されること」ではなく、

「歌うこと=誰かの一日を軽くすること」だと理解したからだ。


その結果――

慰問活動にやたら前向きになった。


「今日も行きましょう。

歌えば、きっと元気になります」


言い切る詩織に、

湘南の毒舌クイーン・平塚美波はニヤリ。


「はいはい、成長成長。

じゃあ次、三カ所回るわよ」


大宮麗奈も即答。


「オッケー!

移動は私が運転ね!」


――その瞬間。

スタッフ全員が、一斉に視線を逸らした。


なぜなら、

戦隊ヒロイン界には二大・乗ったら終わり運転手がいる。


ひとりは「松本走り」の松本美紀。

もうひとりが、

大宮麗奈である。


ブレーキは意志。

カーブは度胸。

助手席は罰ゲーム。


「……誰か、助手席……」


沈黙。


「……じゃ、後ろ詰めます」


「……資料あります」


誰も動かない。


そのときだった。


「え、私ここでいいですか?」


天使が、笑顔で助手席に座った。


「詩織さん!?!?」

「命を粗末にしないで!!」


止める声を無視し、

詩織はシートベルトを装着。


「絶叫マシンみたいで楽しそうです~」


麗奈、即エンジン始動。


――発進。


「うわああああ!!」


悲鳴は後部座席から。

詩織はというと、


「わぁ……景色が流れていきます……!」


急カーブ。


「キャーーー!!」


スタッフ再悲鳴。

詩織、拍手。


「今の揺れ、

ビブラートみたいでした!」


美波が叫ぶ。


「音楽で例えるな!!」


信号待ちで麗奈が聞く。


「ねえ詩織、

怖くないの?」


詩織は首をかしげる。


「歌う前のドキドキに似てます。

あと、麗奈さんを信じてます」


一瞬、

麗奈のアクセルが優しくなった。


――一瞬だけ。


施設に到着。


スタッフは全員、

地面を踏みしめて確認する。


「……生きてる……」

「……助かった……」


詩織だけが満面の笑み。


「ありがとうございました!

また乗りたいです!」


美波が即断。


「ダメ。

あんた専用絶叫コースになる」


麗奈は誇らしげ。


「助手席適性、

この子が歴代トップだわ」


その日も、

詩織は歌った。


子どもたちは笑い、

空気は明るくなり、

スタッフは一名、酔った。


帰り道。


再び空く助手席。


詩織が手を挙げる。


「次もここでいいですか?」


全員。


「ダメ!!」


天使は首をかしげた。


――歌姫は成長した。

だが、

運転の危険性だけは理解できなかった。


そして今日もまた、

慰問活動は平和に、

移動は地獄に、

無事終了したのだった。

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