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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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215/472

歌姫が泣いた日、南京玉すだれが世界を救った

事件は、

東京都品川区・区民会館の控室で起きた。


未就学児向けの大規模イベント。

カラフルな風船、床に敷かれたマット、

廊下からは「ヒロインまだー?」という無邪気な声。


出演者は豪華だった。

西日本からは美月と綾乃。

東日本は小春、陽菜、紗絢、美紀、詩織、美音。

そして――

「家から近いから」という、あまりに雑な理由で呼ばれた

ベイサイドトリニティの三人、澪・沙羅・理世。


中でも空気を軋ませていたのは、

西川彩香と、柏木理世。


二人は、普段から致命的に噛み合わない。


彩香は、

理屈より現場、空気より勢い。

播州弁でズバズバ切り込むタイプ。


理世は、

理論と正解を愛し、

感情の無駄を嫌う「正論製造機」。


互いに、

「理解できない人間」だった。


事件は、

歌姫・藤原詩織の涙から始まった。


「……詩織さん、その歌、

今日“も”ズレてますよね?」


沙羅の声は、

指摘というより刺突だった。


「音大生なのに、

それ、恥ずかしくないですか?」


理世が、淡々と続ける。


澪は椅子に沈みながら、

ぼそっと。


「……また進行止めないでくださいね」


詩織は、

その場で崩れた。


「……ごめんなさい……」


次の瞬間。


「おどれらァァァ!!

何さらしとんじゃボケェ!!」


赤嶺美月、乱入。


ツインテールが逆立つほどの怒り。


「年上いびって

ええ気になっとるんちゃうぞ!!

南港に沈めたろか!!」


だが、

ここで理世が冷静に火に油を注ぐ。


「……感情論ですね。

事実を指摘しただけですが?」


その瞬間、

彩香の眉が、ぴくりと動いた。


「はぁ?」


一歩、前へ。


「事実?

あんたのそれ、

人の心を踏み潰す“事実”やな」


理世は一歩も引かない。


「私は合理的な改善を――」


「改善?

誰を? 自分をやろ?」


彩香の声が低くなる。


「なにが

“鉄壁のシロガネーゼ”や」


「ベルリンの壁みたいに

とっくに崩壊しとるがな」


「欧州カブレが

人の心、語るなや」


「……その発言、

完全に感情的ですね」


理世、冷ややか。


「文化的教養に基づかない

攻撃は――」


「うるさい言うとるやろが!!」


美月、即ツッコミ。


「屁理屈は便所でせぇ!!」


控室は、完全に修羅場。


沙羅は煽るように笑い、

理世は理詰めで切り返し、

彩香は播州弁で殴り返す。


澪は壁を見つめたまま、

ぽつり。


「……面倒ですね」


そこへ、

遥室長、小春、紗絢が駆け込む。


「ストップ!!

全員、いい加減にして!!」


紗絢は即座に詩織の前へ。


小春は、

“まとめ役モード”に切り替わる。


数分後、

場は鎮静した。


だが、

詩織の心は戻らなかった。


「……私のせいで……

みんな、喧嘩して……」


何も悪くないのに、

そう思ってしまう。


遥室長の決断は早かった。


詩織、休演。

そして――

ベイサイドトリニティも、出演見合わせ。


「……え?」


三人が固まる。


だが、

もともとの出番は短い。


会場への影響、皆無。


問題は、

詩織の歌で埋まるはずだった

30分以上の空白。


沈黙の中、

彩香が手を挙げた。


「南京玉すだれ、やります」


一瞬の静寂。


「……未就学児向けで?」

「渋すぎへん?」


不安をよそに、

本番。


「さぁさぁさぁ~!

南京玉すだれでございまーす!」


最初はぽかん。


だが、

玉すだれが

動物になり、

ロボットになり、

ヒロインの変身ポーズになると――


大爆笑。


「わー!」

「すごーい!」

「もういっかい!」


後方で、

理世が無言で見つめていた。


理屈では説明できない光景。


彩香は、

本番に強かった。


それは、

社会人野球で

“代打の切り札”だった父の血。


控室の隅で、

詩織は涙を拭いながら

モニターを見ていた。


「……すごい……」


紗絢が、静かに言う。


「あなたの歌も、

同じように誰かを救ってきたのよ」


詩織は、小さく頷いた。


この日、

確かに醜い感情は露呈した。


嫉妬。

劣等感。

歪んだ結束。


だが同時に、

誰が現場を救い、

誰が空気を壊すかも、

はっきりした一日だった。


そして会場では、

子どもたちが笑っていた。


南京玉すだれが、

世界を救った――

そんな、戦隊ヒロイン史に残る一日だった。

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