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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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214/478

結束の理由が最悪なとき――ベイサイドトリニティ、静かな共犯

最初は、ただの不満だった。


出番が増えたり減ったりする。

名前が呼ばれない。

歓声が来ない。


それがいつしか、

向ける先を必要とする感情に変わっていった。


そして選ばれたのが――

ドジで、優しくて、

子どもたちにだけは異様に愛されている歌姫、藤原詩織だった。


「……また台本、間違えてますよ」


沙羅の声は冷たく、抑揚がない。

理世がすぐ続く。


「年上なんですから、ちゃんとしてもらえます?」

「子ども向けだからって、甘えてません?」


詩織は一瞬きょとんとして、

それから小さく頭を下げた。


「ごめんなさい……」


それで終わる。


怒らない。

言い返さない。

言い訳もしない。


――それが、三人には**“弱さ”に見えた**。


皮肉なことに、

それまで噛み合っていなかったベイサイドトリニティは、

詩織を標的にした瞬間、妙に足並みが揃った。


「誰かが言わないと」

「本人のため」

「甘やかされすぎなんですよ」


澪はぼんやりしながら、

ときどき、刺す。


「……詩織さんって、

何も考えてない顔してますよね」


それは冗談の皮をかぶった刃だった。


詩織は、羊のようだった。


声を荒げず、

反抗せず、

ただその場の空気を壊さないように笑う。


「私が悪いんです」

「ちゃんとできてなくて……」


その言葉が、

さらに三人を正当化させた。


――ほら、本人も認めてる。


年下が年上を追い詰める、歪な構図が、

誰にも止められないまま出来上がっていく。


最初に異変に気づいたのは、麗奈だった。


「……ちょっと、あんたたち」


控室の隅で、腕を組む。


「注意と嫌味は違うでしょ」

「詩織、あれ普通に凹んでるわよ」


だが返ってきたのは、

冷えた視線だった。


「注意してるだけです」

「仕事の話ですよ」


理世が淡々と言い切る。


澪は椅子にもたれたまま。

「……麗奈さんには、分かんないでしょ」


その一言で、

話は終わった。


小春も気づいていた。

美音も、違和感を覚えていた。


「最近、詩織さん元気ないよね」

「でも本人、全然否定しないし……」


声をかけても、

詩織は決まってこう言う。


「大丈夫です」

「私がちゃんとできてないから」


――それが一番、怖かった。


人気者への嫉妬は、

自分が“悪者”だと認めずに済む。


「指導」

「正論」

「チームのため」


その言葉の裏で、

結束は強まり、感情は濁っていく。


詩織の笑顔は、

誰かを安心させるためのものになり、


三人の結束は、

誰かを削ることでしか保てなくなっていた。


まだ、この時点では――

誰も「いじめ」という言葉を口にしない。


だが、

空気はすでに、

その一歩手前まで来ていた。

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