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赤と藍、月と花

「――なんぼのモンじゃいコラァ! ウチら相手にケンカ売るたぁ、ええ度胸やんけぇ!!」


突如、廃工場の空気が震えた。

響き渡るのは怒涛の河内弁。

その声とともに、真紅の閃光が敵の懐へと飛び込んだ。


「う、うわぁぁぁっ――ぐはっ!」


黒ずくめの不審集団が、白のブーツの回し蹴り一閃で、軽々と宙を舞う。


ヒロインスーツのミニスカートがふわりと翻り、

真紅の戦隊ジャケットが閃光を描く。

戦うのは、あの――


「交通安全週間のポスターに写ってたあの子やないか!?」

「ちょっ、美月ちゃうんか!? 赤嶺美月、あの子ホンマに戦隊ヒロインなんか!?」


恐れと動揺に満ちた声が、敵から漏れる。

だが、美月はにやりと笑って言い放つ。


「せやで? せやけど今日の主役はウチやのうて――あやのんやろ?」


その言葉と同時に、戦場に凛とした気配が流れ込んだ。

風が静かに一度止まり、次の瞬間、青藍色の影が横をすり抜ける。


「……お騒がせ、してまへんやろな?」


微笑とともに現れたのは、戦隊ヒロイン《藍の風華》――西園寺綾乃。


白のロングブーツが冷たく床を鳴らし、

深藍のジャケットの裾が、上品に揺れる。

黒髪を一本にまとめた姿は、まるで京都の舞妓がそのまま戦闘に加わったかのような気品すらある。


「……お里が知れるわ、こんな粗野な真似しはって」


敵の背後をすでに取っていた綾乃の手には、桜紋入りの小型武器。

風のような速さで敵を気絶させ、振り返りもせずに言葉を残す。


「そないなことしてる暇あったら、ぶぶ漬けでもどないどす?」


一同――静寂。

そして数秒後、

「な、なんなんやこのコンビはぁぁぁ!?」

絶叫とともに、敵は全員昏倒した。


 


煙が晴れると、すでに現場には彼女たち二人しか残っていなかった。


「へっへーん、今日も楽勝やったな! なぁ、あやのん♪」

「ほんま、騒がしいお人やわ……うちの耳が疲れますえ、美月さん」


ツンとすました綾乃と、肩で風切る美月。

赤と藍。熱と静。大阪と京都。


――このふたりが揃ったとき、無敵であることは、もはや国家の常識だった。


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