白いリボンは血の運命を隠す――戦後最大の禁断秘史・白石陽菜出生の真実
その少女は、あまりにも“光”だった。
白いリボンを揺らし、屈託なく笑い、誰からも愛される存在――白石陽菜。
だが、その誕生の瞬間から、彼女の人生は国家規模の闇に包まれていた。
陽菜の実父。
それは、国民から圧倒的な支持を受け、
「戦後最高の宰相」
「清廉潔白の象徴」
とまで称された元総理大臣。
金にも女にも権力にも溺れず、スキャンダルとは無縁。
海外首脳からも一目置かれ、歴史教科書では“理想の政治家”として語られる存在。
――そんな男が、ただ一度だけ、運命を誤った。
陽菜の実母。
今は白石家で静かに家事をこなす家政婦、杉本恵。
しかしそれは仮の名。
仮の顔。
仮の人生。
かつて彼女は、
小柄で童顔、しかし目を奪う肢体を持ち、
複数の名前と国籍を使い分け、
数多の要人を“闇に葬ってきた”
諜報機関の切り札――
**「東洋のマタハリ」**と恐れられた女だった。
彼女の接触は、死の予告。
彼女の微笑みは、転覆の引き金。
その毒牙にかかり、表舞台から消えた権力者は数知れない。
――そして、標的の一人が、あの元総理大臣だった。
だが、計算外が起きる。
恋ではない。
欲でもない。
それでも、命が宿った。
白石陽菜。
この事実が明るみに出た瞬間、
母子は消される運命にあった。
そのとき、立ち上がった男がいる。
波田司令官。
かつて諜報部の中枢にいた、
義理と人情と裏の顔をすべて知る男。
雨の夜、
震える母が抱きしめた赤子を差し出し、
涙ながらに叫んだ。
「お願いです……
この子だけは……
この子だけは生かしてください……!」
沈黙。
重すぎる沈黙。
やがて波田は、べらんめえ口調で吐き捨てる。
「昔から、
女の涙と、
ガキの寝顔にゃ、
俺は勝てねぇんだよ」
その一言が、運命をねじ曲げた。
波田はあらゆるコネを使い、
戸籍を書き換え、
記録を消し、
顔を変え、
名前を奪い――
少女を白石家の令嬢として生かし、
母を家政婦・杉本恵としてそばに置いた。
それは、最大の慈悲であり、
同時に最大の残酷。
母は、
自分にそっくりな娘に仕え、
毎日笑顔を見ることができる。
だが――
決して「母」と名乗ってはならない。
「お嬢様、体調はいかがですか?」
その一言を言うたび、
胸の奥で、何かが砕ける。
陽菜は知らない。
優しい家政婦が、
自分を命懸けで産み、
世界から消された女だということを。
白いリボンの妖精は、
血にまみれた運命の上に立っている。
この秘密を知る者は、
波田司令官、
養父、
そして母――杉本恵、ただ三人。
そして今日も、
何も知らぬ少女は、
無邪気に笑う。
――その笑顔が、
やがて国家を揺るがすとも知らずに。




