任務報酬は “あたり前だ” じゃ納得できへん!
ジェネラス・リンクの弱小下部組織を潰す、という任務は、戦隊ヒロインとしては朝飯前……とまでは言わないが、美月と綾乃にとってはストレッチ運動みたいなものである。数分の乱戦の末にアジトは壊滅。戦闘後、美月は片膝をついて汗を拭いながら、あくび混じりに「もうちょい手応えほしかったな〜」とこぼした。
「油断は禁物よ、美月。任務は最後までが任務どす」と綾乃が清楚に決め顔で言った直後だった。
一台の黒塗り車がツツーッと現場に滑り込み、中から現れたのは、政府高官として名を馳せる中年男性。髪にワックス、白いスーツにサングラスという、妙に照明が似合いそうな風貌である。
彼はポーズを決めながら、低音でこう言った。
「ナァ〜イスですねッ!」
美月と綾乃、見事に顔を見合わせた。
「……え、誰?」
「誰っていうか、何?」
突如差し出されたのは、どこか昭和の風を感じるシンプル包装の乾き物スナック。赤い袋に素朴なイラスト。高官は満面の笑みで言った。
「2人で仲良く食べてね♪」
スナックの名は──某クラッカー。そう、昭和生まれの親世代なら思わず口にしてしまいそうなフレーズのアレである。「当たり前だの○○○○」的な。だが、2004年生まれのミレニアム女子、美月と綾乃にとっては、まったくの未知領域。
「……は?」
「なに?この渇いた報酬」
綾乃は思わず口を尖らせ、美月に至っては「あんなん、駄菓子屋の奥でホコリかぶってるヤツやん!」と嘆く始末。
高官は構わずサムズアップで去っていった。
「……あの人、なんやろな」
「正直、敵より強烈だったかもしれない」
その日の夜、クラッカーはふたりの部屋の棚に“任務報酬記念品”としてしっかり飾られていたという。
なお、美月は後日ネットで「当たり前〇のクラッカー」を検索し、知れば知るほど「……せめてチョコつけてから渡してくれや」とさらに不満を募らせたとかなんとか。




