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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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181/699

「名も叫ばれず、拍手もなく――それでも彼女たちは来る」― 戦隊ヒロイン派生部隊《紀伊ハンター》始動 ―

戦隊ヒロインプロジェクトの本部、通称ヒロ室。

センター争いだの、イベント動線だの、グッズ在庫だの――

今日も派手な議題がホワイトボードを埋め尽くす中、隅のモニターにひっそりと映し出された一枚の資料があった。


【地域振興派生ユニット:紀伊ハンター】


誰かが笑ったわけでもない。

誰かが色めき立ったわけでもない。

だが、波田顧問だけが腕を組み、低く言った。


「こういうのが要るんだよ。今の戦隊にはな」


最初に名を呼ばれたのは、山本あかり。

四日市出身。突貫型。

会議室に入ってくるなり、「難しい話はあとでええですか? 現地、今からでも行けますけど」と言い切る女だ。


工場地帯も、商店街も、イベント裏方も関係ない。

壊れていれば直す。

止まっていれば動かす。

問題があれば、まず現場に飛び込む。


「ヒロインって、もっとキラキラしたもんや思てましたけど……まぁ、やることは一緒ですね」


それが、四日市の突貫娘だった。


次に紹介されたのが、白浜麻衣。

紀州・白浜。

舞姫。


彼女は多くを語らない。

だが一歩前に出ただけで、場の空気が変わる。


土地の記憶を知り、

人の感情を察し、

言葉にできない想いを“動き”に変える。


イベントでも、任務でも、

彼女が一度舞えば、不思議と人が集まり、空気が落ち着く。


「派手じゃなくていいんです。

ここに“居てもいい場所”が残れば、それで」


その声は静かで、しかし確かだった。


最後に立ったのが、春日美咲。

奈良。

――凡庸ヒロイン。


自己紹介は短く、特技も控えめ。

能力値はすべて平均。

突出したところは、どこにもない。


だが、隼人補佐官が資料をめくる手を止めた。


「……どこに行っても、トラブルが起きていない」


それが、美咲の実績だった。

彼女が関わった現場では、なぜか揉め事が起きず、

なぜか人が自然に動き、

なぜか“何もなかった”という結果だけが残る。


「私、特別なことは何も……

ただ、その場に合うように動いただけです」


鹿のように静かで、

気づけばそこにいて、

気づけば全体を整えている。


センターはない。

掛け声もない。

派手な決めポーズもない。


だが――

地域に入り、暮らしに触れ、

確実に“前より少し良い状態”を残して帰ってくる部隊がある。


恋も、名声も、ランキングも追わない。

彼女たちが追うのは、定着と継続。


遥室長が小さく笑って言った。


「目立たないけど……一番、戦隊ヒロインらしいかもしれませんね」


その日、正式に任務コードが付与された。


地域振興派生ユニット――《紀伊ハンター》


拍手はなかった。

だが、確かに始まっていた。


誰にも気づかれぬまま、

この国の片隅を守る、三つの影の物語が。

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