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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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180/705

非情の掟は鹿の道――紀伊半島に現れた三人のヒロイン・紀伊ハンター

それは「戦隊ヒロインプロジェクト最高戦略会議」と銘打たれた、だいたい毎回どうかしている集まりの夜だった。

場所はいつもの温泉旅館。議題は山ほどあるはずなのに、卓の中央にあるのは資料ではなく、麻雀牌である。


参加者は、隼人補佐官、上州の鬼教官すみれ、波田顧問、そして存在感が牌より薄いまさにゃん。

なお遥室長は不参加だ。理由は単純で、「徹マンは教育上よくないです」と言った直後に全員から無視されたからである。

翌日、隼人補佐官が三十分にわたって小言を聞かされるのは、もはや様式美だった。


「……でよ」

波田顧問が東を切りながら言った。

「最近、奈良の春日美咲が地味すぎるって話、上がっとるやろ」


「はい」

隼人補佐官は真面目に頷く。

「いい子なんですが、特徴が……」


「鹿ですよね」

すみれが即答した。

「奈良公園に溶け込むタイプ。存在が自然」


「悪くはねぇ」

波田顧問は笑う。

「だが人気商売としては、ちと厳しい。そこでだ」


波田顧問は牌を混ぜながら、思いついたように言った。

「奈良の美咲、四日市のあかり、紀州の麻衣。この紀伊半島トリオで、地域振興ユニット組ませたらどうだ?」


一瞬の沈黙。

そして、


「……それ、かなり良いですね」

隼人補佐官が真顔で言った。


「はい」

すみれも頷く。

「地味でも“線”がある。観光、食、文化。全部拾える」


その瞬間だった。

まさにゃんが、訳の分からない牌を振り込み、すみれが大三元でも和了ったかのような勢いで卓を叩いた。


「決まりだな」


こうして、最高戦略会議(ただの徹マン)で、春日美咲の運命は軽率に、しかし前向きに決まった。


――後日。


ヒロ室の会議スペースに、春日美咲、四日市のあかり、紀州の麻衣が並んで座っていた。

三人とも真面目で、素直で、どちらかと言えば前に出るタイプではない。


「派生ユニットを結成してもらいます」

隼人補佐官が説明する。


「役目は、紀伊半島全体の地域振興」

波田顧問が続ける。

「観光、文化、地元イベント。地味でもええ。地に足つけてやれ」


「ユニット名は――」

波田顧問が一拍置く。

「紀伊ハンターだ!」


三人の表情が一斉に止まった。


「……ハンター、ですか?」

美咲が恐る恐る聞く。


「紀伊半島と、昔の超有名アクションドラマをかけてな!」

波田顧問は得意満面だ。


「……そのドラマ、見たことある?」

あかりが小声で麻衣に聞く。


「いえ……」

麻衣も首を振る。


三人とも知らなかった。

誰一人として「キイハンター」を知らなかった。


「今どきの子はなぁ!」

波田顧問は笑う。

「ま、ええ。大事なのは名前より中身だ!」


そう言われて、三人は顔を見合わせた。

奈良、三重、和歌山。

派手さはないが、それぞれが愛する故郷がある。


「……頑張ります」

美咲が静かに言った。


「地元のためなら」

あかりが頷く。


「やらせてください」

麻衣も微笑んだ。


その瞬間、三人の中に、小さな火が灯った。

爆発的ではないが、確実に燃え続ける火だ。


――数日後。


三人はさっそく、奈良市での小規模イベントに投入された。

鹿と一緒に歩く美咲。

地元グルメを丁寧に紹介するあかり。

紀州の歴史と海の話を静かに語る麻衣。


派手な歓声はない。

だが、足を止める人は確実に増えていった。


「……なんか、いいね」

隼人補佐官が遠くから見て呟く。


「だな」

波田顧問も頷く。

「地味だけど、効く」


その夜。

三人は控室で並んで座り、少し疲れた顔でお茶を飲んでいた。


「私たち、目立ってますかね……?」

美咲が不安そうに言う。


「目立たなくても、覚えてもらえれば勝ちです」

麻衣が穏やかに答える。


「それに……」

あかりが笑う。

「楽しかったし」


美咲も、少しだけ笑った。


――今日もまた、地球のあらゆる場所で、派手な陰謀や暴動が渦巻く。

だが紀伊半島では、鹿が歩き、港が揺れ、山が笑う。


恋も、夢も、望みも捨てないまま、

非情ではない掟で、地元に命を賭ける三人。


彼女たちの求めるものは、誇り。

願うものは、日常の平和。


人は彼女たちをこう呼ぶ。


紀伊ハンター。


――元ネタは誰も知らないが、

この三人が守るものだけは、確かにここにあった。

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