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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク
プロローグ

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176/716

尾張弁はニャン語だった件――国立の歌姫、また一線を越える

国立の歌姫・藤原詩織は、今日も平和に頓珍漢だった。


きっかけは、ヒロ室の片隅で交わされた、器用な愛知県人の山田真央との何気ない雑談である。

真央はいつも通り、ドギツイ尾張弁でノンストップだった。


「それなぁ! ほんなら、こうガーッてやって、ドーンだがね!」

「……なるほど……」


詩織は、うんうんと深くうなずいた。

内容は一切理解していない。だが、なぜか“意味は伝わってくる気がした”。


その瞬間、詩織の脳内で一本の回路がつながる。


(……これ、猫に話しかける時の感覚と同じ……?)


その夜、藤原家。

リビングのソファには、藤原家の宝──

血統書付き、英国生まれの上品な高級メス猫「オーロラ」が鎮座していた。

毛並みはシルク、視線は女王。

鳴き声は「にゃ」ではなく「……ふん」。


詩織は、そっと近づき、しゃがみ込む。


「……オーロラちゃん……」


猫は見もしない。


詩織は、意を決した。

真央を思い出し、全身に“尾張弁”を宿す。


「なぁ〜、オーロラぁ?

今日も可愛ええがねぇ〜!

ごはん食べたんか? ほれ、食べときゃぁ!」


猫の耳が、ぴくりと動いた。


詩織は息を呑む。


「ほらほら、ツンツンしとらんで、

撫でさせたらええがねぇ!」


オーロラが、ゆっくりとこちらを向いた。


「……?」


一拍。

そして。


ゴロ……ゴロゴロゴロ。


「通じた……!」


詩織は、勝った顔をした。


その様子を、キッチンから父と母が眺めていた。


「……また変なことやってるわね」

「……いつものことだね」


父・藤原聡──世界的指揮者、マエストロ藤原。

音楽には鬼のように厳しいが、日常生活ではポンコツ寄りの天才である。


二人は放置するつもりだった。

だが、オーロラのゴロゴロが、あまりに本気だった。


「……ねえ、あなた」

「……うん。通じてる気がする」


詩織はさらに畳みかけた。


「ほらぁ〜、ええ子やがねぇ〜!

撫でられて嬉しいんだわねぇ〜!」


猫は完全に溶けた。


そこで、マエストロ藤原が、ぽつりと言った。


「……私も、やってみようかな」


母が止める間もなく、彼はしゃがみ込む。

そして、人生で初めて“尾張弁”を口にした。


「……オ、オーロラ……

ええ……その……

な、なかなか……ええ猫だがね……?」


猫は一瞬、固まった。


三秒後。


ゴロゴロゴロゴロ。


「……通じた」


マエストロ藤原は、静かに感動した。


「これは……言語ではないね」

「でしょう?」と詩織。


「リズムと圧と愛情だ」

「そうなんです!」


親子は深くうなずき合った。


その後、藤原家では

・猫に話しかける時は尾張弁

・叱る時は関西弁(なぜか効果あり)

・褒める時は標準語


という謎ルールが成立した。


翌日、ヒロ室。


詩織は真央に、目を輝かせて報告した。


「真央さん……尾張弁、猫に通じました」

「はぁ!?」


「ニャン語です。多分」


真央は爆笑した。


「何言っとるだがね!

……でもまぁ、通じとるならええか!」


こうしてまた一つ、

国立の歌姫・藤原詩織の理解不能伝説が増えた。


歌は世界級。

理屈は皆無。

だが猫には、なぜか優しい。


ヒロ室の誰かが、ぽつりとつぶやいた。


「……この子、戦隊ヒロインじゃなかったら、

動物番組に出とったな」


今日も平和である。

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