峠を攻める女たち:北関東スリーアローズ “榛名アタック”
上州の鬼教官・太田すみれは北関東スリーアローズの二人を前に、唐突に宣言した。
「次のステージは……榛名山の峠ライブだ!」
唯奈「……ハァ!? なんで峠なんけ!?」
結花「ライブはホールでやるものと存じますわ……?(栃木訛り混入)」
そんな常識的な抗議は、上州の風に吹き飛ばされる。
「峠を制する者が、北関東を制すんだよッ!!」
すみれコーチの目がギラついた瞬間、
唯奈と結花は “この人、今日も絶好調で暴走してる…” と悟った。
—ここは“プロジェクトD”が攻めていたはずの伝説の峠。
……だが今、いるのは 女3人の謎ユニット。
観客は峠族の兄ちゃん達。
エンジン音よりテンションが高い。
ドゥン! ドゥルルルル!
(峠族の車とバイクの空ぶかし)
すみれコーチがステージ代わりの広場に立つと、
後ろのスピーカーから突然流れ始めたのは——
「♪ナン・アバーーーーーッ!!」
(90年代のユーロビート風だが著作権配慮で何か分からない曲)
唯奈「うわ、なんか疾走感やべぇ曲流れだした!?」
結花「胸がドキドキしてまいりましたわ……胃が荒れそうでございます!」
すみれはユーロビートに合わせて腰をクイッと回し、
“レガシィ斬り” のポーズを決める。
すると峠族が謎の興奮で沸き立つ。
「すげぇ! あの女、峠の空気に馴染んでやがる!」
「完全に上州の風そのものだ!」
いや、それはただのポーズだ。
ステージ開始―
すみれ「はいッ! 唯奈ァ! 右から回れッ!
結花ァ! そっち惰性で滑るなッ!!」
唯奈「わ、分かったべッ!!(何も分かってない)」
結花「滑ってませんわッ!(すべってるのはトークです)」
二人のぎこちないダンスは、峠族の兄ちゃん達にも衝撃だった。
「うわ……可愛いのに動きが雑!!」
「イニDで言うと……“ヘアピンで止まる”レベル!!」
それでもすみれは容赦しない。
「おりゃああ! インプレッサ無双!」
ただの高速ターンなのに、砂利が巻き上がり観客が逃げ惑う。
唯奈「コーチ、砂利が……目ぇ入るって!」
結花「お肌に砂利は大敵でございますわーーっ!」
すみれコーチは一切聞いていない。
上州の女は前だけを見て走る生き物だ。
すみれが足元の側溝を指差し、叫ぶ。
「唯奈! 結花! 今日は“溝落とし”習得すんぞ!!」
唯奈「え、マジで!? うち、落ちたら普通にケガすんべ!?」
結花「わたくし令嬢ですのよ!? 溝に落ちる教育など受けておりませんの!?」
すみれ「バカ野郎! 戦隊ヒロインとはなァ、
時に心の溝に落ちて這い上がる者のことを言うんだよッ!!!!」
峠族
「お、おお……名言ぽい……?」
いや、全然意味は分からない。
ついに三人が横一列で並び、
決めポーズのままユーロビートのサビに突入。
峠族の兄ちゃん達は涙ぐむ。
「なんだか……胸にくる……」
「プロジェクトDもいいけど……こういうのも……悪くねぇ……」
唯奈と結花は息切れしてヨロヨロだが、
すみれだけは最後までテンションMAXだった。
▼無駄に重厚なナレーション
「——榛名山の風が吹いた。
少女たちは峠を知らず、峠は少女たちを知らず。
だが、この日のライブが北関東スリーアローズの伝説の始まりとなることを、
誰も知らなかった……」
(……実際はただの勢い任せの峠ライブである)




