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スイートバカンス  作者: 遠藤 敦子
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 繁忙期も落ち着き、私は達成感でいっぱいだった。繁忙期を乗り切った自分へのご褒美として、3連休をもらって2泊3日ソウルへ旅行する。ソウルに行くのは初めてだったので、明洞や聖水など王道の場所をメインで訪れた。節約旅行だったのもあり、韓国料理は食べていない。次回ソウルに旅行した際は韓国料理を食べて、もっとたくさんの場所を回ろうと決意した。

 帰国した翌日から仕事なので、職場のバックヤードに韓国旅行のお土産を置いておく。仕事中に同僚の久民(ひさたみ)さんから、

「大前さん、韓国行ってきたの?」

と訊かれる。私がそうなんですと答えると、久民さんは

「旅行? それとも推し活とか?」

と返した。旅行で行ってきたんですけど、楽しかったです。私の返しに久民さんは笑顔を見せる。

 山脇さんとラスト2人になるので、昼休みに私は仁木さんに「仕事ヤダ…」と言っているキャラクターのスタンプをLINEで送った。さらに山脇さんがやはり特定の髪型を選んだお客さんに

「女将さんっぽくなりますけど大丈夫ですか?」

と言っていたのを目撃し、そのことも仁木さんに伝える。すると仁木さんから

「あれはもう直らないわ。女将さんの件はマネージャーに報告する」

と返信があり、山脇さんに呆れているのが伝わってくる。



 私は時々、他のパートさんにこう訊かれることがあった。

「大前さん就職しないの?」

正社員として働いたことはあるんですけど、いろいろあって前の職場を辞めてしまったんです。私は訊かれるたびにこう返していた。これ以上深入りされたくなかったのもあり、前職でいろいろあったと言うと、もう詮索されなくなるので気が楽だったのだ。

 そんなこんなで気づいたら勤務し始めて1年1ヶ月になった。ふと思い立って、シドニーに留学していた時の友人であるポールにどうしているかと連絡する。

「元気だよ、君は?」

ポールから返信が来たので、私も元気だよと返信する。そこから会わなかった6年間のことを話し、大学卒業してからは社会人として2社で働いてきたことも伝える。婚約破棄したことはポールには内緒にしていた。

 ポールとやりとりを再開して、またシドニーに戻りたいと強く思うようになる。6ヶ月後にシドニーに行くことを目標に準備を始めた。貯金はあるので、ビザや語学学校などの下調べをする。私は副業でライターと英会話講師をしているので、こちらをメインでシドニーでは頑張ろうと決めた。マネージャーには3ヶ月前に「ワーホリでオーストラリアに行くので辞めます」と伝える。マネージャーは私の退職宣言に驚いていたけれど、引き止められはしなかった。



 いよいよ最終出勤日となる。私はバックヤードに「お世話になりました。ありがとうございました。大前」とメモを貼ったお菓子をバックヤードに置く。午前中で退勤するパートさんとの別れを惜しみ、あとは杉浦さんと社員さんたちだけだ。私は今日は早番なので、ひと足先に社員さんたちと杉浦さんにお礼を言って職場を後にする。職場を後にしてからいろいろ込み上げてくるものがあったけれど、私は次に向けて頑張ろうと決意した。職場のLINEグループも退会する。そして私は翌日、シドニーに向けて出発することになる。

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