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スイートバカンス  作者: 遠藤 敦子
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 新卒で勤めていた英会話教室の同僚と付き合い始めて、25歳の時に婚約した。家庭に入ってほしいという彼の希望で寿退社もする。今年の11月に入籍するつもりで準備を進めていたけれど、彼から

「俺もう、いぶきと結婚したいって気持ちが冷めた」

と言われて婚約破棄になった。具体的な理由を聞いてみると、私に不満があったわけではないようだ。私は浮気を疑ったものの、証拠がないのでその点についてはどうにもできなかった。

 しかしその理由での婚約破棄には納得できないので、私は法律事務所に行き、弁護士さんを通して彼に慰謝料を請求する。すると彼側にも代理人がつき、払いたくないという回答が返ってきた。それでも私の弁護士さんが何度も粘り強く交渉してくれ、私は彼から慰謝料をもらうことになる。着手金や成功報酬などそれなりの弁護士費用はかかったけれど、寿退社していたこともあって相場より多めの慰謝料をふんだくることができた。


 もう恋愛とかはいいから好きなことをして生きていきたい。ゆくゆくはバックパッカーになるか、大学生時代に留学していたシドニーに戻りたい。そう思うと正社員よりは非正規の方が時間に融通がききそうだ。というわけで着物レンタル店の受付スタッフの求人に応募し、面接の時点で即採用された。面接官--後に私たちのマネージャーであることがわかる--に

大前(おおまえ)さんにぜひうちで働いてほしい」

と言われたことが印象的だ。それでもずっとアルバイトでいるわけにはいかないので、もちろん私の中で期限も決めている。

 着物レンタル店ということもあり、私より若い20代前半のスタッフが多そうだというイメージがあった。あとは女性が多い職場なので、ギスギスしているのではないかという不安もある。しかしそうは言っていられない。緊張しながら初出勤を迎えた。

 初出勤の日、私は15分早く職場に到着する。30代前半くらいの杉浦(すぎうら)さんという女性店長が出迎えてくれた。明るめの茶髪のロングヘアに長めのまつ毛エクステもつけた出立ちの杉浦さんは怖そうな印象だ。しかし話してみるとそんなことはなく、フレンドリーな方だった。他にもスタッフさんが何人かいたけれど、優しい人が多く初出勤の私にすごく良くしてくれる。あまりの要領の悪さに足手まといになっていないか不安だったけれど、杉浦さんや他の社員さんたちが優しくレクチャーしてくれ、覚えるのに時間はかからなかったかと思う。

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