➈ 誓い
よろしくお願いします
カイルの家にて⋯⋯。
いつも二人でお茶を頂くサロンで今日はオーランと向かい合う。
カイルには婚約してから2年後に全てを話しているので、事情に明るい彼は二人で話す場所も提供してくれた。
それでも婚約者のある身で二人きりというのは頂けない。
どうしようかと思っていたら、カイルはサロンから見渡せる花壇の先にテーブルを運ばせ、そこでリリーと勉強を始めた。
試験前の家庭教師を買って出てくれて感謝だ。
二人で話したいと言う私に少し緊張気味のオーラン、私から切り出すことにした。
「オーラン。何故、行方不明のアリーの居場所がわかったの?」
「!!!!」
言葉にならない驚愕の表情を浮かべるオーランに私の予想の答えを見た。
「エミリーから乙女ゲームの話を聞いて、Dクラスのサミーに辺りをつけたんだ」
「そう。一言、私達にも言ってほしかったわ」
「ごめん。心配かけるし止められると思った。メリーは前世を覚えていただろう?聞きたかったんだけどあの時は聞けなかった」
「私に前世の記憶があるのを知っていたの?」
初めて聞く話に少し驚いてしまった。
私はオーランのように前世の記憶で商品の開発や新しいことをあえてしないようにしてたから。
「あのお茶会でメリーが怒ってテーブルを掴んでた時に君は下を向いてた。その時に”リリーはヒロインじゃないのに”って聞こえたんだ」
私は知らぬ前に呟いていたらしい。
なるほど、でもそれを何故前世と結びつけたのかしら?
疑問にオーランが答えてくれる。
「その時は別に何も思わなかった。俺は前世の記憶はあっても乙女ゲームとか知らなかったし。エミリーと少し話をした時に同じように”ヒロイン”って呟いてたから、ヒロインていうのが前世の鍵だと思ったんだ」
その後の事を、苦しそうに時折涙混じりに話してくれた、オーランだったが不思議な話をし始めた。
「隣国に話を聞きにエミリーを訪ねたときに『白いアネモネ』がキーワードだと教えてくれた。どうやって使うかはわからないと言ってたけど、俺は一か八かリリーの墓に手向けて祈ったら死に戻って来たんだ」
エミリーが同胞ってそういう事ね、彼女も転生者だったのね。
白いアネモネ!確かにあのゲームの解説本にキーワードとして出てきてた。でも何回ゲームをしても使うところがどこにもなくて、攻略本も出なかったし、ユーザーの中で謎のキーワードとして話題にはあがってた。
なんてこと!死に戻りのキーワードだったのかしら?
「あのね。1回目の話は辛くなるから、この辺にしましょう。話を振っておいて申し訳ないのだけど、もっと大切な話があるの」
「何?」
「あなたがアリーを嫌いながら、側に置くのは監視してるのでしょう?」
「⋯⋯そうだよ。そうか!メリーが2度目だからか!何故リリーの婚約者に俺が選ばれたのか、1回目と違うから不安だったんだけど、嬉しくもあった。とにかくそばでリリーを守れるし、アリーは婚約者が決まるまで側で監視するって決めたんだ。今必死で伝手を使いまくって彼女の婚約者を探してる。適当なやつじゃ駄目なんだ。彼女は自己中でプライドが高いだろう、自分の欲を満たせる相手じゃないとね」
「お茶会の時のあなたを見て、2度目だと気づいたの。だからリリーを守る為に、あなたにナイトを任せたのよ。それとあなたの性格、変わっちゃってそれもびっくりしたわよ」
「任せてくれて嬉しいよ メリー、ありがとう、今度は絶対に守ってみせるから!リリーのそばにいると自然と優しくなれるんだ。穏やかな気持ちでね。他は演技だ!アリーにお前に希望がないということを刻みつけるために他者と差をつけてる」
「それは絶対お願いするわ。ただ、今、一つ問題があるのよ。アリーは今回もあなたが好きよ。執着がどこまでかはわからない。あんなに冷たい態度をとられてるから希望を持ってるのがびっくりだけどね。でも変な噂があってそれを流してるのが元はアリーっぽいの。噂から絡めとるアリー側の作戦なのかもしれないわね。縁談に関しては結構うちも手を回してるのよ。でもアリーが断るから決まらないの」
「噂ってアレだろ、俺とアリーが実は好きあってるとかいうの。反吐が出る!死に戻った時が実はあのお茶会の前日だったんだよ。それよりも前だったらしっかり距離を空けたのに」
「起きてしまったことは覆せない。でもこれから起こる事はきっと変えられるわ。私の事は父とカイルには話してる。あなたが2度目かもということもね。だからこれからは協力し合いましょう」
「カイルも知ってるのか?カイルには1度目の記憶はないのか?」
「残念ながらね。少し期待したんだけど⋯⋯。
彼が1度目で亡くなったのは私の死後だから、いくつまで生きてたのかも知らないの」
「メリー⋯⋯。あのあと、幸せになれたかい?」
「幸せだったわよ。カイルや子供達に見守られて生涯を終えたわ。リリーの事以外は満足してるわ」
「良かった。事件の後は碌に話せず仕舞いだったら。⋯でも今度は協力者が沢山いるんだな。因みにうちの両親も知ってるから」
「ドートル侯爵様も!それは心強いわ。アリーの狂気を目覚めさせる前にみんなで力を合わせてなんとかしましょうね。今度こそリリーを守る為に!」
「あぁ今度こそ!守る為に」
二人で握手を交わし誓いあった。
転生死に戻りを舐めんなよ!
どんな手を使ってもリリーを幸せにする。
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