表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/34

① sideリリーベル

メインを男女どちらにするか決めきらずに書き始めちゃったので短編では纏められなかったです。


最後まで読んでもらえると嬉しいです。

よろしくお願いします。

私の婚約者はとても優しい。とにかく優しい。

誰に対しても優しい。だけど私が側にいるときは常に私を優先してくれる。彼の優しさに偶に勘違いして私に難癖つける令嬢にもちゃんと私をたててしっかりと婚約者だと伝えて諭してもくれる(とても優しく言ってるので更に勘違い女が増えてる感も否めないが⋯)

その彼オーラン・ドートル侯爵令息様が唯一冷たく接する令嬢がいる『アリー・メーキリー侯爵令嬢』である。

その態度はホントに幼馴染なのかと思うほどで見てるこっちが辛くなりそうなくらいの態度だ。

その二人の冷たい関係は私と二人が初めて会った5年前からになる。


私の生家スワロ伯爵家には娘しか生まれなかった。それを親戚達はいたく嘆いたが、父母や祖父母は違った。男児しか産んでない祖母、男しか育てられなかった祖父、弟しかいない父と母。女の子に免疫のない4人。

姉のメリーベルが生まれたときは一家総出&領民まで巻き込んで三日三晩のお祭り騒ぎ。

その2年後に生まれた私リリーベルの時に少しは感動も薄れたかと思いきや同じように三日三晩お祝いに明け暮れたらしい程、女の子を欲してたらしい。

なので私達姉妹は、それはそれは大事に育てられた。が、そこは貴族社会。行儀作法や学問に関してはそれなりに厳しく、祖母曰くどこに出しても恥ずかしくないようにとしっかりしっかり叩き込まれた。

姉妹で差をつけないようにと同じように育てられたけれども姉と私の性格はだいたい正反対だった。

物怖じしない姉と控えめな妹、と世間では揶揄されていたがまぁその通りだ。

姉のメリーベルは私が生まれた時に『このちっこい生き物を私が守るんだ!』と決意表明し、それからは私を構い倒した&庇い倒した。

何事にも姉が前に出てくれるので何もせずにポヤーンと過ごせる私は控えめというよりはただ「そこにいる」という感じだ。

だって何でも姉がお膳立てしてくれるのだ、生まれた時からね!

自分の意見を言う前に動いてくれる姉がいるのでそれはそれは楽だった。


そんな私が11歳になった時に後に婚約者となったオーラン様とその幼馴染のカイル・ソーダン侯爵令息様、アリー様と初めて会った。それは姉の婚約者との初顔合わせの時だった。

姉とカイル様の顔合わせが堅苦しくならないようにとオーラン様、アリー様、そして私が便乗お呼ばれした体でのお茶会だ。

そのお茶会で過保護気質満載(私のみに発動する)の姉が本領発揮して、コイツ気に入ったから!とオーラン様を勝手に私の婚約者に決めた。今考えたらとんでもない姉だ。

でもその姉の意見を聞き入れる大人達にもびっくりだが。

そのお茶会では一人だけ年下な私も交ぜてもらって楽しくお喋りしてたのだけどアリー様が私に投げかけた言葉で姉とオーラン様がキレた。

実は私はいつもの如くポヤーンとしてたのでアリー様が何を言ったのかは全然聞こえてなかった。

だから二人が何にキレたのかも正直未だにわからない。後日姉に聞いたけど言いたくないと返された。今では覚えてないらしい。

なのでこの時の言葉は私にとって未だに永遠の謎である。

この日から今に至るまでオーラン様はアリー様にのみ冷たいのだ。姉は覚えてないというくらいなのでアリー様とは普通に接してる。5年も前だしね。

でも私は気づいてしまった。


最初は通ってる学園の試験1週間前の事だった。私は借りてた本を返しに図書室に行き序でに何か借りていこうと本を物色していた。

ふと窓際の席に座ってるアリー様を見かけた。頬杖をついて外を眺めてたので、何の気なしにそちらを私も見てみる。そこにはオーラン様とカイル様が二人で談笑してた。

アリー様はその様を見ながら涙を一筋流しため息を吐いた。

これは見てはいけない!と反射的に思った私はそーっとその場から立ち去った。

その日からアリー様の様子が気になって私は、学園でアリー様を目で追うようになった。学年が2学年違うので主に休み時間とかなのだけども、よく見てみるとアリー様はあんなにも冷たい態度をとられてるのにオーラン様のお側にいつもいる。話すわけでも見つめ合うわけでもなく(見つめ合うとツンとされてた)側にいる。

私がアリー様とオーラン様を眺めながら「いつもお側にいるなぁ」とポツリと呟いたら、友人で子爵令嬢のマリーナは今頃気づいたの?遅っ!と言いながら訝しげな私に二人についての噂を教えてくれた。

曰く、あんなに冷たくされても側にいるアリー様、冷たい言葉を発していても側にいる事には文句を言わないオーラン様、ホントは二人は秘密の仲なのでは?というものだった。

《《《えー!!!!!》》》

ぜぇんぜぇん知らなかった。


衝撃の噂をマリーナに聞いた日は1日気もそぞろで鬱陶しいほど姉に心配されたし夜の晩餐のメニューも覚えてない。その日眠れないベットの中で私は落ち着いて考えてみた。

図書館での様子と常に側にいる感じで多分アリー様はオーラン様の事が好きなんだと思う。

ではオーラン様はどうなんだろう。

オーラン様のアリー様への冷たい態度が始まったのはあのお茶会の発言だったと二人の幼馴染で姉の婚約者のカイル様は言ってた。それまでの二人はとても仲が良かったらしい。

私達の婚約は政略ではないし、ましてやお互いに好意があってのものでもない。単に私に過保護な姉の鶴の一声で決まったもので、オーラン様のドートル侯爵家には何の旨味もない婚約だ。どちらかというとうちの伯爵家の方が侯爵家との繋がりが持てて万々歳だろう。

それにも関わらずオーラン様は私を婚約者としてとても大事にしてくれている。それはこの5年で実感してる。学園に入ってからは毎日会ってるし(侯爵家の馬車で送迎されてる)入る前も週に2回は二人で会ってた。誕生日のプレゼントには必ず直筆のメッセージカードもつけてくれたし、毎月必ず花束がメッセージ付で自宅に届けられた。だから私はオーラン様に憧れからの今では恋心を芽生えさせたし、彼も私に好意があるのだと信じて疑ってなかった。

ホントはオーラン様はアリー様が好きなのかな?

私だって不思議に思う。お茶会での発言にキレたからといってあんなに優しいオーラン様が他人に対してあんなに冷たい態度をとるなんて可怪しい。

しかも冷たい態度をとるほど嫌なら側による事さえも嫌なのではないのかと思うのに、側にいる事には文句を言わないなんて⋯⋯

考えれば考えるほど可怪しいを通り越して怪しくなってきた。

姉に相談しようかと思ったけどそれは悪手だと直ぐに思い直したが、ではどうすればいいのかとまた行き詰まる。その繰り返しでほぼ徹夜で過ごした。

元来がポヤーンとしてる私はこんなに考えたりする事がなかったので翌日から熱が出た。

考えすぎの軽い知恵熱だと思っていたが思いのほか高くベッドでウンウン唸っていると侍女から報告があったらしく姉が部屋に飛び込んできた。

文字通りホントに飛び込んできた。

「リリーーーー!どうしたの。なぜなの。あなたの体調管理は万全のはずだったのに、一体どういうこと」

眉を釣り上げて控えていた侍女に食って掛かる姉を止めるべく起き上がろうとするもなかなかに難しかった。その様を姉のあとに続いた母が見て止める。

「リリー無理に起きる必要はないわ。メリー少しは落ち着きなさい!全くリリーの事になると途端に性格変わるのやめてちょうだい。16年経っても慣れないわ」

お母様。。。16年なら慣れてほしいわ。

「お母様、お姉様。心配かけてごめんなさい。昨夜チョット長めの本を呼んだら夢中になってしまって寝付けなくなったの。休んでればそのうち落ち着くので大丈夫です。お姉様お医者様を呼んだのでしょう?それまでちゃんとおとなしく寝ていますわ」

過保護の姉の事なので絶対お医者様の手配はしてるはずと思ったら案の定

「もうすぐ到着されると思うわ。ちゃんと休むのよ。お父様に釘を刺されてしまったので学園に行かなければいけないのだけど、、私が看病した方がいいのではなくて?リリー寂しいでしょう」

「メリー。母親の仕事まで取らないで頂戴!さぁ部屋から出て!仕度をしないと間に合わないわよ」

「わかったわ⋯⋯リリー帰ってから話しましょうね」

「!!!」

聡い姉は何かを察したのかな。一瞬ゾクッとするような目をした後に優しく微笑みながら部屋を後にした。

「何も気にせずに休みなさい。お医者様がいらしたらまた来るわね」

テキパキと侍女に指示を出した後、母も部屋を出てくれた。

まだ高い熱の中でオーラン様とアリー様の事を考える。熱の割にはなんだか頭が冴えて結構客観的に考えられた。

もし仮にオーラン様が実はアリー様の事を好きだとしてあの態度なのはなぜなのかしら?

冷たくするきっかけがあの謎の発言?だったとしても過保護の姉でさえ忘れてしまって普通に接してるのにオーラン様がいつまでもあの態度なのが考えられない。ましてや側にいる事を許せるのなら普通の態度のほうが自然だし、周りにいらぬ勘ぐりをされる事もない。

どこまで噂を把握してるかは知らないけれど鈍い私なら兎も角、オーラン様ならば周りから情報は入るはず。にも関わらずどうして?

やっぱり好きだというのは違うのかしら?

ここまで考えた時に、到着されたお医者様の診察を受けて「疲れですかな」と言いながら熱が引くようにと、とてつもなく苦いお薬を飲まされて眠りについた。


────────────

午後になりオーラン様から花束が届いた。

"体調を崩したとメリーに聞きました。直接伺いたかったけれど無理をさせたくないと言われたので君の好きな花を贈ります。少しでも君が癒やされることを願って⋯

                君のオーランより"

いつもと変わらずメッセージの文字まで優しいオーラン様。ちゃんと直筆でしたためてくれてる。

どうしよう、私⋯もうオーラン様が好きで好きで離れられないくらい好きなんだと思う。

アリー様の涙や聞いてしまった噂の事をこのまま気づかなかったことにしたい。

何も知らないふりして過ごしていけるかしら?

こんなポヤーンとしてる私が仮面を被れるかしら?

贈られた花を見つめながら自問自答してみたが答えはわかってる。

聞かなかったことにするなんて無理よ。絶対顔に出てしまう。そうしたら私は気づかれないように下を向くしかない。ずっと?この先何年も?

耐えられないと思った。疑惑を抱きながらオーラン様と結婚するなんて私には無理だわ。

お姉様に相談させてもらおう。

朝の様子では何かを感じてるみたいだったしどのみち聞かれるだろう。

それならば自分からこの思いを聞いてもらった方がいいしお姉様が万一暴走しても止められるはず。

そう決めたら少しだけ心が軽くなり、苦い薬を飲んでまた眠りについた。

次はオーランsideです。

なるべく早めに書きます✐

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ