シアワセのカタチ
はい、どうも。
とあるリアルでの目的のために執筆した、台詞オンリーのやっつけ仕事です。BGMに『ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCD』の『河本 綾瀬編』を用いていたため、こんな感じになりました。
また、例の如く残酷描写のようなものも存在するため、苦手な方は撤退を。まあ、それほど残酷ではないので大丈夫だとは思いますが。
あと、もっともな注意事項。
読んだ後、深く考えないように。
では、ごゆるりとお楽しみを……
「ただいま」
「おう、おかえ――――」
「いやぁ、ごめんごめんこんなに遅くなっちゃって。ちょっとやること多すぎて、手間取っちゃった」
「あ、ああ……文化祭の、実行委員だっけか。大変だよな、上に立つって言うのも」
「まねー。ほら、そこどいてー。このアパート(うち)玄関せまいんだから、いつまでもそんなとこに立ってられたら入れないでしょ」
「おっと、スマネ」
「よっこい……しょ…っと。あーもう! この靴、紐ややっこしい!」
「とりあえず早めに上がってこいよ。もう夕飯、出来てるからな」
「え~、今日はなに~?」
「面倒だったし、食材も多かったから卵チャーハン」
「うわっ、拷問だ」
「冷えたの嫌なら連絡いれとけ。委員会で遅くなるのも理解する。ただ、飯だけは妥協しねぇからな」
「はいはい………。あ~あ、疲れて帰ってきた優等生な妹にこの仕打ちか……」
「本当に優等生で妹なら考慮しよう」
「あっ! 信じてないな××中でも十五本の指に入るあたしの実力」
「いや、『妹』はどこにおわすのかと」
「いーでしょ別に妹でも」
「血縁関係ねぇだろ。義理でもなんでもねぇし、俺ら家出だし」
「その家でも四年目よ! 妹名乗って何が悪い!」
「俺が『妹』という存在に抱いている幻想を粉微塵に撃ち砕こうと画策するな」
「へへ、何々? そんなに妹らしくない?」
「いや、らしいからしくないかなら、らしいだろ。ただ……」
「ただ?」
「妹というものはもうちょっと弱くてもいいと思う。少なくとも男子四人に絡まれて、一人残らずその股間を蹴り飛ばして悶絶させた挙句、番長として君臨してるような奴を妹とは認めたくないな」
「なぜそれを……隠してたはずなのに」
「ふっふっふ、俺の情報網を侮るなよ」
「――――御見それしました」
「そう、携帯電話のロックを打ち破る程度の芸当、二時間もあれば余裕……っ!」
「ぬぅあっ! 見た!? あれ見た?!」
「『十二月 二十五日。今日はクリスマスだというのに同居人にたたき起こされた。サンタさんの贈り物にできるような環境はとうに潰えたけど、せめてもうちょっとメルヘンを期待しても――――』」
「ちぇすとぉぉ!」
「げふっ! っておいおい、椅子はねえだろ椅子は!! てかどこから持ってきた!?」
「可愛い妹のEメール送信ボックス(ロック付き)を勝手に覗くような悪い兄には適当なお仕置きDEATH☆」
「『☆』ってゆーなー!」
「まぁまぁ。早くご飯ちょーだい」
「まぁまぁ、じゃねえぇぇ!! …………ったく。ほら。一応炒め直してるからちっとはマシだろ」
「あ、さんくー」
「箸とスプーン、どっちがいい?」
「蓮華ちょー」
「ない」
「ならスプーン。でかいやつ」
「あれかぁ? あれあったかな………こないだお前が寝ぼけて噛み切ったのがラストだったような気も………」
「ああぁぁぁあぁあれは噛み切ったんじゃなくて最初から折れる寸前だったの! あたしそんなに顎の力ないから! 金属噛み切る前に顎が壊れるから!」
「冗談だよっ………と。あったあった。――ほれ」
「うわっ……ととと。食器投げないで。これから使うんだから」
「むっ、掃除はまめにしてるぞ?」
「そーゆー問題じゃないの。まったくうちの馬鹿者は…………」
「生活費出せ」
「うっ………やだな、冗談冗談。生活一切の面倒見てもらってて、あまつさえ学費まで出してもらってる人にそんな事言わないって」
「なら、よし」
「いいのか…………。ま、いっか。いただきます」
「おう、食え食え。貪るように獣のごとく」
「そんな食べ方しないって」
「俺から見りゃいつもそんな感じだけどな」
「これでもおひゃえへるほ。ほんでほなふあはふぁふはうひ、あはひへんひふぁふいんふぁふぁら――――」
「飲み込んでからしゃべれ」
「……くっ……ぐぬぅっ?! ぐっっ……ぷっ………!」
「………ほれ、茶」
「うむぅ?! ―――っ、――――っ、――――っ、――――っ、ぷはぁ! あー二重の意味で死ぬかと思った」
「俺もびっくりだ……まさか煮え滾る緑茶を一気飲みしてくれようとは………」
「ふっふっふ、熱湯ごときに負けるあたしじゃないぜ」
「化け物め………こんなことなら冷水渡しゃよかったかな」
「あー、それ駄目。冷たいのは水まで、氷はも―――駄目」
「………お前はホントに人類か……」
「あいにくながらね。ごちそーさん」
「早っ」
「早寝早食いも芸のうち、よ。あー旨かった…………」
「お粗末さん。片付けぐらいは自分でやれよ」
「え~、いーでしょそれぐらい」
「ならフライパンと交代するか?」
「うっ………自分の、やります」
「わかればよろしい」
「あ~あ、まったく。こればっかりは苦手なのよねぇ…冷たいの。お茶もらえる? 煮え滾るぐらい熱いの」
「急須にまだ残ってるだろ?」
「ぬるいもん」
「はいはい……ちょっと待ってろ」
「うぃー」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「…………茶葉は?」
「あー出涸らしでいいよ。そんなにこだわりもないし」
「了解」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………そういやさ」
「ん?」
「今日あたり、じゃなかった?」
「……何がだ」
「そーゆー言い方するってことは、わかってるでしょ、あんた」
「……………………」
「あたしとあんたが、家出てここで暮らし始めたの………」
「おい」
「いや、若かったよねお互いに。あたしは――まだ小学生、あんたは………中二、だっけ? 二人して家出たはいいけど、金も泊るところもなくて往生してたところを大家さんに拾われたんだっけ……。あの時のおにぎりのおいしかったことおいしかったこと………通報しないのと、手伝いするのを条件に置いてもらって、今みたいになったんだっけ」
「待てよ、×××」
「高校からは、あんたが働き始めて――あたしもできるところから働くのも始めて……何回か危なかった時もあったけど、続いてるんだよね、今まで」
「だから――――」
「あの馬鹿どもも、おとなしくなって、理由も、なくなったけど………ずっとずっと」
「…………おい」
「でも考えてみたらあんたも根性あるわよね、ホントに。学校で二年間も虐められて、生徒全員に敵視されてただけじゃなくて教員からも見限られて親からも必要とされてなかった、そんな小学生の女の子連れて家出なんてさ………。ま、ついてったあたしもあたしなんだけど。でも、変なことされたっていい、なぁんて思ってたりもしてたっけ、あの時は。それでも、一人よりはずっとマシだったから」
「…………………」
「不要なあたしには誰も振り向かない。最初からどうでもいいから。異質に育ったから恐い。だから攻撃する。普通じゃないから理解できない。だから教員も見限る。そんな風に排斥に排斥重ねて……それでも頭だけは人よりマシだったからこうなって……ホントにあたしってなんなのかな―――」
「…………だから、待てって」
「……わかってる。わかってるよ、あんたの言いたいこと………。でも、思わない? こんな風に育ってないあんたにはわからないかもしれないけど、こんな風にずっと育ってきたとしたら……あんただって思うと思う。こんな暮らし続けて、一人じゃない。だけど、今のあたしは本当に誰かに――――」
「やめろ!!」
「――――っ!!」
「今は今、必要として欲しいなら俺がいる。それでいいだろ! 昔のこと考えるのはもうやめろ! またああなりたいのか?!」
「……………なりたくは、ない。確かに楽にはなるけど、痛いのはあたしも嫌だし」
「なら、やめろよ……そんなこと考えるのは……」
「うん…………」
「まったく、恥ずかしいんだから何回もやらせるなって、お前も」
「え~、ノーカン年齢なんだし小学生の時から一緒にいるんだから、別にいまさら抱きしめるぐらいいいでしょ?」
「馬鹿。お前自分が今何歳か自覚しろ。そして俺の年齢を考慮してくれ」
「え~と、あたしがいま十四歳で、あんたが高二。つまり『そーゆーこと』に興味深々な年齢なわけだから………」
「……………」
「ムラムラ来た?」
「てぃ!」
「痛っ?! いきなりデコチョップはないでしょ?!」
「ありだよ。変に自覚持たせて夜中にホントにむらっときたらどうする? その歳でオヨメニイケナクなるぞ」
「古ぅ。でも、あたしとしては別に良かったり」
「良かないわ! おもに俺の精神衛生的に。ていうかよ、」
「ん?」
「そんなことしたら、壊れるだろ」
「アパートけ?」
「確かにボロいが、その程度で壊れはしない。そのはず。そうじゃなくて――――」
「なくて?」
「今の生活が、だよ」
「なんか今日禁句のオンパレードだねぇ」
「お前が発端だ、責任取れ」
「体でかい?」
「だからそのネタから離れろ」
「でも、別にあたしはいいよ?」
「え」
「別に、家出した時点であたしたちの人生なんて滅茶苦茶だし―――いつ自殺してもおかしくないあの状況を普通って呼べるなら、だけど――とにかく滅茶苦茶だし、いまさらそんな事気にしたって始まらないでしょ?」
「…………お前、いいのか?」
「何が?」
「先月は、あんなに泣いただろ」
「あら~ばれてた?」
「隣で寝てるんだ。大泣きに気付かない方がどうかしてる。ともかく………俺が告白された程度で大泣きするほどのお前が簡単に受けるなんて、思えないからな」
「うん、前までのあたしだったら、そうだったろうね。でも、今は違う。条件が変わっちゃったから、そんな事が小さく見えちゃって……ぶっちゃけ今は貞操なんてどうでもいい。むしろ、なくしたい。解放されたんだもの、あたしは」
「解、放…………? ………お前、まさか」
「どのまさかかは知らないけど、たぶん正解。そっ。今日帰ってくる途中でね、会っちゃった。あのくそったれに」
「……………」
「どーもあたしたちのこと探してたらしいね、あいつ。こそこそ嗅ぎまわってる所にあたしが出くわして、向こうにとってはたなぼた、ってわけ。ついてるのか着いてないのか、わかんないわよね、あいつも」
「…………で、ここのことは……」
「しゃべってないよ? 当たり前じゃん。あいつにわからせるつもりもなかったしねでも…………」
「―――――」
「あの馬鹿………いつの間にか興信所なんて使う脳味噌付けてやがった……。視線感じるって、言ったよね? あれ、あのタヌキ親父の手先。どーも尾行されてたらしいわよ、あたし」
「! じゃあ、ここも………」
「バレてた。ついでにあんたのことも、全部ね」
「………それで、あいつはなんて?」
「あ、茶はいいわよ。気分変わっちゃった。んー、ほとんど聞き流してたからよくは覚えてないけど、あたしが素直にあいつのところに帰るなら、あんたのことは関知しない、もし断るなら警察行き、だったかな。よっぽどあたしのこと手元に置いときたいみたいね、あいつ。自分のしてきたこと棚に上げて、自分の都合ばっかり。相も変らぬくそったれだったわよ」
「……それじゃあ、」
「うん、生活は完全崩壊。もとの形には戻れません、ってね」
「………おいおい、うそだろ……」
「嘘じゃないわよ? 全部現実全部真実、嘘偽りの一切ない妄想抜きの事実。有機野菜もびっくりの無添加っぷりでございますってね」
「……それで、お前どうするんだよ……」
「どうするって―――行くわけないじゃん。あんな奴のとこ。好きにしろとか言っといて結局はあたしの事なんかどうでもいい、自分が気に入る気に入らないだけがすべての母親に、それに輪をかけた父親。そんな連中のところになんて、あたしが帰ると思う?」
「でも、それじゃあ警察に」
「警察? ああ、それ、もう大丈夫。あたしたちの生活を壊そうとする奴なんて、もうこの世にはいないから」
「! お前、それどういう事だ?!」
「どうって……そのままの意味にきまってるじゃない。あたしの暮らし、あたしの幸せ、あなたの暮らし、あなたの大切。それを勝手な都合でいじくりまわして破壊して、自分にとって都合のいい色をつけようとするような屑は、みんなもうこの世にはいないの。
ホントはあんただってわかってるでしょ? ―――隠さなくてもいいよ。玄関のとこで絶句したのはわかってるし、それに返り血避け損ねたのはあたしなんだしさ」
「怪我でも、したのかと思ったぞ」
「うん、そう見えるかもね脇腹だし。ブレザー汚さないのが精いっぱいでちょっと被っちゃった。でもそれ以外は、全然わからないでしょ? ほら、あんたからもらったこのバタフライナイフ。血糊なんて、全然ついてないよ」
「……………っ」
「いや、ホントにさ、思っちゃったよ。どうしてこんな簡単なことさっさとやっとかなかったんだろう、って。ちょっと話したい事があるっていって路地裏に連れ込んでさ、そこで脇の下に一撃で終わりだよ? あんなに脂ぎってたのに、脇の下がスカスカなんだよねぇ………
お母さんもそう。わざわざ家まで御宅訪問して、居間まで移動していきなりテーブルクロスかけて一突き。でも、ほら。あんたも知ってるとおり、あいつって結構しぶといからね。だから上からクッション重ねて腹にナイフを何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も何回も………!! ははっ、悲鳴も上げられなかったみたい。よっぽどショックだったのかな? 痛そうな顔してたよ。こう、全体がぐにゃってゆがんだ表情になっちゃってさ、ただでさえあんまり良くない顔がもう怪物だったねあれは。
ついでにあなたのとこのもやっとこうかとも思ったんだけど…………」
「………! お前……」
「やってない、やってない。そんな怖い顔しないでよ。よくよく考えたらあんたの前の住所知らないんだよね、あたし。
あー、でも知ってたらやってたな。あんたのとこの家ともつながりあるっぽかったから、向こうが突き止めたってこと話してないとも限らないし」
「、親父が………」
「でも、安心していいよ。もしここへ来たとしても、あたしが全部上手くやるから。最近は人の急所も覚えたし、ナイフの練習も欠かしてないでしょ? だからあいつら程度なんて、もう敵じゃないんだから」
「だからって、お前。何も殺す事はな――」
「あるよ。この暮らしを壊そうとした、それだけでもう殺意の動機なんて十分。
だって、あいつらのせいなんだよ? あんなくるしい思いしたのも、あんな痛い思いしたのも、あんなに一人だったのも……
だから、あたしはこの暮らしを守るためならあいつら程度殺すのにためらいはない。今の暮らしを守るなら、足の一本ぐらいくれてやってもいい。
だから、あんたは安心して……? もしそうなっても、あたしが全部上手くやるから」
「………………」
「ふふふ、こんな顔したあんたって、始めて見た。
ねぇ、あんた………ちょっと、甘えてもいい?」
「…………ああ」
「ふふ、ありがと。それじゃあちょっと失礼して……と。――――あーこれこれ。この感触。あんたの胡坐の上。小学生のころからずっとこれ気に入ってたんだけど、最近は無理だからね。御無沙汰だなぁここも」
「…………なあ」
「ん? 何?」
「これから、どうするんだ? こうなった以上、後には引けない。隠し通すか、認めるか、そのどっちかだけど……」
「うんうん、わかってるね、あんたも」
「ああ。実質的に、もう隠し通すしか道はない」
「そう――――
あたしは、今のこの暮らしが大好き。命に代えてもいいぐらい気に入ってるし、幸せ。ほら、帰ってきた時のやり取りって、あるじゃない? 『ただいま』『おかえり』ってやつ。あれって、なくさないとわからないんだけど存外しみるよね。
帰ってきたら、自分じゃない人が迎えてくれる。敵意も害意も抱いてない、少なくともあたしを受け入れてくれる。そんなかんじがしてさ、あったかいんだよ。
前の時にはなかったからさ………今は、それがよくわかる……」
「…………」
「あんたも、そうでしょ?」
「………ああ」
「ふふ、似た者同士だ。
だから、あんたも今の暮らしを手放したくない。なんだかんだ言っても、あたしを傍に置いておくし、なんだかんだ言ってもあたしをこの暮らしから解き放ったりもしない。お互いにお互いが必要だから。そうでしょ?」
「ああ」
「うん、あたしも同じ。生きてきてまだ十四年だけど、あたしはあんたの隣にいないあたしを想像できない。想像したくない。
だからあたしは、あんたをあたしのところにつなぎとめる。約束で、誓いで、責任で、あたしにできる全てで」
「……………………」
「ねぇ、あんた――――」
「顔が近い」
「――――あたしのこと、好き?」
「………あ――」
「親愛の意味じゃなくて、愛情の意味で。あたしはあんたのことが大好き。自分全てと交換にしてもいいぐらい、あんたのことが欲しい。だけど、あんたは? あんたは、どうなの?」
「………………」
「そうじゃないなら、それでいい。そうじゃなくても、あたしはあんたに伝えておく。
あたしは、あんたの事が大好き。
だから……あんたはあたしを好きでいてくれる?
あたしの事を、必要としてくれる?」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「………………ああ」
「!」
「俺も、お前が必要だ。お前が必要だし、お前が欲しい。俺だって今の暮らしを手放したくないし、今の暮らしを壊す奴がいたとしたら、そいつを殺してでも止めたい。
これが、俺の幸いなんだ。
俺がいて、お前がいて、今の暮らしがあって、世界がある。俺にとっては、そんなかんじなんだよ、今は」
「…………………よかったぁ」
「ん?」
「拒絶されたら、どうしようって思ってた。また一人にされたら、どうしようって思ってた。あの闇の中には、もう帰りたくないのに、帰るはめになったらどうしようって思ってた」
「おいおい、俺が拒絶した事あったか?」「あった」
「いつ?」
「一緒にお風呂入ろうって言ったとき」
「…………そりゃ、当然だろ。あの時はお前も小さかったとはいえ女の子で、俺も照れのある歳だったし」
「じゃあ、今は?」
「…………NOとは言えない」
「ふふ、正直者」
「何とでもいえ」
「…………………」
「…………………」
「…………ねぇ」
「ん? 風呂か?」
「それもあるけど………あんたの昔の住所、教えてくれる?」
「…………………」
「やらなきゃならない事、あるから」
「……………ああ、わかった。
でも、今日はもう駄目だ。明日、教えてやるよ」
「………ありがと」
「礼を言うのはこっちの方だ。
ありがとな、×××。俺の幸いを、守ってくれて」
「ふふ…………お安い御用よ」