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レイラと魔法の羽根ペンの記述  作者: 文字司のレイラと魔法の羽根ペン
9/19

9 金色の久滝葉





 少し前に地震が起きて、たくさんの人と建物が死んだ。


 そしてその状態を、国家は気にしないらしい。


 僕の住んでいる区域は、治安が悪い。


 それを理由に、知らんふりを決め込むつもりらしい。


 

 少し前、って言ったって、少なくとも弐年は前だ。


 そんな復興中の建築舗装途中の囲いが当たり前な区域に僕は生きている。



 僕の名前はアルデウス。


 苗字を知らない。


 なぜかママが苗字を教えてくれない。



 ここの区域のひとは望まない妊娠をして出産するひとも多くいるから、


 気にしていた時期もあるけど、


 最近から深く考えないようにしよう、と思っていた。



 ここの区域は都市の排気ガスで、空模様も少し違う見え方をする。


 排気ガスに色があって、それが空中に蒸発して煙みたいなのが立っている。


 おもに目立つ色は、グリーンとピンクだ。


 そのガスは人体に有害で、この区域は元試験者たちとその子孫が多く住んでいる。


 有害物質は身体を腐らせてしまうことが分かったので、機械補助が必要になった。


 みんな修理代やヴァージョンアップ代金を割安で払っている。



 僕ね、歌を考えるのが好きなんだ。


 ラジオで音楽番組が聴こえてきたり、テレビで流れているBGMだったり。


 そこからだと思うんだけど、どうしてか歌を思いつくんだ。



 レイラ:それはどういうジャンル?



 分からないんだよ、歌に詳しいわけではないから。

 

 うーん・・・一曲、僕の作ったお気に入りのがあるから、それを書き出して欲しい。



 ――

 ―――――・・・


 【 僕の街 】



 築きゆく この街の 花影 さえも 凌駕する


 男の 想いを 重ね 色を塗る


 

 消えていく この街の 星屑さえも 無くなるの


 その街の 黒い羽根持つ ひとになる


 黒い羽根の 天使がいる



 明けていく 朝焼けの その瞳に 映るさまは


 美しく そして なくなるはずだった



 禁断の 林檎とか 虹雲に成る葡萄だとか


 神様の お酒だとかを 口にする


 鬼も幽鬼も 描いてく 僕の街 


 ―――――

 ――


 ・・・僕ね、この歌を口ずさみながら歩いていたら、声をかけられたんだ。


 協会のひとで、君には容姿も含め色んな才能がある、って。



 協会のひとは、存在しないと言われていたこの区域を視察に来ていたひとたち。


 新たな才能への出会いを求めている、って言っていた。


 協会にはそのための派遣のひとがいるらしい。



 それでね、協会について話したらママが僕の苗字を教えてくれたんだ。



 コクーテ。



 最初は冗談なのかと思った。


 そしてママが話してあげるかわりに、あなたは協会に入りなさいって言ったんだ。



 協会のひとはスーツの襟に、金色のバッジを付けていた。


 久滝葉の紋章、協会員の証らしい。


 僕ね、なぜかそれを知っていたんだ・・・協会の紋章について既視感が起きた。



 そしてコクーテって言うのは、協会に支援している派閥らしい。



 ママが言うには、僕はコクーテの血。


 もし子供ができていたら、


 女の子ならレース、


 男の子ならアルデウスって言う名前にしてくれ、って、父親が言ったらしい。



 レースって言うのは、僕の街で信仰している聖女の名前。


 アルデウス、って言うのは、黒い羽根を持つとされた童話に出てくる伝説の架空人物。


 

 コクーテは大規模なマフィアだ。


 そしてその後継ぎ問題でごたごたしているらしい。


 後継ぎ候補は皆が腹違いのきょうだいで、ひとり骨肉の争いで死んだらしい。



 今は、有力候補としてカレオス、って言うひとが若様って呼ばれている。


 そのひとも死んだことになっていたけど、僕の父親ではないらしい。


 他のきょうだいに殺されかけて、記憶喪失状態だったから助かったらしい。


 今はなんとなく記憶を取り戻して、協会への支援者らしい。



 ママは父親の名前を言った。


 そしてそれは、おそろしいことだった。



 コクーテの総裁。



 黒系統金属の機械補助で背中に翼がはえている、年齢不詳の男だ。


 少なくとも、と言うなら、八十年くらいは生きているひとだ。


 ターシュイド・・・多種混合系の血をした、昔「神童」と呼ばれた天才。



 世代が違うから情報操作や逸話が残っているのを聞いたことがある。


 そしてそれは王族のミイラを食べただとか、その羽根の力で皆既日食が起きたとかだ。


 それだけで、少し怖い。


 それも計算のうちなんだろうか、と思う。


 あまり言いたくない不吉な話ばかりが、噂として話題になったりするひと。


 

 八十歳で子供ができるのだろうか?


 七十を超えて子供ができた前例は聞いたことがあるけど・・・


 後継ぎとして育てられる話になったんだけど、


 なんだか性に合わない気がしたから断ったんだ。



 ただ、コクーテに関わりなさい、ってママに言われた。


 ママは身体が弱いから、僕をひとりにするのが不安なのかもしれない。



 ・・・協会員として、カレオスさんに仕えることになった。



 彼の夜の噂は、何となく聞いたことがある。


 女性から趣向を変えた、と。



 まさか、きょうだいに手出しはしないだろう、と思う。


 ただコクーテが有名なのは、きょうだい同士で子供を作ったことを発表したことだ。


 それと、総裁の子供が総裁の子供を産んだ、とかいうのも聞いたことがある。



 とにかく公に謎の多い一族らしい・・・でも、新生活頑張ってみるよ。



 少し不安だったから、『文字司のレイラ』に話してみたかったんだ。


 協会員として将来幹部になる予定だって言うから、君と実際に対面するかもね。


 すこしすっきりした・・・書き留めてくれてありがとう。


 ――

 ―――――・・・

 

 この記述はレイラと魔法の羽根ペンが書き留めたことを記しておく。

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