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レイラと魔法の羽根ペンの記述  作者: 文字司のレイラと魔法の羽根ペン
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1 はじまりの狼男事件



 協会側におもむき、自らが実行したいと申請してのこと。


 妻は狼男に殺害され、そして可愛らしいまだ幼い娘も「それ」に狙われている。


 自らが実行したいと言ったのは、その情緒ゆえである。


 妻を残忍に殺されたこと、そして私の寿命がもう短いこと。


 のち娘のレイラは、協会にあずける手筈をした。


 そして協会側から、『狼男への毒羽』と言うアイテムを受け取った。


 今晩は満月で、おそらく警戒はいつも以上に必要だろう。


 それにしても、天使の羽根を煮込んで混ぜた、と言うのは未だ信じがたい。


 ただ、本当に天使の羽根が存在するのであれば、狼男に効くような気がする。


 天使はもちろん、天のつかいだからだ。


 抜け落ちた分を使ったと聞いたが、きっと天使の羽根は狼男への『毒』だ。


 物質上ナイフであるので、善人を刺すこともできるから試すなと言われた。


 ナイフの先を、自分の利き手の反対で少し触れてみる。


 少しの痛みと共に血が滲み、やはり「それ」に効くのか困惑する。



 ・・・来た。


 咆哮が聞こえる。



 私はレイラに家の中にいるように指示して、エルフの折った護りのローブを着た。


 そのエルフの護りのローブのおかげで姿の見えなくなった私は、


 狼男に急接近して、そして「におう。レイラの父親のにおいがする」と


 恐ろしい声で言われた。


 思わず大声を出し例のナイフで狼男討伐に挑んだ。


 そして私は首を掴まれ地面から足が浮いた。


 もうすぐだ。


 もうすぐ私は狼男の片手の握力に窒息して死ぬだろう。


 そして、私の渾身の一撃、狼男の腹に刺さったナイフが感覚で喋った。



 毒が利いてる・・・相打ちってことになるが、これで娘は助かると思う。



 その一拍後、火矢が放たれ、狼男に刺さった。


「よく頑張ってくれたっ。今だ、撃てっ」


 宵闇に火矢が美しく思えるほど、放たれ、狼男に刺さる。


 そうか、毒羽で動けぬのか。


 狼男の苦悶が近くから聞こえ、そして、その状況に私は少し笑った。



 狼男は絶命し、そしてそのままの体勢で硬直したままだった。


 

 私は、病院のベッドで目を覚ました。


 狼男討伐に貢献したとして、国の偉い方から秘密裏に勲章をいただいた。


 そして短くなった寿命を前に、娘のレイラがお見舞いに来てくれた。



 ちゃんと書いていたよ、ペン。



 まだ幼いレイラは、無邪気に魔法の羽根ペンを示した。


 そうか、と返事をつぶやく私の声がかすれている。


 

 その日の夕方、私は美しい妻の幻を見た。


 そしてそれは、『お迎え』というものらしいことが自然と分かった。


 妻は白いドレスのような衣に、背中に翼をもっていた。


 いつの間に天使になったんだい?


 妻は、もう苦しくなくてよ、と言った。


 そうか・・・


 レイラが心配であるが、私は手を伸ばしてきた妻を抱きしめた。


 

 この記述を、魔法の羽根ペンがレイラの手を借りて書いたことを言っておこう。


 魔法の羽根ペンは、天国とかあの世と呼ばれる場所にいる


 善人たちの想いで動いている。


 まだ幼いレイラは、この自分の腕を経由して書き出される文字の内容をまだ知らない。


 ずっと知らないほうがいいのかもしれない、と、あの世にる今、父として記述しておこう。

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