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第六十五話 蔵井戸くんはアナルファックが大好きなんだ

瑠衣はとあるマンションの一室の前に立ちチャイムを押した。

すぐに蔵井戸がドアを開け、瑠衣を引き込む様に招き入れると直ぐにドアを閉めた。

「あんたさ、キャンセルするなら・・・」

早速瑠衣が不満をぶちまけるが乱暴に蔵井戸に口を抑えられた。

「うるせえ帰れ!!」

まるで張り手のようだったが蔵井戸の慌てた様子から、何かを察しようとし(奥に誰かいるの?)の部屋の奥を指で差してみた。

蔵井戸は微かな音も立てまいとするかのように小さく首を振り、人差し指を口に当て(分かったか?)と理解を求めてからもう一度ドアを開けると「さっさと帰れ!」そう言ってドアを閉めた。

瑠衣には手を向けてジェスチャーで(動くな、静かにしていろ)と示し、部屋の奥へと行くとスピーカーから音楽をかけてからレモンイエローのデバイスを手にし、それをトイレに置きドアを閉めるとようやく瑠衣を部屋の奥へと招き入れた。

瑠衣は警戒しながらキッチンへと入り、蔵井戸以外誰もいないことを確認すると(なに!?)と声を出さずに聞いた。

スピーカーからはTHE B52sのロックロブスターが流れている。

「まあ座れよ、なるべく音は立てるな。声も抑えろ」

蔵井戸はそう言って冷蔵庫からビールを二本取り出しテーブルに置きつつ席に着いた。

「なによ、ヘマしたの?車を出させておいて連絡も寄こさずにキャンセルしたのかと思ってたけど」

蔵井戸は舌打ちし髪を掻いた。

言いにくいことではあるがこうも簡単に悟られるとそれはそれでイラっとする。

だが今は瑠衣の協力が必要不可欠だ。

「カウンターを食らった」蔵井戸はイラつきを抑えて絞りだすようにそれだけ答えた。

「岸に?酒屋なんでしょう?」瑠衣の表情は、たかが酒屋に?と言った物だ。

「ああ・・・いや、もう一人にだ」

「もう一人って、そっちも酒屋でしょう?アンタの手下の指を折ったとかって言ってたけどさ」

「いや・・・まあそうだ。すぐに手を出すようなチンピラかと思っていたけど、用意周到に待ち構えていやがったんだ」蔵井戸は自分の安易な予測を後悔するように唇を噛んで下を向いた。

「酒屋じゃ・・・無かったってこと?」

「ああ、向こうもデバイス持ちだ」

「ええ!?何よそれハッカーズ同士でやりあうことなんてあるの?」

「あるんだよ、ジェネレーション次第だけどな。お前はだいぶ低いからこういう事にはならないだろうがな」蔵井戸はほんの少し瑠衣を下に見るような態度を取ったがそれは良くない行為だった。

「へー、それで私より上のアンタは返り討ちにあって・・・ちょっと待って、逃げてきたの?」

悔しいほどに理解が早い女だ。

「いや、それが・・・」

「なによ、まさかアンタ・・・」

「そうじゃない、見逃されたんだよ・・・」

瑠衣に眉をひそめて見られたので蔵井戸は思わず視線を反らした。

いっそのこと目の前のこの訳知り顔の女をブン殴って後ろからケツの穴にブチ込んでこのイライラを解消してみたいが、それよりもみっともなくてまともに顔が見られない。

「ミノガサレタ?」

「そうだよ」

「デバイス持ち同士がやりあって殺したわけでも、殺されたわけでもなく。見逃された?本当に向こうもハッカーズだったの?間違いない?」

スピーカーから流れる曲が伊勢海老からクイーンのアナザーワンバイツァダストへと変わる。

「やつらのデバイス本体は見ていないがジェネレーションの事を聞かれた。あいつらもハッカーズだ」

「そのジェネレーションって何なのよ」

「ハッカーズのランクみたいなものだ、お前はまだ三桁以下なんだろうよ」

「それが高いとこんな風にハッカーズ同士でやりあうことがあるって言うの?そんなこと聞いてなかったわよ!!殺しなんて冗談じゃない!!」


あの野郎は俺から全てを奪って

俺はこんな有様だよ

上手く行ったとそれでハッピーか

これ以上は耐えられないぜ

いますぐ外に出て暴れ狂いたいぜ


「落ち着けよ、そうじゃない。ハッカーズの中でルールを破った奴はバウンティに載る。それを仕留めるのは別のハッカーズに回される。告知されてハンターを募る場合もあるようだが今回は俺に名指しだった。まあ、いやなら断れるからな心配するな」

「シンパイスルナ?」瑠衣が、視線を下げる蔵井戸の顔を覗き込む様に顔を下げた。


お前を殴り倒して地面に這いつくばらせて

そのケツに突っ込んでやってな

泣き叫んでもゆるしてやらねえよ

俺はヤるといったらヤる男だぜ


もちろん蔵井戸にそんな覚悟はない。

今はあの酒屋コンビに対抗するために瑠衣の協力が必要なのだ。

蔵井戸は表情を隠すように下を向き目を瞑り少しでも怒りを発散しようと歯を食いしばった。


「頼む、お前しか頼れないんだよ」

蔵井戸は泣きそうな表情でそう言い、何があったのかを全て話し始めた。



「じゃあ、あんたのデバイスは今トイレに置いてあるけどさ、その後藤って言う男が今トイレにいると思った方が良いってわけね」

「そう、そうだよ・・」

理解が早くて助かる、いい女だよな。ケツの穴に突っ込ませてくれれば最高の女なんだが。








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