第三十話 照間瑠衣という女
瑠衣は息も絶えだえに全身で呼吸しているかのようだった。
田中が可愛い仔犬の、先ほどまで田中が入っていたそこに触れた。
瑠衣がその手をピシャリと叩いた。田中は素直に手を引っ込めると瑠衣はその下腹に残る田中の体液を指で拭った。
それを自分の唇に塗りたくり舌で軽く舐めると田中に向き直りキスをせがむように唇を突き出した。田中はそれに答えそっと唇を重ね、瑠衣がしたようにその唇を舌で舐めた。
精液と瑠衣が混じった味がした。
「イヤじゃないんだ?」瑠衣が聞いた。
田中は微笑みながら軽く首を横に振った。
「シャワーを浴びましょう」田中が言い立ち上がろうとすると瑠衣はその両手を田中の腰に回した。
田中が瑠衣を見下ろし小さく首をかしげると瑠衣はイタズラ好きの仔犬のような顔で田中を見上げた。
瑠衣はしがみつくように田中の腰に回した手に更に力を入れて自身の身体を引き寄せた。
もう一度いたずらっぽく笑い田中の顔を見てからその顔を田中の股間に埋め、田中のそれを口に入れた。
今度は瑠衣のヒルが田中のそれを這いずり始めた。
「ちょっ!」思わず田中の腰が引けるが瑠衣のヒルは止まらない。
瑠衣はその唇と舌で田中のそれをイジメ始め、頬をすぼめ時に軽く歯を立てた。
田中の手が瑠衣の頭に置かれた。やめさせるのは簡単だが、もちろん田中は止めない。慈しむように瑠衣の髪を触りその頭を撫でた。せめてもの抵抗として瑠衣の耳を触るがまるで意味はなかった。
アドバンテージは瑠衣にある。
瑠衣の舌が田中のそれの先端を這いずり回り唇で扱き頬をすぼめて吸い上げる。
田中もその手で瑠衣の胸を弄ったが瑠衣はもうそれに意を介さずに口で、舌で唇で、その頬で田中のそれを咥え吸い舐め上げる。
たちまち田中のそれはまた屹立した。
それは瑠衣の小さな口には収まらず瑠衣は先ほどまで自分の中を掻き回していたそれの先端に舌を這わし続けた。
もう田中のそれがそれ以上大きくはならないのを見て取った瑠衣は田中に見上げた。
田中が身を屈め唇を重ねようとすると瑠衣はその両手で田中を突き飛ばした。
田中の身体はその程度ではよろめくくらいのものだが促されるまま素直にベッドの上に倒れ込んだ。
瑠衣はベッドに倒れ込んだ田中に跨がろうとした。田中は這うようにベッドの奥に身体を進めた。
瑠衣がそれを追いかけ上に乗った。
屹立した田中のそれをその手でつまみそこに乗った。また田中が瑠衣の中に入った。
瑠衣が両手を田中の腹に置き深い息を吐いた。
瑠衣は田中のそれをその身に収めたまま身体を倒し田中の上に覆いかぶさった。そのまま一度、二度と腰を動かし田中の肩に歯を立てた。
田中が小さなうめき声を上げると瑠衣はその口に自分の唇を重ねた。そして瑠衣は唇を重ねたままその腰を動かした。
瑠衣は起き上がり両手を田中の腹に置き腰を動かし始めた。
上下に叩きつけるような動きではなく、田中に擦り付けるような腰の動きだった。
田中が腰を動かそうとすると瑠衣は田中のお腹を叩きそれを諌める。
今は瑠衣にアドバンテージがある。
瑠衣は仰け反りながら腰を動かし、いっとき田中を見つめ不敵に微笑んでから田中にの腹に手をついて腰をグラインドさせることに集中していた。
瑠衣は目をつぶりそれに没頭した。
快感のうめきを漏らしながら腰を動かし続けた。
瑠衣の吐息がまた荒くなっていく。瑠衣が腰を田中に擦り付けるように動かし、段々とその動きが早まっていく。瑠衣は淫靡な声と吐息を吐き続け短い叫び声を上げ全身を震わせると力尽きたように田中の上に覆いかぶさった。
瑠衣の身体がビクビクと痙攣しているのが田中に伝わる。
田中はその背中をなで瑠衣が落ち着くのを待った。
「また?」田中が聞くと瑠衣は田中の胸に顔をうずめたまま小さく頷いた。
田中は瑠衣を抱きかかえ起き上がった。瑠衣は入ったままの田中のそれに刺激され身を縮めた。
アドバンテージが田中に移る。
田中は瑠衣を乗せたままその足を伸ばさせると、瑠衣のお尻に手をかけた。
手にヌルりとした感触が感じられたがそれはもう田中のものなのか瑠衣のものなのかは分からない。
田中はその手で掴んだ瑠衣のお尻を引き寄せた。
「きゃっ!」瑠衣が思わず声を上げる。
田中が手の力を抜くと瑠衣がまたずり下がる。
「あっ!」また瑠衣が声を上げた。
田中がまた瑠衣を引き寄せる。
「あぁぅ!」瑠衣は抑えられない声を上げ田中の胸を子供のように叩いた。
「だめ、だよ?」瑠衣が潤んだ目で言う。
今度は田中が意地悪な顔をして首を振った。
田中は瑠衣の腰を自身の腰に擦り付けるように引き寄せ、また戻し、また引き寄せた。
瑠衣は何かを、いや止めてくれるよう懇願しようとするが、それは言葉にならず快感に耐えるうめき声しか出てこない。
だから田中の腕は止まらない。
田中のそれが瑠衣の中を強くかき混ぜるように蠢いている。
瑠衣は必死に田中の首に手を回し耳元でかすれるような声で囁いた。
「ねぇ……まっ…て?ね?」
田中がまた腕を引き瑠衣の腰を引き寄せた。
「んん!!」瑠衣が悶え力が入らないようで、かろうじてその両手が田中の首にかけられている。瑠衣は田中の首にぶら下がるようにしたままもう顔を上げることすら難しい。
「お願い。少しね、休ませて?」
瑠衣が荒い息を吐きながら懇願すると、田中はしばしその腕を止めた。
瑠衣はなんとか片膝を立て田中のそれを抜き、ベッドの上に倒れ込んだ。
田中は、脱力しベッドの上に突っ伏した瑠衣を見た。力が抜けたその身体の汗が輝いていた。
田中がその背筋に流れる汗を指で擦る。
「あ……」瑠衣が僅かに身悶えた。
田中は瑠衣の背中に覆いかぶさりまた瑠衣の中に入る。
「ダメだっ……て…」瑠衣がなんとか振り向き田中を見た。
潤んだ仔犬の目で。
田中がゆっくりと深く瑠衣に入っていく。
ベッドに突っ伏し田中に乗られている瑠衣は少しも逃れられない。
瑠衣はその小さな手でシーツを掴み必死に堪える。
田中は瑠衣の体温と汗と、その身に走る快感の鼓動を全て感じとろうとするかのようにその小さな身体に身を重ねる。
そして腰を動かし続ける。その動きは常にゆっくりで、時に浅く時に深く瑠衣の中をかき混ぜる。
田中のセックスはいつもこうだ。腰を叩きつけるようなことはしない。餅をつく杵のようにその腰を女性の身体に叩きつけるのではなく、胡麻をするすりこ木のように擦り付けかき混ぜるように腰を動かす。
田中のような体格の男に腰を叩きつけられては女性はそこから快感を得られたとしても負担も大きいだろう。
田中はゆっくりと腰を動かす。
瑠衣の全身が震え瑠衣の中がまた蠕動し田中のそれを締め上げた。
田中がそれを感じ、しばしの間だけ動きを止めるがまだ田中のそれは収まっていない。
田中がまた腰を動かす。もう瑠衣はなすすべもなくベッドの上に突っ伏して、できることと言えば淫靡な声を上げながらシーツを掴み耐えることだけだ。
始めは田中のゆっくりとした動きがもどかしかった。しかしそれはどこまでも、止まること無く瑠衣を遠くに連れて行こうとする動きだった。
瑠衣が少し休もうと立ち止まっても田中はその手を握りもっと遠くへ瑠衣を連れて行こうとする。
瑠衣がゴールだと思ったそこは田中にとってはそうではない。
瑠衣が少し休ませてと懇願しても田中は笑みを浮かべ瑠衣の手を引いて歩みを止めてくれないのだ。
だが瑠衣を引く田中の手はとても優しく瑠衣を無理矢理に引き立て回すようなことはしない。
どこまでもそっと優しく、時に意地悪く瑠衣を導く。 瑠衣に大きな波が訪れようとしていた。それを感じ取った田中の動きが僅かに変化する。
田中は動きで瑠衣の波はどんどん大きくなりついにはそれに包まれた。
瑠衣の中が強く蠕動し田中のそれが絞り上げられると、田中もまた到達し瑠衣の背中に出した。
田中は深く息を吸って、ベッドの上で時折身体を痙攣させる以外動かない瑠衣を見た。
「瑠衣さん」
瑠衣は震えるように小さく首を振った。
田中が瑠衣の紅潮したお尻に手を置くと、その身体が怯えるようにビクッと震えた。
もうこれ以上イタズラはやめておこう。
「シャワー浴びてきます。瑠衣さんは?」田中はそう言って瑠衣を抱きかかえようとその身体の下に手を差し込んだが瑠衣は、まだ無理だと首を振った。
田中が仔犬を可愛がるように瑠衣の頭を優しく撫で髪を梳いてあげた。
「休んでいてください」
田中はベッドから出て浴室へと向かった。
浴室のドアが開く音がして、すぐに閉まる音がした。
程なくして田中がシャワーを浴びる音が聞こえてくる。
瑠衣は起き上がり田中のコートからそのスマホを取り出し、サイドキーを二度押してカメラを起動させた。
自分のバッグからスマホを取り出しアプリを起動させそれを田中のスマホと並べた。
アプリが対象を察知し瑠衣はアプリを操作し田中のスマホをハッキングする。
もちろんこれだけでスマホをハッキングすることは難しいが、まずカメラにスパイを仕込むのだ。
それは次に田中のスマホが起動した時にその動きを記録しておく。つまりパスワードだ。
次に瑠衣が田中のスマホをこっそりと手にすることが出来ればそのパスワードを知ることができる。
そこで田中のスマホを完全にハッキングする事ができる。
瑠衣は田中のスマホをコートに戻し、自分のスマホをバッグにしまった。
瑠衣の狙いはハックエイムの敵を見つけ出し、そして殺すことだ。
警官のスマホはその情報に近づける有力な手がかりの1つだ。
瑠衣はさきほどまでのセックスを反芻するかのようにまたベッドに横になった。




