第十九話 後藤
岸は革のハーフコートを羽織って部屋を出ると目指すべき場所もないままにバスに乗り移動した。
1時間ほどバスを乗り継ぎ移動した後に、伊達眼鏡をかけて薄暗い公園のベンチに座っていた。
このゲームには必勝法など無いということはわかる。人と人が殺し合うのだから必勝法などあるわけがない。もしそんな物があるのならそれは戦いではなくただの殺戮でしか無いだろうし、それを手にするのはビギナーの岸ではないだろう。
つまり必勝法などないし、あっては困るのだ。
しかしそれでも岸は一方的に不利な状況に置かれているのではないかと思う。福田と中井戸の二人はサーチをかけてみたらたまたま岸を見つけたのではなく、最初から岸を探しにきたように思える。岸の顔や背格好は分かっていないようだが、何かしらの情報を得て岸を狙ってきているようにしか思えない。そしてこの3人目も。
3人目はどんな男なのだろうか。
岸はレザーコートのポケットに手を入れスタンガンを握った。
これでまた殺すのか?その次はどうすればいい?4人目は不可能だ。なら、ここで……。
岸は公園のベンチで両手で顔を覆いうつむいて3人目を待った。
コートのポケットの中でスマホに通知が来たことが分かった。
岸は微動だにせずにいた。
深夜のこの公園にいるのはおそらく岸と3人目だけだ。3人目はすぐ近くにいて岸の存在を把握したはずだ。だが岸は動かなかった、顔を上げることもなくただじっと待っていた。
この3人目を真正面から倒せるくらいでなければ4人目は倒せないだろう。そう思った。
真正面から戦って倒す必要がある。それくらいできないとこのイカれたゲームは生き延びることが出来ないと思った。
だが本心は違う。人と人が真正面から殺しあって一方的に倒せる。そんなことが出来るわけがないのは分かっている。相対する二人が一撃で相手を倒すことなどできるわけがない。そんなことはよほどの実力差があるか、信じがたいほどの幸運が無ければ不可能だ。
それは格闘技の試合を見てもわかる。ただの一撃で試合が終わることなどほとんどない。それに相手が真正面からくることなどないだろう。標的が、殺すべき相手が深夜の公園でベンチに座って俯いていたらどうする?俺なら少なくとも背後から忍び寄るか、不意を突こうとするだろう。だがそれはスタンガンのような武器しか持っていない場合だ、それしかないのならばそっと近づく必要がある。しかし相手が飛び道具を持っていたら?向こうの茂みの影からクロスボウのようなもので狙いを付けていたら?サイレンサーを付けた中国製のトカレフを構えていたら?岸は自分が殺されたことにすら気が付けないかもしれない。さらに言えばそんなたいそうな武器すら必要が無いかもしれない。ナイフを投げられたら?投げられたナイフの一撃では致命傷にならないかもしれないが、その刃に何か薬物が塗りこめられていたら?真正面から勝つなどという事は実に甘い考えだ。
岸は半ば諦めていたのだ。
終わりにしたい。
もしくは・・・岸はまたわずかな可能性に掛けるつもりだったのかもしれない。
「死んでよ」
岸の前に立った誰かが言った。
岸が顔を上げるとそこには一人の女が立ち、その両手には包丁が握られていた。女は震えていた。
「あなた岸って人でしょ?もうあなたを殺さないとダメなの」
「なぜ?」岸は聞いた。
「なぜって・・・。だってもう、どうしようもないのよ!お願い、死んでよ」
この女は岸と似たような状況のようだが、違うのは女が岸の名前を知っていると言う事だ。岸は相手を刺激しないようにゆっくりと立ち上がり敵意が無いこと示すようにポケットから手を出し両の掌を女向けて言った。
「俺を殺したってそれで終わるわけじゃないだろ?落ち着け、まずはそう、落ち着いてくれ。なあ話をしよう、な?」
「あなたを殺さないとダメなの!どうしようもないの!」女は興奮気味に言った。
「なあ、頼むから落ち着いてくれないか?俺を殺して全てが終わるのか?そうじゃないだろ?俺を殺してもその次はどうするつもりだ?」
「でも、でもあなたを殺さないとダメなの」
「だから、俺を殺してもその次はどうするつもりだ?」
「そんなのわからない!!」女は両手に持った包丁を岸に突き出した。
「なあ、ならその次をどうするか俺と話そう。俺も同じだ、二人で話し合って解決しよう?な?」岸は両の掌を女に見せて女を落ち着かせようとした。
「ほら、包丁は置いて」
「でも・・でも・・」岸は包丁を渡せとは言わなかったし女は唯一の心の支えとでもしているのか包丁を手放さなかった。
「危ないから、包丁は置いて」岸がそう言うと女は包丁から手を離した。包丁は地面に落ちた。
「ほら座って、話し合ってみよう。なにか解決できる道が見つかるはずだよ」岸が促すままに女は力が抜けたようにベンチに座った。
岸は女を刺激しないように少し距離を開けてベンチに座った。
「何があったんだ?」岸が問うと女は感極まったかのように泣き始めたが、数分も泣き続けた後に嗚咽交じりに少しずつ話し始めた。
女は20分ほど泣きながら話を続けたが、要約すればホストクラブに入れ込み過ぎてクレジットがなくなりどうにもならなくなった。それで岸を殺しに来たという事らしかった。このゲームでは何でも買えるようだがホストクラブにまで及んでいるとは思わなかった。そうは言ってもホストクラブにクレジットをつぎ込む?本気か?
岸は女を落ち着かせようと、しかし驚かせないようにそっと背を撫でてやりつつ聞いた。正直に言えば大事なクレジットをホストクラブに使う女に対して岸の方が驚いていたが。
「大丈夫、それくらいなら俺がなんとかできるよ、いくらくらい必要なの?50万?100万?」ホストクラブへの支払いなら現金でも賄えるだろう。
「1200万」女は言った。
「1200!?」岸は思わず声を上げたが、女の視線が地面に落ちた包丁に向かうのを見て言い直した。
「ギリギリ何とかしてあげられると思う、だから馬鹿な事は考えないで、な?」
女は信じられないという気持ちが半分と、そんなわけないという気持ちが半分で岸を睨んだ。
岸には分かった。この女は信じたがっている、どうにもならない自身の境遇を赤の他人に預けたがっているんだ。
「危ないからこれは投げるよ?いいね?」岸は女を見ながらゆっくりと立ち上がり地面に落ちた包丁に近寄った。女が反応したが岸は両手を広げ女に向けた。
「大丈夫、投げるだけだから。向こうに捨てるよ?いいね?」岸は女を刺激しないようにゆっくりと動き、そっと地面の包丁に手を伸ばし摘まむ様に拾うと「投げるよ」そう言って包丁を二人とも手の届かない茂みに放った。女は少し安心したようだがそれは岸も同じだった。
岸は両手を拡げ女に見せながら「何か飲み物を買ってくるよ」そう言って自動販売機へと歩いた。
時折振り向き女を見たが先ほどの岸を真似するかのようにうなだれたままベンチに座っていた。岸は両手に革手袋をはめてから自販機でジュースを買い求めた。
岸はお茶とコーラを買い再び女の左隣に座った。女はまだすすり泣いていて安心したというほどではなかったが包丁を手にしていた時よりかはだいぶ落ち着いているようだった。岸の両手にはめられた革手袋を気にすることもなかった。
女が岸の差し出した二本のペットボトルを見比べコーラを指をさすと岸はコーラのキャップを外し女に渡し、自分の分となったお茶のキャップも外し一口飲んだ。
「でも1000万はねえ・・」そう岸が言うと女は話が違うとばかりに岸を睨んだ。
「何とかしてくれるって!」
「いや、うん・・・でもさホストクラブなんてボッタくりみたいなもんでしょ?少しは踏み倒せるんじゃないかなぁ、全額払う事なんてないよ」
「でも、そんなことをしたら優くんに迷惑かけちゃうよ」女はコーラを一口飲んだ。
「優くんって言うのはホストの名前?」
「うん・・ナンバーワンになるんだっていつも言ってるの。だから協力してくれって」
協力?その協力って言うのは俺を殺すことも含まれているのか?俺を殺すと1200万も手に入るのか?
「でも優くんが俺を殺してこいって言ったわけじゃないでしょ?」
「う、うん・・・」
「え?まさかその、優くんに言われて俺を殺しに来たの?」
「・・・うん」女は意外とあっさりと衝撃の告白をして、またコーラを口にした。
「そっか・・でもさ人を殺してこいなんて言う男はどうかと思うけどな」
「そうハッキリと言われたわけじゃないけど、でもそれしかできないし・・」またコーラを飲んだ。
それしかできない?本気かこの女。岸はポケットからカプセル剤を二つ取り出し女に差し出した。
「これを飲むと気分が良くなるから」
女は少しばかり驚いた顔で岸を見た。そして言った。
「カプセルって初めて。ダウン系?」
「そう、ダウン系」岸はダウン系が何のことかはすぐには分からなかったが察しは付いた。そう、ダウン系。究極の。
女はカプセル剤を口にしコーラで流し込みこれから訪れるであろう薬効に期待して岸にニヤ付いた顔を見せた。だが1分もしないうちに何かおかしいことに気が付いたようだ。だがもう遅い。岸は右手をポケットから抜き女の肩を強く抱き寄せた。同時に女は激しく痙攣した。スタンガンの電撃のせいなのか青酸カリによる薬効なのかは分からない。女が岸に顔を向けた。噛みつかんばかりに顔を寄せてきたがその口はダウン系の苦しみからか痙攣からか強く歯を食いしばっていた。岸は右手で女を抑えつつスタンガンを当て続け、左手では女の口を抑えつつ岸から少しでも離れさせるように逆を向かせた。
青酸カリはアーモンドの匂いがすると言われているがそれは青酸カリそのものの匂いではなく、青酸カリを飲み込んだ時にそれが胃酸と反応し発生する青酸ガス、シアン化水素の匂いらしい。そしてシアン化水素は人体にとって猛毒だ。
今の女の口臭は臭いと言ったレベルではない可能性が高いし、その匂いが本当にアーモンドに似た匂いなのか確かめようとするのは命がけになる可能性がある。
岸が調べた情報ではほぼ即死と言う記述を見たが女は数分間はもだえ苦しんでいた。おそらくは即死と言うのは即座に絶命するという意味ではなく、もはや助からないという意味が含まれているのだろう。例えば人はギロチンで首を斬り落とされたら即死する。絶対に助からない。だが首と胴体が切り離されても10秒くらいはまだ意識があるらしいという事を聞いたことがある。
岸がそんなことを考えながら女の身体を抑え込んでいるうちに女は動きを止めた。
岸は女の頭を自身の太腿に乗せ優しく髪を撫でてあげた。小柄でやや痩せた体形の女だった。岸は少しの間、女を撫でていた。胸を触ると小柄な割に意外とふくよかでCカップか、いやDカップくらいかと感じだがその下で拍動しているはずの心臓の鼓動は感じられなかった。
女は死んだ。岸は深夜の公園にいる普通のカップルを装うように右手で女を撫で、左手は女のバッグを漁っていた。目的の物はすぐに見つかった。レモンイエローのスマホだ。
となるともうこの女に用はない。岸は深夜の公園のカップルを覗いている奴がいないことを周囲の監視カメラで確認し、女の死体を引きずって公園の茂みに隠すとやや落胆しつつも何事もなかったように中野のマンションに帰宅した。
岸はどこか諦め自暴自棄になっていた。殺されても仕方がないとさえ思っていた。だがまたわずかな可能性に賭けた。このイカれたゲームを共にする仲間が出来るのではないかと。しかしあの女は論外だった。だから殺した。
ホストクラブに入れ込み劉だか優だかいうホストの勧めるままに俺を殺しに来るような奴に背中を任せられるわけがない。だから殺した。どうしようもないヤク中の阿婆擦れを殺したに過ぎない。
岸はそう思い込みたかったが何かが岸の心を激しくかき混ぜ泡立てた。
それはおそらくは四人目の問題だ。これからは相手を殺しても死体は放置できない、適切に処理する必要がある。このゲームを信用するのならだが、もう信用せざるを得ない、それ以外に選択肢はない。
岸は既に二人の男を殺し更に女を殺した。二人の男の死は少なくとも一般には知られていないようだし女の死もニュースになることはないのだろう。だが四人目は違う。このゲームのルールを信じるのなら、四人目の敵を無事に殺すことが出来たとしてもその死体を自分で処理しなくてはならないようだ。四人目を無事に殺せたとしても路上の車の中に、河原の草べりに、公園の茂みに放置したら次の日には誰かがそれを見つけ他殺体を警察が知ることになり、さらに次の日にはそれは岸の行った殺人であると調べあげ、その次の日に岸は警察署の檻の中にいることになるだろう。いや、このゲームを信用するのならば岸は警察の鉄格子の中に納まる前に死ぬことになるのかもしれない。
上手に仕留めた相手の死体を岸の自宅まで持ち込んでここで処理する?そんなことは不可能だ。どうやって死体をここまで運べばいい?自宅に連れ込んで殺すか?もっと不可能だ。女ならまだしも男をどうやってここに引きずり込めばいいんだ。殺しあう相手を自分のテリトリーに誘い込むなど相手がゲイでも不可能だ。
岸が頭を抱えているとレモンイエローのスマートフォンに通知が来た。
「あなたは徳井さんをキルしました!ボーナスクレジットをゲットしました!」
それだけだった。岸がゲームにログインし中身を確認すると確かにクレジットが増えているようだった。さらに岸は徳井と言う女が持っていたレモンイエローのスマートフォンを取り出した。岸の持つ物を全く同じものだった。試しに背面の指紋認証に触れてみたが当然解除はされなかった。スマートフォンのサイドボタンを押してみたがパスワードの認証を求められただけだった。分かるわけがない、せめて女の身分証明書でもあれば生年月日か何かから推測が付けられたかもしれないがスマートフォン以外何も盗んできてはいない。岸はしばし考えたが何も思い浮かばずに適当にパスワード入力画面を操作した。もちろん解除できるわけがなかった。もう一度試したが当然無理だった。さらに試すと女のスマートフォンの画面は真っ暗になりそれ以上何も反応しなくなった。サイドボタンを押しても画面は真っ暗のままだった。バッテリーが切れたのではなさそうだった。
すると岸のスマートフォンに反応が来た。女のスマートフォンを置き自身のレモンイエローのスマートフォンを確認すると新たな通知が来ていた。
「徳井さんのデバイスはロックされました!徳井さんのクレジットとアイテムの半分をあなたがゲットする権利があります、ゲットしますか?」
岸は自身のスマートフォンを見ると「ゲットする」と表示されていた。それををタップしてからゲームを確認してみたがいくつかのアイテムは増えていたようだがクレジットはほとんど増えていなかった。
徳井と言う女の所持するクレジットはホストクラブへと流れほとんど残っていなかったという事なのだろう。
岸は四人目の対策を考え付かないでいた。殺し合いに勝つ方法ではなく、その後の処理についてだ。
誰にも見られずに死体を自宅まで運ぶのは無理だ。そうなると殺した後にレンタカーで運び、どこか人目の付かない場所で処理するしかない。埋めるか?それも難しいだろう。東京には、少なくとも23区内では死体を安全に埋めることが出来る場所などそうあるとは思えない。死体を納めるほどの穴は縦2メートル、幅1メートル、深さも2メートルと言ったところか。そんな大きな穴を誰にも見つからずに掘ることなど不可能だ。なら前もって掘っておくか?いつ来るか分からない敵に備えてそんな大きな穴を自身の所有する土地でもないところに掘っておいてもすぐに見つかるだろう。それがある日埋められていたら?誰だって何かあると疑うだろう。そして警察に通報する。
ダメだ。埋めるのは無理だ。
なら海に捨てるか?やはり人目に付かない場所を探しておく必要があるがこれならば埋めるよりかは簡単そうに思える。浮いてこないようにおもりを付けて投げ捨てるだけだ。体内にガスが溜まりにくいように内臓を抜き身体とは別に捨てる必要があるだろう。そんなことが出来る場所があるのか?水深はどれくらいあればいいのだろうか。5メートルは必要な気がする。大潮の日でも水深5メートルを維持できる場所、潮が大きく引いた時に「何か沈んでいるぞ」と見つかることが無い場所だ。
東京湾のどこかの埠頭なら船が付くわけだからそれなりの水深が維持されているはずだ。例えば若洲の埠頭。ここは外国から大量の木材を積んできた大型船舶が接岸する場所だ。自衛隊が戦車を海運するために使う場所でもあり、海上自衛隊の護衛艦「いずも」が来たことさえある。水深はかなりの物だろう。
だがそう言った場所は誰でも気軽に立ち入れるというわけではない。外国船籍の船が来る若洲の埠頭など論外だ。入るにはIDカードの提示、もしくは身分証明書の提示は必須だろう。
若洲以外でも東京港の埠頭は夜間ともなれば港湾局が雇った警備員が巡回しているかもしれないし、そこに至るまでの道路には地方から来たトラックが明日の荷物を待って列をなして夜を明かしているだろう。
船から捨てることが出来ればいいがもちろん船などそう簡単にレンタルできると思えないし夜間の東京港を不審がられずに航行することは難しそうに思える。そもそも岸は船舶免許を持っていない。
切り刻んで川にでも流すか?
どこで切り刻めばいい?浮浪者が住むブルーシートハウスが無数にある荒川の川べりでバーベキューよろしく死体を解体すればいいのか?江戸川ならそれは無いが中国人が牡蠣を取りに来る。
それとも誰にも見つからないようにレンタカーの中で解体して「血の海にして汚してすいませんでした」と言って返却するか。
なら車を買うか。それはいつ届く?車ってもんはディーラーに行って「これ下さい」と言ってエコバッグに入れて持ち帰れるものではないし、ネットで目当ての車をクリックすれば明日には届くと言った物ではない。四人目の処理には到底間に合わないだろう。
岸は何か解決策はあるかと思いゲームを起動し確認した。
「三人キルしたので次からは死体の処理は自分で行う事!」
言われなくても分かっている。
「今回のボーナスにはボディボックスが一つあるからまずそれを設置しよう」
ボディボックス?なんだそれは?
岸はアイテム欄を確認し、そこにボディボックスと言うアイテムが追加されていたことに気が付いた。
それをタップするとアイテムの詳細がポップされた。
「これはボディボックス。倒した敵プレイヤーを入れておくと業者が回収してくれるよ!まずは設置してみよう!設置可能な場所は自分が管理可能な場所で回収可能な場所だよ」
これは!?こんな便利なアイテムがあるのか、なら先に言え。
岸がもう画面を一度タップするとスマホのカメラ機能が起動し岸の自宅を映し始め、そこには人一人が収められそうな箱がAR表示された。
だがその箱は赤く表示され「設置」と言うボタンもここではダメだよとでもいう風にモノクロ表示だった。岸は試しに「設置」をタップしてみたがブーというビープ音と共に「ここは回収可能エリアではありません」と表示された。角度を変えてもう一度押してみたが同じだった。部屋を移動してタップしてみても同じだった。寝室でも玄関でも風呂場でも同じだった。
岸は試しに玄関のドアを開けマンションの廊下で試してみたが今度は「ここは貴方の管理区域ではありません」と同じようにビープ音が鳴った。試しにマンションの一階に降りてロビーで試してみたが同じだった「ここは貴方の管理区域ではありません」と表示されビープ音が鳴った。
自分の管理下にあり、かつ回収業者がアクセスできる場所でないとダメなのか?岸は自室の玄関のドアを開けた状態で自室を表示させてみたがボディボックスとやらが赤から変わることはなかった。
一瞬とはいえ期待しただけに落胆は大きかった。自身の管理下にあり、回収業者とやらが自由に入り込める場所。という事は自身が所有する一軒家の庭とかなら大丈夫なのだろう。マンションに住まう岸にはこのアイテムは無用の長物だった。
落胆し切った岸の手の中でスマホが再び振動した。そこには表示されたのは・・・。
「ボーナスステージが始まりました!今回の参入可能人数は二人です!参加したい人は今すぐ【参加】をタップ!お得なボーナスをゲットしよう!」
岸は少し考えてから【参加】をタップした。
「あなたはボーナスステージに参加しました。ボーナスキャラをキルして特別ボーナスをゲットしよう!今回のボーナスキャラは・・・・」というポップが表示され岸がそれをタップするとさらに別のポップが上がった。
「今回のボーナスはプレイヤーじゃないよ!何も知らない一般人!イージーだけど早めに処理してね!特別ボーナスとしてプレイヤーランクを二つ下げてあげるよ!」岸がそのポップをタップして消すと次のポップが表示された。
「ボーナスキャラの確認」と言う物だった。
岸はそれをタップした。
「今回のボーナスキャラ。年齢34身長181センチ体重・・・・」など標的の情報が表示されマップに現在地までが示された。早い者勝ちと言ったところなのだろう。
さらにポップで標的の詳細が表示された。
そこには「後藤直樹」とあった。




