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5、再チェックを受けたら、ギルド長と面談することになりました




 オレは数時間前に出てきた、ギルドに戻ってきていた。扉を開けるなり、みんな気まずそうに視線をそらす。

 ついさっき追放宣言されたばかりだけど、朝のラッシュでかなりの人数がいたから、もう知れ渡っているんだろう。


 受付担当のマリーさんも微妙な顔つきだ。あの一部始終を見た後だし仕方ない。だけど、どうでもいいって気持ちの方が強いから、あまり気にならなかった。



「マリーさん、再チェックの申請したいんだけど」


「へっ? 再チェックですか……?」


「うん、魔力量と適性検査、どちらも頼めるかな?」


「ええ、それはもちろん……でも、余程のことがないとあまり変わらないですよ?」


 それは問題ない。もう5年も前に、その余程のことがあったから。

 いつものようにニッコリ笑って、マリーさんに今すぐチェックしたいと言ったら、慌てて準備を始めてくれた。


 登録した時にもらったハンターカードを渡して、しばらく待つ。今のハンターカードは白色だ。ランクによって色が変わるから、カードを見ればひと目でランクがわかるようになっている。


 全体の0.1パーセントしかいないSSSランクの黒いカードはレアだ。ちなみに、Fランクの白いカードも逆にレアだ。……あんまり嬉しくはないけど。


 報酬もこのカードに入金できて、そのカードで買い物や支払いもできる大変便利な代物だ。パーティーメンバー同士なら、お金のやり取りもできるようになっている。

 このカードの魔法システムを考えた人は天才的だと思う。


 そんな事をつらつら考えていると「カイトさん」と声をかけられた。





「お待たせしました」


 マリーさんが検査用の部屋に案内してくれる。

 そこには検査担当と記録用の職員がふたり、すでに準備を終えて待っていた。



「カイト・シーモアさんです! お願いしま〜す」


「カイトさんね。では、まずこちらの書類にサインをしてくれる?」


 この書類は、検査は一度きりでやり直しはしないとか、結果に文句を言わないとか、そう(たぐ)いの同意書だ。たまにゴネるやつがいるから、防衛策だろう。

 前にも読んだから、サラッと流してペンを走らせる。


 サインした書類を渡すと、検査の担当者が魔力量を検査するための道具を持ってきた。

 水晶玉に手を置いて魔力を流し込むと、水晶玉につながっている石板に、数字と該当ランクが表示される仕組みだ。


 前と同じように、手を乗せて魔力を流し込む。



 ————————————————


 カイト・シーモア male 24


 魔力量 測定不能(SSS)


 ————————————————



 表示を見た記録の担当者が固まっている。目をこすったり、何回もまばたきしたりして、確認していた。


「あの、機器が故障しているみたいなので、もう一度お願いできますか?」


「あぁ、いいけど」


 新しい道具が運ばれてきて、もう一度手を乗せる。



 ————————————————


 カイト・シーモア male 24


 魔力量 測定不能(SSS)


 ————————————————



 結果は同じだった。検査の担当者もダブルチェックをしに来て、ふたりでゴニョゴニョ話している。



「えっ、まさか……本当に?」

「だって、これ新品持ってきたんですよ!?」

「もともとFランクでしょ? それがSSSランクなんて」

「これは、ギルド長にも報告しないといけませんよね?」

「わかった、報告はマリーに頼むわ。適性検査もやろう」



 秘密にしておきたい会話なんだろうけど、オレは耳もいいから全部聞こえていた。


 そうだよなぁ……FランクからSSSランクなんて、オレも聞いたことないもんな。まぁ、誰も信じてくれなくても、討伐の依頼さえ受けられれば、構わないけどな。



「カイトさん、大変お待たせしました。続いて適性検査もお願いします」


 今度は検査用の魔石板に手を乗せる。魔力の質を読み取るための道具だ。先ほどと同じように、つながれた石板に表示される。



 ————————————————


 カイト・シーモア male 24


 適性検査結果 

 完全融合魔法 雷魔法 魔力感知 視力強化 

 聴力強化 嗅覚強化 筋力強化 敏捷強化


 特殊:対魔獣能力+20% 超自己再生 

 王者の資質 王者の覇気

 王者の恩恵 全能力+100%(全体)


 ————————————————



 また担当者がふたりとも、笑顔のまま固まっていた。


 オレはというと、そうだよなぁ……と納得している。だってこの5年間、嫌というほどリュカオンの能力を使ってきたんだ。今更ながら、よくあの時のオレが融合できたもんだと思ってる。

 でも、よく見ると融合魔法も進化してるっぽいから、オレの努力も無駄じゃなかったんだ。


 ていうか、最後の王者の恩恵って、敵だったら……ズルいな。千年前のリュカオンがどれほど強かったのか、ちょっと気になるところだ。


「あの……これで終わりだよな?」


 さっさとランク修正して、さっさと依頼を受けて、今日からの生活費を稼ぎたいんだけど。


 ハッとした担当者のふたりは、わらわらと動きだす。記録の担当者は、記入に間違いがないか何度も確認していた。

 そこで検査の担当者が声をかけてくる。


「カイトさん、すみませんが、Sランク以上のハンターなので、ギルド長との面談があります。まだお時間大丈夫ですか?」


「うーん、今日にでも依頼をこなして、報酬を受け取りたいんだ。それに間に合うならいいよ」


「わかりました。では、その点も考慮しましょう。ご案内いたします」




     ***




 この街、プロキオンのギルド長を10年前から務めているのは、かつて『炎剣の聖者』と呼ばれたSSSランクのハンター、エルナト・ヘイズリーだ。40代半ばで、いつも穏やかに微笑んでいる。聖者と呼ばれていたくらいの、人格者だ。


「カイト・シーモアさんだね。ミリオンパーティーで活躍されていたと聞いているよ」


「いえ、そんな……」


 ギルド長は穏やかな笑顔で、話しかけてくる。この人がミリオンに、オレとパーティーを組むように頼んでくれたんだな。


 ミリオンのパーティーで活躍していたって、過去形ってことは、追放されたのをギルド長も知ってるのか。それは、せっかく気にしてくれてたのに、申し訳ないなぁ……。


「あぁ、そんなに緊張しないで。僕は規定に従って、面談しているだけなんだから。何点か話を聞けばすぐに終わるよ」


「はぁ……聞きたいことって何ですか?」


「まずは、この8年で相当な訓練をしたようだけど、具体的にはどのような事をしたのかな?」


「そうですね、毎日、融合魔法で試行錯誤して、新しい回復薬を作ったり、火力のコントロールして雷魔法で攻撃したり……でしょうか」



「これは、8年前の結果だけど、適性検査項目がかなり増えてるね。()()()()()()()()()



 一瞬、ギクリとした。リュカオンと融合したことは、ミリオン以外には話していない。

 そもそも信じてもらえなかったし、伝説の魔獣王と融合したと知れたら、()()()駆逐対象になるかも知れない。


 冷たい汗が背中をつたう。ゴクリと唾をのみこみ、平静を装って続けた。


「いえ、特別なことは何も……」



「では、質問を変えよう。()()()()()()()()()()()()知ってるかな?」



 今度こそ、ブフォっと飲みかけていた紅茶を吹き出してしまった。この8年、影に徹して生きてきたオレには、こんな状況に対応できるスキルは育っていない。


 ————ヤバい、今ので絶対バレた!!


 ギルド長のまとう空気が変わった。見なくても匂いでわかる。下手に動けば、殺されそうな殺気を感じる。



「……知ってるね?」



 もう、オレには誤魔化せない。ここは正直に話して、わかってもらうより他はないみたいだ。

     

「知ってるというか……リュカオンと融合しました。スミマセン」

                        

 とりあえず、正直に謝ってみた。だからギルド長、どうか、その肌に突き刺さるような殺気、やめてもらえませんかね?

                       


                  

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