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43/55

43、次の指令はブラックワイバーンの討伐でした




 炎極の谷から戻ったオレたちは、隊長と国王に最終報告をして、いつものように特務隊の寮で過ごしていた。


 討伐に行っていないメンバーで、訓練を行うのがいつもの流れだ。特殊スキルのあるハンターと戦うのは本当にいい経験になる。意表を突く攻撃でも瞬時判断して対処するのだ。実践で想定外のことがあっても、動じなくなった。


 なにより、ここのメンバーが強すぎてSランクの魔獣1匹じゃ物足りなくなっていた。何かに毒されていってるような気がするけど、気にしないことにしよう。


 クレイグとの訓練を終えて、小休憩を挟もうと練習場の端にふたりで腰を下ろした。持ってきた水筒に口をつけ一息つく。


「そういえば、シャドースネークのハンターたちってどうなったんだ? クレイグは聞いてる?」


「あー、あれね。隊長が張り切ってたからなぁ。多分死んだ方がましだと思うくらいの部署で管理されてるよ」


 クレイグは汗を拭きながら、遠い目をしていた。


「え……そんな部署あるのか?」


「そうだな、僕が聞いたのだと、新薬開発の治験対象とか、特殊スキル専門の研究部署とか……主に人体実験される部署が多かったな。どこにも引き取り手がない奴らは、鉱山の採掘とかそっちに飛ばされてたよ」


 そうか……人体実験か過酷な肉体労働か。どちらにしても、アイツらにはピッタリの場所だろう。


「そうなんだ……さすが隊長だ」


 オレの詳細な報告が終わったあと、国王はフェニンと秘密裏に接触して、カーネルハーンの管理を任されることになった。つまり、カーネルハーンもアルファルド王国となったのだ。


 神に等しい不死鳥がカーネルハーンの国王を糾弾して、うちの国王が証拠や証人を用意してサポートし、実にスムーズに引き渡されることになったらしい。


 驚いたのはその後で、なんとカーネルハーンの立て直しには、エルナトさんが責任者として選ばれた。プロキオンのギルド長の後任はエリアさんだ。

 エルナトさんはカーネルハーンのハンター組織をまとめてギルドにして、ハンターの再教育に精を出しているらしい。あの人が教育するなら安心だ。


「カイトー、いるー?」


 そこでクレアが練習場に入ってきた。2日前から魔獣討伐に行ってたけど、戻ってきたみたいだ。


「お帰り、討伐お疲れさま。何かあった?」


「うん、ありがとう。隊長が呼んでたよ。次の任務だってさ」


「わかった、すぐ行く」




    ***




 次の任務は、北の街ヘルクリスから30キロメートルの地点で、ブラックワイバーンが目撃されていて、その魔獣の討伐だ。

 毒を吐く攻撃で場合によっては大きな街ひとつ壊滅させてしまうので、早めの討伐が必要だった。オレたちは雪の降り積もるヘルクリスへむかう。




「よう! 元気そうだな! 俺を覚えているか?」


「ニックさん! もちろん覚えてますよ。お久しぶりです」


 ヘルクリスに到着したオレはレッドドラゴン討伐の際のSランクハンターで副ギルド長のニック・ウィンターと再会した。この街に来ないかとスカウトしてくれた人だ。


 こんな雪が降り積もる街で、ハンター服の上に薄手のショートジャケットを羽織ってるだけで平然としている。雪国の人は寒さにめっぽう強いみたいだ。


「それはよかった! 今の時期は雪が降るから寒いだろ? 暖かい場所で説明をしよう」


「助かります、実はめちゃくちゃ寒かったんです」


「私も……温かいのが欲しいです……」


「ははは、俺がご馳走するよ、行こう」


 オレとリナは寒さに凍えていた。ウラノスだけが平気そうにしている。不死鳥は寒さに強いみたいだ。その羽毛が羨ましくなる。いや、オレも黒狼になればいいのか?

 ともかくニックさんの案内でヘルクリスのギルドで暖をとった。




 ギルドの食堂で、ホットココアをご馳走になった。なんだこれ、心まで解けるような温かさだ。少し甘みは強いけど、寒さで奪われた体力の回復にちょうどいい。


「落ち着いたか? この時期は慣れない奴には辛いからな」


「ありがとうございます。それで、今回はブラックワイバーンの討伐ですよね?」


「そうなんだ、この街のさらに北にあるポルプス山で生息しているのが確認されてる。俺も見てきたから間違いない。空飛んでる奴は手強くてな、援軍要請したんだ」


「わかりました。このあと案内をお願いできますか?」


「ああ、もちろんだ。ギルド長に報告してくるから、ちょっと待っててくれ」




     ***



 オレたちはポルプス山に生息しているブラックワイバーン目指して、ウラノスの背中に乗っていた。

 炎極の谷で見たウラノスは、大人4人くらいなら乗せられるほど大きかった。試しに頼んでみたら、役に立てるのが嬉しいと大喜びで乗せてくれた。

 空の移動というのは便利だ、この冷たい風がなければ。

 もう寒いを通り越して痛い、痛すぎる! 耳なんて取れそうだ!


「不死鳥の背中に乗るなんて、俺めちゃくちゃラッキーだな! これなら、ワイバーンも余裕で倒せるな……来てくれたのがカイトたちで良かったよ!」


 ニックさんはご機嫌で、この極寒の強風は気にならないらしい。この街の人たちがそうなのか、ニックさんが逸脱してるのか、わからないけどオレとリナは限界近い。リナはあまりの寒さで、魔法を使うどころではないみたいだ。


「あ、カイトたちは寒いかな。ちょっと待て」


 そう言って風魔法でシールドを張ってくれた。途端に刺すような冷たい風がやわらいだ。うん、これくらいなら、大丈夫だ。


「ありがとうございます。あ、あれがブラックワイバーンですね」


 前方2時の方向に、黒い大きな翼をはためかせてブラックワイバーンが3匹空を舞っている。


『ふん、ただの黒い鳥だな。ポイズンブレスなど我にはきかん。雷魔法が当たれば一撃だ』


「わかったよ、リュカオン。ニックさん、ワイバーンの討伐は任せてもらってもいいですか?」


「ああ、もちろんだ! 俺も協力するから好きに使ってくれ」


「わかりました。では、全員で倒しましょう!」

      

 オレたちの存在に気がついたブラックワイバーンたちは、咆哮を上げながら襲いかかってきた。

                                    

                     

                      

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