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22/55

22、ドラゴンブレスは強烈でした




 ドラゴンの足止めにむかったのは、エリアさんたちを含めたSランクハンターが12人と、オレとリナだった。


「それじゃぁ、街のギルドごとでチーム組んで動こう」


「うん、その方がやりやすいね」


「俺たちヘルクリスは右手から行くよ」


「ウチらナオスは左手から」


「僕たちプロキオンは人数が一番多いから、前方にする」


「それなら、私たちアルキオーネは後方ね。あのぶっとい尻尾ぶった斬ってやる!」


 この国の4大都市のギルドに所属する、Sランクハンターだ。経験豊富で実力者ばかりだった。

 オレたちはエリアさんと共に、ドラゴンの正面で体制を整える。




「リュカオン、ドラゴンと戦ったことあるか?」


『アースドラゴンならあるな。ただのデカいトカゲだ』


「そ、そうか……でも、何でいきなりレッドドラゴンがあらわれたんだ?」


「あ、それ僕も気になっていたんだ。リュカオンは何かわかる?」


 先日の特訓のおかげで、リュカオンはこのギルドのSランクハンターたちに、すっかり馴染んでいた。


『アレはサラマンダーが魔聖石を飲み込んで、進化したものだな』


「え! 魔聖石!? この辺にそんなの採れるとこあった?」


 魔聖石はなかなか採掘されることのない、貴重な素材だ。武器や防具に使用すると、魔力増幅効果が付与される。間違って魔獣が体内に取り込んでしまうと、今回のように上位種に進化することもある。


「もしかすると、誰かが故意に与えたのかもしれませんね」


 ディーノさんの言葉に、沈黙が流れる。そんなこと、誰がするんだ? 少なくともオレたち人間じゃないことは確かだ。


『まさか……()()()か……?』


「話はここまでよ、来るわ!」


 セシルさんの声に、それぞれ攻撃のモーションに入る。



貫通矢(カウス・アロー)

「輝け、シリウス」

氷結王の断罪(リオ・エクテレス)

氷華乱撃(アイシクル・ディート)




 最速の攻撃でセシルさんの矢が、レッドドラゴンの右足に当たる。かなりの衝撃があったのか、足を止めた。そこへ間髪入れずに、ディーノさんの魔法とリナの氷の矢が追い討ちをかける。


 その間にエリアさんがドラゴンの足元まで移動して、聖剣で切りつける。


「うわっ! 硬っ!!」


 少ししか切り傷がついていない。でも、充分だ。エリアさんの後に続いて、オレはわずかについた傷に剣を差し込み、思いっきり魔力を解放する。



青雷の(ケラヴノス・)破壊撃(クラッシュ)



 剣から青い稲妻を打ち込み、距離を取る。レッドドラゴンは、沈黙したまま動かない。気絶したのかマヒしたのか、今がチャンスだ。

 この隙に他の街のハンターたちも、猛攻撃を仕掛けている。カイトは嗅覚と聴覚で、周囲の状況を探っていた。


 ほとんどのハンターたちは、避難し終わってるみたいだな。これなら、もう少し暴れても大丈夫か?



「エリアさん、このドラゴンって、討伐しても大丈夫ですか?」


「は!? レッドドラゴンを討伐するって、出来んの?」


「多分、最大火力のヤツ使えば」


「マジか……どんだけ……いや、出来るならやっちゃって! こんなの危なくて放置できないし」


「わかりました。じゃぁ、少し離れてて————」


 風に乗って、ハンターたちの匂いが運ばれてくる。その中に、嗅ぎなれた匂いがあった。


 え、この匂い……! ウソだろ!? 避難してなかったのか!? アイツらの実力じゃ、レッドドラゴンには敵わない!!



「エリアさん、逃げ遅れたハンターがいます!」


「どこだ!?」


「ギャオオオオオォォォォ!!!!」


 レッドドラゴンが意識を取り戻し、受けた攻撃の痛みに叫び声をあげる。大きく尾を振りまわして、ハンターたちを蹴散らした。

 その目には怒りの炎が灯り、オレたちにむかって大きく口を開けている。



『ドラゴンブレスだ!!』



 リュカオンの声に、全員が防御に徹した。灼熱の炎が吐き出され、山を焦がしていく。見れば山の4分の1が丸裸になっていた。


 オレはアイツらが隠れている方に視線をむける。

 全員の無事を確認したが、ドラゴンはすでに次の攻撃の体制に入っていた。



 その先に、アイツらが、ミリオンたちがいる。



 物みたいに扱われた8年が頭をよぎって、動くことができない。例え助けたとしても、また色々言われるかもしれない。

 でもそこで、ギルド長の言葉がよみがえる。



『ランクや能力なんて関係ない、何かのために、誰かのために自らの体を張るから、ハンターは尊敬され愛されるんだ! それができないなら、ハンターと名乗るな!!』



 覚悟を決めた、オレはハンターだ。

 ドラゴンの攻撃からアイツらを守るには、人間の足じゃ間に合わない。せっかく打ち解けられたのに、気味悪く思われるかもしれない。でも、これしかない!


「エリアさん、10分だけ時間稼ぎしてもらえますか?」


「10分ね、了解!」


 その言葉にうなずく。青い稲妻がバチバチとカイトから放たれ、黒狼の姿に形を変えた。丸裸の斜面を駆け抜けていく。一瞬だけリナの方を見たら、驚いた顔してた。

 今度こそ気持ち悪いって、思われたかもしれない。


 でも、それでもオレは、絶対に後悔しない。




     ***




 正直、ビックリしたよ。

 さすがにこの僕、エリア・ガルディナでも予想すらしてなかったね。


 カイトがいきなり黒狼に変身して、駆け出していくんだもんな。ハンターを初めてから10年が経つけど、すごいもの見た気がする。


 ちょっと寂しそうな、悲しそうな目をしてたけど、きっと後ろ向きなこと考えてたんだろう。カイトのことだから。

 まったく、僕たちを誰だと思ってるんだろうね? そんなにケツの穴の小さい男じゃないんだけどな。



「さて、10分間は僕だけ見てなよ、レッドドラゴン」



 聖剣シリウスに魔力を流し込む。それに応えて刀身は、アイスブルーの光を放った。

 それと同時に魔力で身体強化もかけていく。


聖なる加護(ホーリー・ブレス)


 そしてカイトが差し込んだ剣に足をかけて、ドラゴンの体を駆け上がり、強烈な一撃を叩き込んだ。


「焼き尽くせ、シリウス」


 魔力の込められた聖剣を振り抜くと、青白く輝く光の斬撃が放たれる。それはドラゴンの喉元にあたり、ドラゴンブレスをせきとめた。

 赤い瞳がギロリとエリアを追う。レッドドラゴンの意識は、エリアにしかむいていない。



「はっ! これは堪らないなぁ!」

     


 ほんの少しでも気を抜けば、すぐに喰われてしまう。そんなギリギリの状況を、エリアは楽しんでいた。

                                

                                

                               

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