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12/55

12、追放されたマジックイーターが仲間になりました

4/5(月)からは毎日1話ずつ、17〜19時の間で更新します




「リュカオン、ベヒーモスって知ってるか?」


『あぁ、脳ミソの小さい筋肉バカだ。だが、炎の息吹がウザいな』


 要するに、知力はないから魔法攻撃はしてこない。力はあるから、素早い動きや一撃のダメージが大きいのか。あとは火を吐くから、火傷に注意だな。


 リュカオンの魔獣に関する情報は、いつもこんな感じだ。他のことは割と丁寧なんだけど、魔獣に関しては雑すぎる。それでも、すごく助かってるので文句はないけど。


 オレが受けた依頼は、ベヒーモスの討伐だった。

 プロキオンの南西の森にある、アリエス遺跡で確認されている。近隣の魔獣のランクは高くてBランクだから、明らかに突然変異かどこかから迷い込んだみたいだ。



 その時、2キロ先から男の怒鳴り声が聞こえてきた。


「いい加減にしてくれよ!!」

「ご、ごめんなさい……ハンセンさん、あの、本当にごめんなさい」


 続いて聞こえてくる声は、怯えて震えている。若い女の子の声だ。


「あんたの特殊能力のせいで、私たちも魔法使えないじゃない!」

「ごめんなさい、ごめんなさい」

「しかも吸い取った魔力を、なんでいつも暴発させるんだよ! 危うく死にかけただろ!」

「ごめ……んなさい。本当に……ごめん、なさい」


「もうお前なんていらねぇ!! このパーティーから出て行け!!」

「っ!! そんな…………ま、待って……」


 数人の足音が、遠ざかっていった。


 ……イヤなものを聞いてしまった。女の子は……シクシク泣いているみたいだな。うわぁ、これ、どうすりゃいい!?

 追放された女の子は放っておけないけど、泣いてるのはどうしていいか、さっぱりわからん。


「リュカオン……どうしよう」


『我に聞くな。我には、人間の気持ちなどわからん』


 そりゃ、そうだよな! はぁ、魔獣王に聞いたオレがバカだった。

 どっちにしても、ここからひとりで外に出るのは難しいだろうな。魔獣がウヨウヨいるしなぁ。仕方ない、出口までは連れていってやるか。




     ***




(また……追放されちゃった……)


 こぼれる涙を拭いながら、私は絶望感に包まれていた。


 もう、これで何十回目だろう? このマジックイーターという特殊能力のせいで、ハンターランクはAなのに役立たずと言われてばかりだ。


 今まではAランクハンターだからと、パーティーに入れてもらえてたけど、この街でも次々と追放されまくった。多分、もうどこにも入れてもらえない。


 もういっそ、ひとりで戦おう。もう嫌われたくない。本当にこんな特殊体質いらない————




「あの……君、出口はわかる?」


 突然かけられた声に驚いて振り返る。そこには、ひとりの青年がいた。艶のある黒髪に黒目のごく普通の見た目なのに、なぜか目を奪われる。


 驚きすぎて涙も止まってしまった。泣いていたのはバレバレの顔だから、もう隠してもムダだよね。


「いえ、コンパスもなくて……あ、よかったら出口までの道のりを、教えてもらえませんか?」


 最後にこぼれ落ちた涙を拭って、笑顔で返した。こんな親切な人がいるなんて、嬉しいな。


「うーん、教えるにはちょっと距離があるんだよなぁ。あれ、君はAランクハンター?」


 首からかけてるシルバーのハンターカードに、目線が向けられている。


「あ……はい。でも————」


「それなら大丈夫か。先にオレの魔獣討伐おわらせるから、そのあと出口まで付き添うよ」


 え! それはダメだ! 魔獣討伐に行ったら……こんな親切な人にまで、嫌われたくない!!


「そ、それはムリです! 魔獣討伐には行けません!」


「あ、ごめん、魔獣討伐って言っても、ただ付いてくるだけでいいから。今からだと、出口まで往復する時間ないんだ。オレひとりで片付けるから心配ないよ?」


 たしかに、すでに太陽は半分ほど沈んでいて、出口まで案内してもらった時点で、暗闇に包まれてしまう。


「そうじゃないんです! あの、私、マジックイーターって特殊体質で、周りの魔力を勝手に取り込んじゃうんです……そして、挙句に魔法を使おうとして暴発させちゃうんです」


「そうなの? 今も?」


「はい、申し訳ないんですけど、自分でコントロール出来なくて……」


「…………大丈夫みたいだけど?」


「へ?」



 青年を見ると、手のひらから青い雷魔法がパチパチと躍り出ている。私のそばにいると、魔力を吸って威力が弱くなるか、消えてしまうのにその気配がない。


「ウソ……! え! 本当に!?」


「うん、多分オレちょっと変わってるから。大丈夫みたいだな」


「本当に……いたんだ」


 今まで、ハンターになってからは特に、この体質で邪険にされ続けてきたのに……この人なら大丈夫なの?

 それなら、この人のパーティーに入れてもらえれば、普通に戦えるかも! いろんな街を旅してきて、やっと出会えたのかも!! ()()()アンチマジックイーターに!!


「あの! お名前聞いてもいいですか!?」


「あ、名乗ってなかったな。オレはカイト・シーモアだ」


「私、リナ・クライトンです! お願いします、カイトさんのパーティーに入れてください!!」


 勢いよく頭を下げて、返事を待つ。どうかお願いします! 私を仲間にしてください!!



「断る」



「そ、そんな事いわないでください!! お願いします!! こんな体質だから、普通に魔獣討伐したことなくて、カイトさんとなら夢が叶うんです!!」


「出口までは連れていってやるけど、パーティーは断る」


 そんな簡単には、諦められない! 21ヶ所目の街でようやく見つけたんだから! ずっとずっと探していたアンチマジックイーターに! ここで逃したら、次はないかもしれない!!


「私にはカイトさんしかしないんです!! お願いします!!」


「っ! オレしかって大袈裟な……」


 カイトが耳を赤くしながら、そっぽをむいている。


 あれ? もしかして、カイトさんちょっと照れてる?

 え、私より年上みたいだけど、可愛いところあるんだぁ。ふふ。いやいや、そうじゃなくて、今のうちにたたみ掛けなきゃ!


「カイトさん……お願いします……!」


 最後のトドメに瞳に涙をめいっぱいためて、カイトをジッと見つめる。カイトが狼狽(うろた)えたのを確認して、もう一度お願いをした。


 そんなリナの熱い決意を知ってか知らずか、カイトはリナの涙に動揺して、今後を大きく左右する決断をしてしまう。


「わ、わかったから! わかったけど、ひとつだけ条件がある」


「本当ですか!? ありがとうございます!! それで、条件って何ですか?」



「………………オレを裏切るな」



 そんなの条件にもならないし。私にはカイトさんしかいないのに、そんな事するわけないよ。


「はいっ! 絶対に裏切りません!!」

   

                         

 こうして、マジックイーターが仲間になった。

                         

                          

                         

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 「裏切るなよ?」 「裏切りません!」 これで仲間になるのは軽すぎるような……
[気になる点] 軽い軽すぎる内容 [一言] 低レベル小説。便所に落書きされてても読まんわ(笑)
[一言] 犬みたいに尻尾あったらブンブン振ってそうなくらい大喜びしてそうやねリナ 第二ヒロインはヒーラーポジ…かなぁバランス的に 何というか癒し系?の枠をもっと増やそ
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