表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/55

10、成功報告したら黒いハンターカードになりました




 ギルドの練習場へ入ると、そこにはギルド長と他にもふたりのハンターが待っていた。

 どちらも一流のSランクハンターで、氷魔法の巨匠ディーノと瞬殺の狩人と呼ばれるセシルだ。



「カイト、討伐ご苦労だった。待たせて悪かったね。まさかこんなに早く戻るとは、思っていなくてね」


 ギルド長はにこやかに微笑んで、何やら戦闘の準備をしている。なんでギルド長は、炎剣を腰に差しているんだろう?


 ちょっと、この空気……イヤな予感がする。


「あの、討伐終わって証明部位も提出したんですけど……」


「うん、それは問題なかったよ。ハンターカードを用意したんだけど、渡す前に最後のテストをしたくてね」


「……テストですか?」


 なんだろう、新しいハンターカードもらうのって、こんなに大変なのか?


「疲れてるようなら、回復魔法かけてから始めたいんだけど、どうする?」


「あ、大丈夫です。食事したら復活しました」


「ハハ、そうか。では僕とディーノ、セシル、ムルジムで一斉に攻撃を仕掛けるから、10分間、(しの)いでほしい」


「あー、それで俺も呼ばれたのか……」


「え、4人からの攻撃を……10分間……?」


「そう、それができたら、新しいハンターカードを渡そう」


 なんっつー最終テストだ!? もうさ、間違いなくギルド長は鬼だよな!? 10分……10分だな!? 1秒も延長なしな!


「わかりました、お願いします」


 内心の動揺はなるべく隠して、平気そうに返事をする。


 付き合いの長いムルジムさんはプルプルしてるから、たぶん俺の心のうちはバレバレなんだろう。

 クソッ、ムルジムさん笑いすぎだよ!!

 ちょっと本気出さないとヤバいだろうから、リュカオンよろしくな!


『ふむ、これは先程の魔獣より楽しそうだな……ククク』


 よし、リュカオンもやる気になったみたいだし、本気でいかせて頂きます!


「僕はハンデとして魔法は使わないから、剣のみでいくよ。では、始めよう」




 まずは、素早さのある弓を使うセシルさんと、短剣使いのムルジムさんから仕掛けてくる。どちらも風魔法を武器に付与して、攻撃してくるタイプだ。

 後ろからはディーノさんが、杖に魔力を込めて魔法の詠唱を始めている。



神速の矢(スネル・アロー)

一陣の刃(ベンダバール)

氷塊の槍(アイシクル・ランス)



 同時に放たれる3人からの攻撃に、まずは氷魔法が当たる寸前で、ヒラリと身をひるがえす。

 ディーノさんの魔法にムルジムさんの放った短剣をぶつけて相殺させた。


 追跡魔法のかかっている矢が、オレを追いかけてくる。次の攻撃をさせないために、ディーノさんとムルジムさんの足元に青い稲妻を落とす。


青の破雷(ブレイク・ショット)


 よし、上手く牽制できたみたいだ。あとは、このしつこい矢をどこにぶつけるか————


 ディーノさんとムルジムさんが攻撃のモーションに入るたびに、青い稲妻で邪魔をしながら、ギルド長にむかっていく。


 ここでディーノさんに、強めの攻撃を一発入れておく。


青い一撃(ブルー・インパクト)


 狙い通り、氷魔法で壁を作って防いでくれた。これで少し時間稼ぎができる。

 そして剣を構えるギルド長の目の前で、大きくジャンプして宙返りをする。ギルド長は、目の前にあらわれたセシルさんの矢を、剣でなぎはらった。


 そこでムルジムさんの足音を拾った。オレの背後にまわり込むつもりらしい。


青の破雷(ブレイク・ショット)


 次の攻撃のモーションに入っているセシルさんと、ムルジムさんの移動先に、青い稲妻を落として止める。


青い一撃(ブルー・インパクト)


 ディーノさんの詠唱が聞こえてきて、瞬時に強めの稲妻を放った。ディーノさんは、慌てて氷の壁でふせぐ。

 そこで、ギルド長が目の前に踏みこんできた。


 ギルド長はSSSランクのハンターだ。それなら、攻撃しても問題ない————瞬時にそう判断して、攻撃を仕掛けた。


青い雷龍(ブルー・ラグロス)


 青い雷の龍が右手から放たれて、ギルド長に襲いかかる。

 ギルド長は一瞬、目を見開いたあと「チッ」と舌打ちして炎剣に炎をまとわせて、雷龍を真っ二つにした。


 あの炎剣の攻撃、エゲツない! あれ受けたらダメージヤバいな!! オレの雷龍がキレイに2枚におろされた!!




「そこまで!!」


 そこでハンナさんの声が、練習場にひびきわたる。


 その声にオレは膝に手をのせて、はぁぁぁ——っと長いため息をついた。



 お、終わった————!!!!

 なんとか、なんとか(しの)ぎきった——!!



「さすがだな! やっぱりカイトはすごいよ」


 ムルジムさんが一番に駆け寄ってくれた。さっきまでとはまるで違う雰囲気に、プロ意識の高さを感じる。


「そうだな、あんなに周りを牽制しつつ、攻撃避けるなんて俺にはちょっとムリだ」


 ギルド長も盛大に褒めてくれる。褒められ慣れてないから、ちょっと居心地が悪い。


「この私が、まさか一発しか矢が打てないなんて、思わなかったわ」


「私もだ。結局は防御をせざるを得なくて、攻撃は最初の氷魔法一発だけだとは……」


 セシルさんとディーノさんも、ものすごく褒めてくれる。いい加減ソワソワしてくるんだけど、みんな大袈裟にいいすぎだろ?


「いや、そんな……皆さんならもっと余裕でしょ?」



「「「「んな訳あるか!!」」」」



 一斉にツッコまれた。


「え、そうなの?」


「そうだよ、君は確かに能力が高くなったけど、それだけではないんだ。それに気づいて欲しくて、今回はこんな事をしたんだよ」


 ギルド長は優しい微笑みを浮かべて、オレに説明してくれる。最後の舌打ちは聞き間違いだろうな、きっと。


「そうなんですか……」


「自分の能力を正しく把握して、もっとハンターとして活躍して欲しいんだ」


「ほんとほんと、こんな逸材が眠ってるのもったいないわ!」


「しかし今までFランクでしたから、ハンターカードだけだと信じないハンターもいそうですね」


「それなら、ベヒーモスの討伐してきたら、目立っていいんじゃないか?」



 え、ちょっと待って。なに余計なこと言ってんですか、ムルジムさん!!



「それでは、戻ってきたらすぐに話が広まるよう、私が手配しましょう。フフフ……」



 いやいや、ディーノさんまで!! オレ、報酬もらったらこの街出るつもりなんだけど! ちょっと勝手に話を進めないでください!


 ……って言えれば苦労しない。マズい、この8年で言いたいことを我慢するクセがついている。

 いや、そもそもこのメンツで、意見できるヤツなんているのか?



「なるほど誰に依頼するか悩んでいたが、カイトなら適任だし、ちょうどいいな。頼めるかな?」


「は……はい……」


 オレは空気を読んだ。その結果、心とはウラハラに頷くしかできなかった。


「よかった! 助かるよ! それでは、これが新しいハンターカードだ。SSSランクおめでとう!」


「ありがとう……ございます」


 く、く、黒だ————!!!!

 もしかしたらと思ってたけど、黒だった!! 逆レアから正しいレアに!!


 よし、気分いいからベヒーモス討伐したら、この街から出て行こう! さて、それじゃぁ、今日はゆっくり休んで明日に備えよう!


    

 そしてカイトは、ベヒーモスの討伐に向かい、そこでひとりのハンターと出会うことになる。

 この出会いが、今後のカイトの運命を大きく変えるのだった。

             

              

                        

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ