3初仕事
私はルピナスを連れ宿に戻っていた。ちなみにルピナスは、私が魔力で編み込んだメイド服を着ている。
なぜメイド服なのかというとルピナスのメイドに対する強いこだわりからだ。私としてもそれなりに露出の多い女神の衣装で歩き回られるよりもそちらのほうが落ち着くので助かるのだが・・・・。
ルピナスのことは今日この村に来たばかりの旅人で、観光スポットの湖で出会い、話している間に意気投合したと説明した。
リアナさんがルピナスの恰好を見ても何も思っていないようでよかった・・・・。
ルピナスは、宿に泊まれるぐらいのお金は持っていたので、同じ宿に泊まった。部屋は別々である。
◇
翌朝、私はルピナスを連れギルドに入ったのだが、少し騒がしいような気がした。
テトラさんがこちらに気付くなり声を掛けてきた。先日来た時とは違う業務をしているのか、別の窓口に立っていた。
「あっ! おはようございます。ディオネさん」
「おはようございます。テトラさん」
「そちらはお連れの方ですか?」
私の隣にいるルピナスを見やり、聞いてきた。
「はい! ルピナスと言います! 冒険者登録に来たのですが!」
「冒険者登録なら。あちらの窓口でお待ちください」
それを聞いたルピナスは案内された窓口に行った。
残された私は、テトラさんに聞かれた。
「あの、ディオネさんはルピナスさんとパーティーを組む予定ですか?」
「はい、そのつもりです。そのほうが効率も良くなると思うので」
「そうですか、それなら安心ですね。それで、ここからが本題なんですがディオネさんがゴブリンキングを討伐したという話しは本当ですか?」
妙に今朝はギルドが騒がしい気がしたけど、先日の買い取り店の店員が漏らしたのか・・・・。
「はい、この村に来るときに襲われたので・・・・」
「その、疑うようで悪いのですが、何か討伐証明部位などはお持ちですか?」
「分かりました。今出しますね」
そういうと、私は"収納魔法"からゴブリンキングの首を取り出した。
"収納魔法"自体は容量に個人差はあれど。ありふれた魔法なので、人前で大量の物の出し入れをしなければまず、私の持つ異常な容量についてはバレないだろう。
「確かにこれは最近この辺りで目撃証言が多発していたゴブリンキングで間違いないですね・・・・。額に傷もついてますし特徴と一致しています」
「これで信用して貰えましたか?」
「はい、それにしてもディオネさんくらいの年の子がゴブリンキングを討伐するなんて聞いたことありませんよ・・・・」
「死にかけだったんですよ」
「この辺りでゴブリンキングより強い魔物はいなかったと思うんですが・・・・。はぐれワイバーンにでも襲われたんですかね・・・・?」
「さあ・・・・? どうなんですかね」
これで何とか誤魔化せたかな・・・・?
これからは迂闊に大きな魔石は売らないほうが良いかもしれない。
◇
テトラさんとのやり取りを終えた私は、冒険者登録を済ませてきたルピナスとパーティーを組み。
ルピナスの実力を把握するのも兼ねて薬草の採取依頼を受け、森の中を歩いていたのだが。
「ルピナスは魔法使いにしたんだっけ?」
「はい! 私、水の魔法得意なので!」
私は、水の魔法なら戦闘でも活躍が見込めるだろうし期待できそうだと思っていると、目の前にスライムが一匹現れた。
「丁度いいわね、ルピナス! あなたの魔法を見せて?」
「はい! ディオネ様見ていてください!」
元気よく返事をしたルピナスがスライムに向かって呟いた。
「"氷槍"」
初級魔法の"氷槍"だ、各属性の初級魔法は、発動速度が最速で消費する魔力も少ないが威力は低い。しかし、熟練の魔法使いであれば初級魔法と言えど十分な火力を出せるため熟練の魔法使いは初級魔法を連発し手数を増やす傾向にあるという。
ルピナスが放った氷の槍はスライムを一瞬で氷像に変えた。
「これなら普通に戦えそうだね」
ルピナスの実力を見たところで、私は気になっていることを聞いた。
「ルピナスはその・・・・。私が吸血姫で魔神ってことは知ってるの?」
「はい! ずっと見ていましたので! でも誰も気にしないと思いますよ? 愛に壁はありませんので!」
思ってた以上にお花畑だった・・・・。でも、そんなことは気にしないと言い切ってくれたのが少し嬉しかった。
「そっそう・・・・」
私はついそっけない返事をしてしまった。
と、そのとき、発動していた天眼が上空からこちらに物凄い速度で近づいてくる物体を捉えた。
「こ、これって!!」
赤き巨体が目の前に降り立った・・・・。
「ワイバーン・・・・」
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