1 スクラ村にて
私は、村に入る前に、魔族であるということと、血を操る能力があることを隠すことにした。
私が、魔族と知られたら討伐対象になるかもしれないしあんまり目立つ行為は避けたほうがいいからだ。
そうして、村に入る前に正体を見破られないよう"隠匿魔法"を掛け冒険者登録をするためギルドに入ったわけなのだが・・・・。
「あの、冒険者登録をしにきたんですが・・・・」
と、二十代前半ぐらいの落ち着いた雰囲気の受付嬢に声をかけた。この世界では十歳から冒険者登録が出来るので、十歳になったら登録だけでも済ませる人が多い。
「はい、それではこちらの用紙に記入してください」
私は、受付嬢から用紙とペンを受け取り傍にある木のテーブルに向かった。
記入欄の一番上は名前であった。
・・・・名前か、まだ決めてなかった。
二分ほど考え『ディオネ』と書いた。
なんだかすっと、きたからだ。
私は、上から用紙の記入欄を埋めていった。
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名前 ディオネ
性別 女性
年齢 十歳
希望職種 魔法剣士
得意武器 剣
資格の有無 無し
犯罪歴 無し
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受付に戻り書き終えた用紙を受付嬢に渡した。
「ディオネさんですね。魔法剣士希望ですか、珍しいですね?」
「はい、私、剣も魔法も両方得意なので、両親は魔物に襲われて亡くなって一人で生きていかないといけなくなって、それからは死ぬ気で剣と魔法の技術を磨いて・・・・」
当然嘘である。
「そ、そうでしたか・・・・まだお若いのに大変ですね、私で良ければ何か困ったことがあったら相談してくださいね?それでは、ギルドについての説明をさせていただきます」
受付嬢のテトラさん曰く、冒険者にはEからSランクの6つのランクがあり、最低ランクのEランクでは薬草の採取やスライムの討伐が主な仕事になること。
Dランクからゴブリンやアルミラージなどの魔物の討伐依頼が中心になってくること。
Cランクの冒険者が最も多くほとんどの冒険者が生涯をCランクで終えるという。同じCランクでもピンからキリまであるらしいが。
Bランク冒険者は一流で、辺境の地では主力扱いである。Aランクになると王族の護衛などを指名されることもあるとか、最高ランクのSランクともなれば英雄クラスの扱いらしい。最もSランクなど片手で数えられる数しかいないらしいが。
ランクアップは、依頼の達成数や地域への貢献度を判断材料にしてギルドの会議で審査されるらしい。最も一部例外を除きランクアップの審査対象に選ばれるにはそれなりの活動期間を要するらしいが。
冒険者同士の揉め事に対しては、殴り合いの喧嘩程度であれば自己責任。刃物や魔法を使った暴力行為や恐喝などの犯罪は自警団やギルドによって厳しく処罰される。
テトラさんから話しを聞いてる間に、ギルドカードが出来上がったようだ。鉄を薄く引き伸ばしたカードで表面には最低ランクであるEランクを示す偽造防止用の魔法が掛けられたエンブレムが刻まれている。
このギルドカードは、ランクが上がるごとに再発行され装飾が豪華になっていくらしい。受け取ったカードの裏面にはディオネの名前とこの支部の印が刻まれている。
ギルドカードはあくまでも証明書兼通行手形なので、自分の血を垂らしてもステータスが浮かび上がるとかは無い。
「お渡ししたギルドカードに誤ったところはありませんでしたか?」
「はい、名前も間違ってないですし大丈夫だと思います」
「そうですか、それで手続きはすべて終了になります」
◇
私は、受付嬢のテトラさんから一通り説明を受け、ギルドを後にした。教えてもらった買取店に立ち寄りゴブリンの魔石をいくつか売った。
ふと、ゴブリンキングの魔石も買い取って貰おうと思い店員に見せたところ鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。
ゴブリンの魔石一個につき銀貨一枚の値が付き、ゴブリンキングの魔石は、金貨十枚で買い取って貰えた。
手持ちの魔石はまだ八十個近くあり懐に余裕が出来たので、私は、そのお金で宿を取り椅子に腰かけて明日の計画を立てていた。
明日は依頼を受けずに、村の散策や装備の調達に時間を充てることにし、この世界に生まれ、初めての夜は更けていった。
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