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―番外編 しょたれいぱにっく 後編―

―エアリアルウィング―




「アハハハハハ! レイちゃんってば何その姿! 懐かしいわぁ! あははははははは!」

「うわっ。ホントにセイラ姉ちゃんなのかよ」


 私の予想は的中していた。レイの体と心、そして記憶までもが、サーティの魔法によって巻き戻されてしまったのだ。故に、子供の時から一緒に居たマスターを、レイはちゃんと認識することが出来たのだ。


 ただし、彼にとっては、マスターが急成長を遂げてしまった。もしくは自分が未来へとタイムスリップしてしまったような感覚なのだろう。驚きと戸惑いを感じずにはいられないようだ。


「きゃー! その呼び方も懐かしいぃ♡ ねぇねぇ、もう一回! もう一回言って?」

「え、セイラ姉ちゃん……」

「いゃぁぁぁん♡ きゃわいぃぃぃ♡」

「むぎゅっ!? 放せ! 放せってぐるじぃ! ぎぶ、ぎぶ!」


 私の一報を受け、ジークさんが応援へと駆けつけてくれて、後処理を引き継いでくれた。そして私は、タクシーを使って、小さくなってしまった彼と共に、ギルドへと戻ってきたのだが、小さくなったレイを見た瞬間、マスターはこの有様だ……。

 レイをまるでぬいぐるみの様に抱き締め、ブンブンと左右に振り回した。そして、我慢しきれなくなったレイは、マスターの腕をがぶりと噛み、その拘束から逃れ、テーブルを倒し、その影に隠れながら、ダガーを引き抜き、それ以上近づけば刺すと言わんばかりに、グルグルと唸る犬のように、マスターを睨みつける。


「いったぁ! ちょっとレイちゃん! 今本気で噛んだわね!? 乙女の柔肌にこんなくっきり歯型を残すなんて色々最低よ!?」

「うっさい! 姉ちゃんが悪いんだろ!? 俺ギブつったもん!」

「姉ちゃん……。キュン♡ うん、お姉ちゃんが悪かったわ、ごめんね♡」

「うわっ。なんか成長して色々こじらせてるっぽい。優しすぎてキモい」


 レイは、サーっと青くなった顔でそんな事を口にした。もうマスターは、小さくなってしまったレイにメロメロになってしまっているようだ。

まぁ確かに言われて見れば、彼の顔は非常に可愛らしい。普段のレイの面影もしっかりと残っている。ただ、今現状問題は、その格好だ。レイの着ていた服はもちろん一切サイズが合わず、とりあえずシルフィードマントを羽織り、紐で縛ってローブのように包んでいるだけなのだ。もうすぐ、いっちゃんが子供服を買って戻ってきてくれる事になっている。


「マスター、只今もどりましたー。えーっと、これが子供服の上下と、これが子供用トランクス。これがスニーカー、あと靴下。でもこれ、一体何に……。って、あれ?」


噂をすれば、ちょうどいっちゃんが帰ってきてくれたようで、カウンターに買い物袋を並べ終わり、レイの姿を凝視して目を丸くしていた。どうやら、レイが子供の姿にされてしまった事を聞かされていないらしい。


「え……? なんですか? 誰ですか、その小憎らしい顔つきのお子さんは。レイさんそっくりじゃないですか。あの意地悪王のレイさんそっくりじゃないですか。なんですか? 彼の隠し子か何かですか? エリシアさん、やっぱりレイさんはダメですダメ男です。まるでダメな男、略してなんちゃらです」

「誰が意地悪王だ。誰がマダオだ。失礼なシスターだなオイ。これだから神なんざ信じる輩は……」

「うわぁ! 姿形だけじゃなくて、性格までそっくりです! 私今、レイさんとの初対面を思い出しましたよ! アギトル教のシスターですって挨拶したときの、あのまるでゴキブリを見るような、不快感と敵意丸出しで、『あっそ。精々早死にするなよ? 死ぬなら俺の知らないところで頼む』って言われた時を鮮明に思い出しましたよ!!!」

「うふふ、あの時に比べたら、随分レイちゃんもいっちゃんに優しくなったわね。ちなみに、その子は隠し子でもなければ親戚でもなく、レイちゃん本人よ」

「あ、なーんだ♪ そうなんですね☆ あはは…………へ?」


途端に、いっちゃんは目が点になり、滝のように冷汗をダラダラとすごい勢いで流し始める。そしてガタガタと震えながら、いっちゃんは恐る恐る尋ねた。


「ぼ、ぼうや。お名前は?」

「……レイ=ブレイズ、8才。だと思ってたんだけど、実際は変な魔法使いのせいでこんな姿に変えられたレイ=ブレイズ24歳らしいよ? 嫌いなものは、アギトル教信者。特に俺に失礼な奴。殺してやろうかなって思うくらい嫌い」


 レイは鞘から少しだけ、いっちゃんに向かってダガーの刃をちらつかせた。


「いーやーーーーー! お助けぇぇぇぇ! 私早退しまぁぁぁぁぁぁぁす!」


 いっちゃんは脱兎のごとく駆け出し、ギルドの外へと逃亡してしまった。


「「こら! レイ(ちゃん)!!!)」」


 私とマスターは、若干ハモりながらレイをしかりつける。


「知らない。俺、シスターも神父も嫌いだし。セイラ姉ちゃんなら知ってるだろ?」


 そう、私も知っている。レイは、アギトル教のせいで、育ての親を失い、あまつさえ、その教えを強要され、ついには、アギトル教の教皇であり、肉親である彼の祖父を、その手で殺めさせるほど、彼を追い詰めてしまった。今でも彼は、宗教関係を毛嫌いし、聖職者にも苦手意識を持っているようだ。


「もう、せっかくいっちゃんが服を買ってきてくれたのに」


 私は袋から子供服などを取り出し、鋏でタグを切り取ってあげた。


「はい、レイ。あそこの更衣室で、この服に着替えておいで。わかる?」

「……うん」


 レイは少し俯いたまま、私から服を受け取り、そのまま素直に更衣室へ入って行った。


「あら、エリシアちゃんの言う事は素直に聞いちゃうのね。なんか意外―。普段のレイちゃんのほうがツンデレしてる気がするわ」

「ツンデレって……。もぅ、すぐマスターはそうやってからかう」


 そしてすぐにレイは着替えを済まし、ベルトにダガーを差したまま、てくてくと私の元へと戻ってきた。


「レイ、今日はもうお仕事も終ったし、ダガーは置いてきたら? その姿だと、そのサイズのダガーも重いでしょ?」

「平気だよ。それに、俺の仕事は『エリシアを守る』事だから、仕事は終って無いとおもう」

「え? 今なんて?」

「手の平に、書いてあった。エリシアを守る、って。これ見て、最初はエリシアって誰の事か判らなかったけど、エリシアお姉ちゃんの名前を聞いて、お姉ちゃんがエリシアだってわかったから、俺の仕事は、お姉ちゃんを守ることだって理解した。だから、俺はエリシアお姉ちゃんの傍にいなきゃいけない。剣も、手放しちゃいけないんだ。もう、俺は、僕は、大切な人を亡くしたくないんだ。守らなきゃいけないんだ」


 その時、レイの心に、恐怖と、悲しみ、後悔、そんな感情がわき上がるのを、私は感じ取ってしまった。きっと、スキラさんのことを思い出してしまったんだろう。


「レイ……」


 私はふと、思わず彼を抱き上げ、ギュッと抱きしめてしまっていた。これでは、マスターの事を言えた義理ではない。


「ありがとね♡ 頼りにしてるわ、小さな勇者様」

「ちょ、恥ずかしいから放してよ」


 そして、私はうっかりしてしまっていた。その様子をマスターは、ばっちりと目撃し、ニマーっとへんな笑みを浮かべていたのだ。


「ムフフフフフフ♡ やぁだぁ、エリシアちゃんったら、小さくとも相手はレイちゃんよぉ? ご馳走様♡ レイちゃんったら顔真っ赤よ? しかもエリシアお姉ちゃんを守るだってー♪ レイちゃんは小さくとも、やっぱりエリシアちゃん大好きなのね♡ 私とは嫌がり方が全然違うんだもん♡」


 レイは素早く私の腕の中から抜け出すと、顔を真っ赤にし、ほっぺたを膨らまし、涙目になりながら、マスターをポカポカと叩き始める。その子供らしいしぐさをみて、思わず、可愛い……。と思ってしまった。


 しかし、どうやら可愛いのは仕草だけであって、その攻撃力は全然子供らしくないようだ。マスターは危機を察知したのか、魔力を手に纏いながらガードしていた。


「いたっ! ゴメンゴメンって。もぉー。今とっさに魔力でガードしたけど、ぜんぜん子供の力じゃないわ。この分なら、普通の大人2人くらいは余裕で対処できるわよ。もう、なんて可愛げの無い子かしら。ああでも、やっぱり可愛いなぁ可愛いなぁ♡ ねぇ、レイちゃんしばらくその姿で居てくれない?」

「ヤダ。セイラ姉ちゃんの目がなんかすごく怖いから、なんかヤダ」

「んまっ! エリシアちゃんにはあんなかわいい態度取っちゃったくせに、お姉ちゃんにはその態度?」

「あーもーうるさいなぁ! 姉ちゃんがからかうからじゃんか! 姉ちゃん大人になってもそんななのかよ! ロキもがっかりしてるんだろうな!」

「あらざんねーん♪ もうすぐ結婚するのよ? 私たち♡」

「う、嘘だろマジかよ。うわー。なんか引くわぁ。うわー」

「なんで!? 頭に来た! 食らいなさい! 十数年ぶりのこめかみグリグリ攻撃よ!」

「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ折檻癖まで健在かよぉぉぉぉぉ!!!」

 

 マスターは本当に楽しそうに、子供の姿になってしまったレイとじゃれあっている。ああしてみると、確かに二人は、姉と弟のような絆で繋がっているんだなと理解できる。


 けれど、普段の二人を見たとき、私は二人が姉と弟のように育ったと聞かされても、ピンと来なかった。


 どうやらレイは、マスターを100%信頼しつつも、彼女との間に、壁のような隔たりを築いているようだ。そしてマスターも、それは仕方の無いことだと、それ以上踏み込もうとしていなかったのだと、何となく察してしまった。


「ねぇ、俺はちゃんと元の姿に戻れるの? セイラ姉ちゃんは昔より魔法の知識あるんだろ? ばーちゃん程じゃないだろうけど」

「ええ、一時的なものでしょうね。変身魔法の類だと思うわ。これまでの被害者のケースを見ても、個人差は出てくるけど、大体16時間から24時間以内に変身は解けてるみたいね。だぁかぁらぁ♡ もう少し小さいレイちゃんを堪能しちゃうぅ♡ きゃー♡ かわいいー♡ もうぎゅーってしちゃう♡ 頬刷りしちゃう♡ やぁん♡ サーティ=ロード、なんて奴なのかしら! こんな魔法反則よぅ♡」

「ぎにゃああああ! 放して! 放せぇぇ!」


 マスターの激しすぎる抱擁を、レイは無理矢理こじ開け、転がるように、マスターの腕から逃げ出した。すると、その時だった。ギルドの扉がバンっと大きな音を立て、男女の二人組みが駆け込んできた。


「セイラ! レイが負傷したと言うのは本当か!? レイは無事か!?」

「ちょっとセイラ! 何でレイレイが死んだ事をすぐに私に伝えないのよ!? 遺体は何処!? 早く処理しないと腐っちゃうじゃない! ああ、ついに私の元へと帰ってきてくれるのね、レイレイ♡ 大丈夫、死だって私たちを別つ事なんて出来はしない。これからもずーっとずーっと一緒よ、私の愛しいレイレイ♡」


 飛び込んできたのは、この国の王様、ロキウス様と、レイの事を一方的に愛し続けるネクロマンサーのアサシン、カトレアさんだった。


「待てカトレア! レイは負傷したと聞いているが、死亡なんてしていない!」

「ちっ。なーんだ。つまんないのー。ロキウス様、私レイレイの顔見たら帰るから、帰りはレイレイに送ってもらってね」


 そんな事を口にしていた二人だけれど、レイの姿を視認すると、まるで石像のようにピタッと固まってしまった。


「ちょ……。ぶはははははははははは! なんだレイその姿は! 懐かしいなオイ!」

「嘘、やっぱりレイレイなの!? な……なんて愛おしい姿なの。ああきっと、私たちの子供はそんな姿で生まれてくるのね! 欲しい、今すぐあなたとの赤ちゃんが欲しいわ、レイレイ!」


 相変わらずカトレアさんの言動は痛々しいほどに破廉恥で、女性として神経を疑ってしまう。


「えっとー。ロキ、なんだよ……な? なぁ、その隣の危険人物は一体誰だよ。ゼクス並にヤバイオーラ出てる上に、目が完全にやばいんだけど。俺の本能がアラート鳴らしまくってるんだけど!?」


 レイはロキウス様をすぐに認識したのだけれど、それ以上に、即座にカトレアさんを危険人物と認識したところが流石だと思った。


「そんな、未来の花嫁の私を忘れるだなんて! これが噂に聞くサーティ=ロードの仕業ね!? 許せない。ぶっ殺してやる。でもその前に、レイレイを元に戻してあげなきゃ♡ ねぇレイレイ、私はカトレア。あなたの未来のお嫁さんよ♡ 前世もあなたのお嫁さんだったの♡」

「イヤ絶対嘘だ。仮に本当だとしたら、俺は来世のワンチャンに全てを賭ける」

「ああ可愛そうに、私の事を思い出せないなんて、悪い女に酷い目に遭わされたのね。でももう大丈夫♡ 私が元に戻してあげる。心配しないで? お医者さんごっこみたいなものよ♡ お姉さんがお医者さんで、レイレイが患者さん。あ、それともぉ、レイレイが最初にお医者さんする? 私を診察する? いいよ♡ ほら、まずは触診からしてみて? ねぇ先生。わたしお胸が苦しいの。触って確かめて? ほらぁ、早くぅ♡ コ・コ♡ 優しくその手で触れてみて? 乱暴にしちゃダメよ?♡ ほら、はやくぅ♡」

「ひっひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」


 信じられない事に、カトレアさんは服の襟元を下にずらし、その隙間から胸元をレイに見せつけ、ゆっくりとレイに近づいていく。あまりにも常軌を遺脱した行為に、私は何も考えられず、ただポカーンとそれを眺めてしまっていた。


「わー!? 止せカトレア! 相手は子供だぞ!? レイだけど外見子供だからな!?」

「うわぁぁぁぁん! セイラ姉ちゃん助けてぇ! 何か良くわからないけど痴女が来たぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 後ろからロキウス様がカトレアさんを羽交い絞めにし、レイは慌ててマスターの元へと駆け寄った。


 そして私は驚愕した。マスターが、見たことのないような表情を浮かべていたのだ。マスターの顔は、これ以上に無いくらい、怒りに満ちていた。


「……カトレアちゃん。別に普段のレイちゃんなら、どう迫ろうが、レイちゃんもいい大人だし、そこらへんは自己責任で目を瞑るわ。だけど、今のレイちゃんは身も心も子供に戻ってしまった事は、一目瞭然。よっぽどの大馬鹿者で無い限りすぐに理解できるはずよ。そんなレイちゃんに、児童ポルノに触れるような迫り方をして! 私の弟になんて事をするのよ!!! 今回ばかりは私はあなたを敵と認識し、全力で排除するわ!!! あなたも全力で逃げなさい!!! 消炭になりたくなかったらね!!! 極大聖霊魔法、グランアブソリュートエクソシズム!!!」


 マスターの杖がカッと閃光を放ち、ギルド全体に魔力の嵐が吹き荒れた。


「ちょっま!? 冗談じゃないわよ! そんな魔法喰らったら手駒はおろか私まで! だから嫌だったのよこのギルドに来るのは!!! 覚えてなさいよセイラ!!! これは負けじゃないわ! 戦略的撤退よ! こんなことで私に勝ったと思わないことね!!! 精々夜道には気をつけなさい!!!」


 すばらしいほど、負けた敵役のセリフのテンプレートを捲くし立て、カトレアさんは全速力で逃げ出してしまった。それもそうだろう。聖魔法エクソシズム系は、ネクロマンサーにとっては鬼門中の鬼門。手持ちのゾンビや死霊を浄化させられてしまうだけでなく、強い闇の魔力を持つ人間にも多大なダメージを与えてしまうらしい。レイですら、体が痺れるような痛みを覚えるというのに、カトレアさんがそれを受けてしまうと、火傷のような痛みや、症状を発症してしまう。それが極大レベルの魔法ともなると、本当に消炭のようになってしまうかもしれない。


 そんな大魔法が、通常巨大な魔方陣を描き、大量の魔力を注ぎ込む事で発動するものが、すでにギルド全体に描き込まれた魔方陣に、彼女は即座に大量の魔力を注ぎ込んだ。いや、むしろ押し込んだと言うべきなのだろう。即座に発動出来る状態に無理矢理持って行ったのだ。やはり、マスターはとんでもない魔術師であり、賢者なのだと再認識してしまう。


「流石はセイラだ。あのカトレアが本気で尻尾を巻いて逃げ出すなんてな……」

「地の利を完全に押さえた上での話よ。あの子が本気で私と戦おうとしたら、こんな場所に絶対自分から来たりしないわ。でも、流石にちょっと、疲れたわ……」


 マスターは足の力が抜け、フラフラと倒れそうになり、すぐさまロキウス様が抱きとめた。


「セイラ! しっかりしろ、大丈夫か!?」

「姉ちゃん!」

「マスター! 大丈夫ですか?」


 マスターは肩で息をしながらも、にっこりと笑った。


「ええ、ちょっと眩暈がしただけよ。久しぶりの大魔法を無理矢理発動させようとしたからね。少し休めば良くなるわ」

「セイラ姉ちゃん、ごめん……」

「いいのよ、かわいい弟の為だもの。ねーロキウス、私頑張ったから抱っこして?」


 唐突に甘えた子猫のような声を上げるマスターに、私達三人は、一瞬きょとんとしてしまった。


「全く、人目もあるというのに。しょうがないなぁ、仰せのままに」


 ロキウス様はマスターに優しく微笑むと、マスターを優しくお姫様抱っこで抱き上げ、そのままマスターをソファーに寝かせ、彼女の頭を膝に乗せ、愛おしそうに彼女の髪を優しく撫で始めた。

 私はその慈愛と幸福に満ち溢れ、美しくも見えるその光景を、赤面しながら見入ってしまったが、レイは『マジかよ、信じられない』みたいな顔をしていた。


「なんだよ、レイ。人の顔をじろじろと見て」

「いやだって、俺の知ってるロキは散々アプローチ掛け続けてもシレっとフラれ続け、ついには言い寄るたびにグーパンをみぞおちに食らう関係だったのに、いつからそんな関係になっちまったんだと思って……」

「あはは、もうそれ10年以上前の話じゃないか」

「ふふふ、そんな事もあったわね。懐かしいなぁ。ごめんね、ロキウス。痛かったでしょ?」

「ああ、すごく痛かったさ。君は手加減を知らないからね。それでも、あの時があったからこそ、今の俺たちが居る。辛いこともあったけれど、今こうして、俺の傍には君が居る。そしてレイ、お前も居る。俺は幸せ者だ。恋人に恵まれ、親友に恵まれた。だが、その親友は随分懐かしい姿に変わってしまっているようだけどな」


 ロキウス様は、レイの姿をみて少し苦笑いを浮かべた。その眼差しを受けたレイは、まるで不貞腐れるように、彼を睨み返した。


「あの不良王子に一体何が起こったらこんなチャラ男になるんだ。何かがっかりした」

「あら、不良は未だに変わって無いわよ? 私に怒られるから影を潜めてるだけよ」

「あはは、違いない。……変わったというなら、お前が一番変わっちまったんだぜ? レイ。いや、変えちまったのは、俺ら二人なんだろうな。すまないな、レイ。って、今のお前に謝っても、お前はわからないかな」


 ロキウス様は、今度は寂しそうな笑顔を浮かべた。そしてマスターも、申し訳なさそうな顔をしている。


「……なーんか良くわかんないけど、大人になった俺はそんなに変な奴なの?」

 

 なぜか、レイは二人に尋ねるのではなく、私に向かって尋ねてきた。


「……ふふ、そうねぇ。今のレイの可愛げみたいのは、ほとんど無いかなぁ。その分、余計に意地悪になっちゃってるかも。あとはそうね、うん、身長はずっとずっと伸びるよ。あとねぇ、んー。優しいのも、変わらないかなぁ」

「は、はぁ? 意地悪だって言ってたじゃないか」

「ふふ、素直じゃないところが一番変わって無いね。大丈夫、私の中でレイは、レイのままだよ。相方の私が言うんだから、間違いないわよ」

「えー? だってロキは変わったって言ってるぞ?」

「それはもちろん、ロキウス様は私以上にあなたを知っているからよ。でもね、レイ。私は今のあなたを見て、『わぁ!? レイってこんな子供だったの!? 信じられない!』 だなんてこれっぽっちも思わなかったよ? 今のあなたも、いつものあなたも、私にとっては、レイ=ブレイズであり、私の勇者さまよ。それでいいと思わない? 何かご不満かしら? 私の小さな勇者さま」

「うぅ、不満じゃ……ない」

「うふふ、よろしいよろしい♡」


 私は彼の頭を撫でてあげる。少し硬い髪の毛が、実にさわり心地が良い。普段はこんなことは絶対に出来ないし、日頃の仕返しも含め、これ見よがしに撫で回してしまう。こんな彼なら、しばらく元に戻らなくてもいいと思ってしまう。


「ぷー。なんだか今更だけど、弟をエリシアちゃんに取られちゃったって再認識したわ」

「あはは、どうも甘えると思ったら、そう言うことか。セイラ、君は妬いていたのか」

「だーってあの二人、最近、隙さえあればあまーい空間作ってるのよ? 邪魔くらいしたくなるぢゃない。私は中々ロキウスに会えない時期だってあるのにぃ」 

「あー、悪かった。善処するよ」


 再びマスターの前で恥ずかしい所を晒してしまった。私は恥ずかしさのあまり、体中の血液が顔に集まり、火が付いた様に真っ赤になってしまっているのだろう。顔がとても熱い。


「ちょっとマスター!? 私たちそんなことしてるつもりありませんけど!?」

「えー無自覚ぅ? 困っちゃうなぁそう言うの……」

「ロキ? どういうこと? 俺も今のお前みたいに、エリシア姉ちゃんに膝枕してあげるのか?」

「はっはっは、それはちょっと見てみたい光景だなぁ。まぁ、元の姿に戻れば判るよレイ」


 その後しばらく、マスターは不貞腐れつつ、私をからかい続けた。


 そして夕食時になり、休日のパパ様に代わり、レイとマスターが私たちに食事を振舞ってくれて、レイの料理上手は子供の頃からで、料理の基本はスキラさんが教えてくれたのだと、レイは語ってくれた。


 そしてどうやら、フローラ様に引き取られていた際も、時折イノシシや鹿、野うさぎを狩っては、その肉をハーブ漬けや干し肉などに加工し、市場で売り裁いてはお金を稼いでいたと、マスターが話してくれた。そのお金で、自分の欲しい物を買ったり、時には、親を失った異種族の子供達と共に、ご飯やお菓子を買って、お腹いっぱいになるまで一緒に食べたりしていたそうだ。

子供とは思えないほどのサバイバルスキルに、私は驚きと感動を覚え、そして呆れ果ててしまうのであった。




「さて、もうこんな時間になってしまった。セイラ、今日は俺の部屋に泊まるか?」

「え、ええ? ちょ、ちょっとぉ。エリシアちゃん達も居るのにぃ!」

「なんだ、来ないのか。じゃあ迎えを呼ばないとだな」

「も、もうしょうがないわね! 私が送って行ってあげる。送るだけだからね!? 部屋に上がってもコーヒー飲んだら帰るんだから!」

「あーはいはい。モーニングコーヒーだろ?」

「もぉー! 馬鹿馬鹿! ロキウスのスケベ!」


 私はあっけにとられ、何もツッコミを入れることも出来ず、ただ作り笑いを浮かべることしか出来なかった。


「あはは。いってらっしゃーい……」

「ん? ねぇエリシア姉ちゃん。今の会話なんかよくわかんなかった」

「お願いレイ。私に聞かないで。少なくとも今の会話を明日まで覚えていたら、その意味はちゃんとあなたなら理解できるわ。それが大人になるという事なのだから」

「ふぅん?」


 何だか今日はいつもの3倍は疲れてしまった。先ほどジークさんも帰ってきて、調書や現場検証、事務手続きも全て滞りなく終ったと報告してくれた。レイにかけられた魔法も、明日には解けるとのことだった。


「ねぇエリシア姉ちゃん」

「うん? なぁにレイ」

「俺はいつも何処で寝泊りしてるの?」

「ああ、そうだったね。じゃああなたの家に行こうか」


 私はレイの手を引き、ギルドの外へと出て、彼の家の前に立った。


「うぇ、ギルドの真隣かよ。どんだけ出勤めんどくさいんだよ俺」

「ぷっ。私もそれ最初思っちゃった。えーっと、確かレイの服のポケットの中に鍵があったわね。あ、多分これね。えーっと、確か開け方は、一回ロックを解除したら、すぐ開けずに、ドアノブを二回捻る。ピッて鳴ってから扉を開くっと」

「うわ。何そのめんどくさいセキュリティ。どんだけ侵入者にびびってんだよ」

「あはは、以前屈強な武道家の仲間が、あなたの家に突入してきて、あなたに返り討ちにされたことがあってね、それ以降面倒だから、下手にあけたら落とし穴が作動するようになってるんですって」

「仲間が突入してきて迎撃するって……。大人の俺の人間関係どうなってんの?」

「ぷっ! クスクス。そうね、絶望的ね、その人間関係……。クスクス」


 子供のレイが呆れているのだから、是非ともレイには人間関係を改善して欲しい物だわ。

今朝のようなあの酷い態度は、絶対に許されないのだから。


「……武器ばっかりだ」


 部屋のあちこちに飾られたり、立てかけてある数々の武器を見て、レイはため息をつきながらそんな事を呟いた。


「ふふ、少し部屋のリフォームをするべきだって思っちゃった?」

「ううん。見覚えは無いけど、俺の部屋なんだなって理解した」

「あ……そう」


 私はその言葉に、落胆せざるをえなかった。私としては、この家はあまりにも生活感が見られないから、もう少し内装を整えてみるべきだと思うのだから。

私とレイは二階へと上がり、レイの部屋を開けた。レイの部屋は、布団が裏返ったままのベッド、そして読みかけの武器の雑誌が乱雑に置いてあるだけで、他には何もなかった。


「ここがあなたの部屋ね。私の部屋は、あの窓から見える向かいの部屋なの。お隣さんだね♪」

「そっか。ふぅん? なんだ、こんな広い家に、俺は一人で住んでるんだ」

「そうね。あれ、もしかしてレイ、寂しいの?」

「いや、そうじゃないけど。一人で暮らすにはあまりにも広いから、本当に俺は、ギルドが近いって言う理由だけでここに住んでるんだなと思って」

「そうね。大人のレイも近いからって言ってたよ。んー、でも確かに、この家はレイだけが暮らすには広すぎるね。あ、そうだ! 私も此処に住んじゃおうかなぁ?♪」

「ふぇ!?」


 あれ、何言ってるの私。レイをからかうつもりで、なんかすごい事言ってない!?


「冗談よ冗談。ほら、そろそろレイも寝ないと、今日はいっぱい頑張って疲れちゃったでしょ?」

「……い、いいよ。エリシア姉ちゃんが、ここに住みたかったら、住んでいいよ。大人の俺も多分、反対……しない」


 自分でも恥ずかしい事を言っていると理解しているのか、俯き、顔を真っ赤にしながら、私と一切目線を交さずに、もじもじとそんな事をいう彼に、私は不覚にもキュンとしてしまう。おかしいな、私にそんな趣味は無いはずなのに。きっと、相手がレイだと認識できてしまっているから、こんな気持ちになってしまうんだろう。


「もぅ、かわいいなぁ。じゃあ、レイが大人の姿に戻って、私に『一緒に暮らそう』って言ってくれたら、一緒に暮らしてあげようかなぁ?」

「言うはず無いじゃん! 言えないよそんな事!」

「うふふ、いつか言ってくれるのを、期待してるわ♡ さ、私は帰るから、レイはシャワーを浴びて、歯を磨いてから寝るのよ?」

「わ、わかってるよ! それくらい言われなくてもちゃんとするよ!」

「そう? なら安心ね。それじゃあ私は帰るね。おやすみレイ」

「……あ、うん。おやすみなさい……」


 玄関のドアを開けようとして、ふと思慮する。いかにレイとは言えど、今の姿は、未だに子供のままだ。そんな状態の彼を、一人にして良いものなのだろうか。もし、彼が子供になってしまったことを、彼を狙う連中が、知り得たなら、間違いなく彼を襲うだろう。でもだからといって、私が居ることで何か対処できるかと言えば、出来ることは非常に少ない。でも、このまま帰っていいのかな。


「……ねぇレイ。ここのお家、お客さん用の部屋があったわよね。今日私泊まってもいい?」

「え、ええ!? エリシア姉ちゃん、ウチに泊まるの!?」

「うん、だって今のレイを一人にしておけないでしょう? 子供を一人残すなんて、大人はしちゃいけないもの」

「う、うん……」

「決まりね。じゃあ一旦私は部屋に戻るね。すぐに戻ってくるから、いい子にしててね」


 すぐに私は一旦部屋に戻り、シャワーを浴びてから、パジャマに着替え、明日の服をバックに詰めて、彼の家へと戻った。すると、レイもシャワーを浴び終わったのだろう。


 ぶかぶかのTシャツを着て、もはや長ズボンのようになってしまっている半ズボンを履き、頭をワシワシとタオルで拭きながら、テレビをボーっと眺めていた。あの格好は、寝ているときに元の姿に戻ってしまう事を想定しての事なのだろうが、その間抜けな格好に、思わずプッと笑ってしまう。


「ただいま、レイ。ちゃんとドライヤーで乾かしたら? 風邪引いちゃうよ」

「俺は風邪なんて引かないよ。スキラの魔法で、俺にはウィルスとか毒とか効かない体になったんだってさ」

「むっ。そういう可愛くない事を言う子はこうだー!」


 私はレイのタオルを取り上げ、わしわしと頭を拭いてあげる。


「わー! もー、くすぐったい! くすぐったいってばー!」

「照れない照れない♪ あ、こらじっとしてなさいってば」

「も、もういいってば! 俺の髪はほっとけばすぐ乾くもん! 俺もう寝る! おやすみ!」


 レイは真っ赤な顔をして、ダッシュで部屋に向かい、バタンと大きな音を立ててドアを閉めてしまった。


「あちゃー、からかいすぎちゃったかな。 仕方ない、私も寝ようっと」


 私も階段を上がり、レイの隣の部屋を使わせてもらうことにした。レイ曰く、ここはロキウス様がこっそり泊まりに来たりした時用の部屋なんだそう。私は電気を消し、お布団に潜り、目を瞑った。



 それからどれくらいの時間がたっただろうか。私は、突然目が覚めた。


 私を目覚めさせた原因は、隣の部屋から伝わってくる、レイの感情だ。痛いほどの恐怖、怒り、悲しみ、そんな感情が、まるで洪水の奔流のように、レイからあふれ出している。原因はすぐにわかった。彼は、悪夢を見ているのだ。


 それも、大人になっても見続けていたと言う、スキラさんが処刑されてしまう悪夢にうなされているのだろう。


 けれど、突然の奔流は、止むのも突然だった。そして、またゆっくりと、悲しみの感情だけが少しずつ流れてくる。きっと、レイは目を覚ましてしまったのだろう。私はベッドから抜け出し、レイの部屋の前へときた。そして、3回。軽くドアをノックする。


「レイ? エリシアよ。……起きているんでしょう? 大丈夫?」


 返事は無い。私はゆっくりと、扉をあけた。


「レイ……」


 暗闇の中、ベッドの中で、その小さい身体をさらに丸めて小さくなり、震えているレイを見つけた。


「ひっく……ぐすっ……なんでも、ないから。大丈夫、大丈夫だから……」


 嗚咽を漏らしながら、震える彼の姿に、私の胸はぎゅっと締め付けられた。あんな苦痛を、彼は、夜な夜な、たった一人で耐え、そのまま大人になってしまったのかと思うと、涙が溢れそうだった。


 私は、ゆっくりとお布団の中に入り、レイを抱きしめ、背中を優しく擦りながら、かつて私の母が、悪夢にうなされた、幼き日の私にしてくれた事と同じように、レイに優しくささやいた。


「大丈夫よ、レイ。もう、怖くないよ。私が傍にいる。あなたがゆっくり眠れるように、ずっと傍にいるわ。大丈夫、大丈夫だから……」


 私はレイの頭を優しく抱きしめ、小さく詠唱する。


「ライトヒーリング……」


 それは、私が今までで一番、彼を癒してあげたい、守ってあげたいと思った瞬間だった。


「泣いちゃだめなんだ。……約束したんだ」

「……うん。わかってるから。頑張ったんだよね? 大丈夫。大丈夫よレイ。ほら、ゆっくり深呼吸して? そのまま目を瞑って、楽しかった事を思い出すの。幸せな思い出で心を満たせば、きっと優しい夢が見れるわ」

「……ひっく、うん」




 それからしばらくして、レイは穏やかな寝息を立て、私の腕の中で眠っていた。


「……眠れたかな? ふぅ、世話が焼けちゃうなぁもぅ。おやすみなさい、レイ」


 レイの頭を優しく撫でて、布団から出ようとしたけれど、レイの小さな手が、私のパジャマの裾をしっかりと握ったまま眠ってしまっていて、私はその手を振りほどくことが出来なかった。


「……あーあ。もう、しょうがないなぁ。お願いだから、朝起きたら元に戻ってて、全部覚えてたなんてオチはやめてよね」


 レイは覚えていないだろうけれど、これでレイと眠るのは2度目ということになる。一度目はそう、彼が単独任務から帰還した日だ。心臓が破裂するんじゃないかと思うほど、ドキドキした私をよそに、彼は気絶するように意識を失ってしまい、そのまま眠ってしまったのだ。私を抱きしめたまま。そしてわたしも、そのまま眠ってしまい、危うく誰かに見つかるところだった。


「レイ、おやすみなさい」


 今回はもう、なるようになれと、私も自棄を起してしまったというか、それ以上に、思った以上に魔力を消費してしまったようで、私ももうこれ以上睡魔に抗う事が出来そうに無いのだ。そして、私の意識は、腕の中にレイの温もりを感じながら、眠りへと落ちて行った……。











 小鳥のさえずり。そしてカーテンの隙間から、差し込む朝日を感じた。その他にも、花のような優しい香り、そしてふっくらとした、丁度いい温もりの何かが、俺の顔を包み込んでいる。


「ん……?」

「スー……スー……」


 あれ、そもそも俺は一体なんで寝てるんだ? 確か、サーティを確保しようとして、体を縮められて……。それからどうなった!? 記憶が全く無い! エリシアは無事なのか!?


「うーん……」

「のわっ!?」


 突然、顔を包んでいた何かに、頭を拘束され、ぼやけていた視界が完全に奪われた。何が起こっているのかさっぱりわからない。てか、今俺の顔に張り付いているのは一体なんだ?


「え、え? え???」


 俺は少しずつ状況を確認していく。寝ぼけ眼で霞んではいたが、確かにここは俺の部屋で、このベッドの感触は間違いなく俺のベッドだ。そして、俺の顔に張り付いてるのは……。


「え、女? ちょ、胸!!!!??? 嘘だろ、なんで!? え、だ……誰?」


 お、落ち着け俺! ここは冷静になれ。きっとカトレアだ。カトレアが俺の部屋に不法侵入し、ベッドにもぐりこみ、既成事実を作ろうとしたに違いない。くっそ、きっと俺が弱りきってる事をいいことに、滅茶苦茶なことをしやがったんだ。あれ、でもなんか、カトレアからする薬品っぽい匂いがしない。……いやまて、そんなはずないだろ。この匂いは、だって、エリシアの気に入ってるシャンプーの匂いじゃないか。イヤイヤまさかそんなわけ……。


「…………ゴクッ」


 意を決して、俺は少し相手の腕を持ち上げ、拘束を緩め、恐る恐るその正体を視認する。


「な、なんでこうなった……?」


 俺を抱き締めていたのは紛れも無く、エリシアだった。


「うーん?」

「はぅ!?」


 まるで人の体を抱き枕にするように、足を絡め、首に抱きつき、体を密着させるエリシアに、俺は身動きが取れなくなる。くっそ、一体なんでこんな状況になった。一体どうしたらいい!?


……………………………………。


 だめだ。なーんも考えられん。っていうか、考えたくも無い。もうこうなったら、コイツが起きるまで寝る、もしくは寝たフリを続けるんだ。もう、どうにでもなっちまえばいい。ただ今は、もう少し、このまどろみを、もう少しだけ堪能してしまおう。


「うーん……。きゃっ! も、戻ってる! あ!」


 なんてことだ。堪能する間もなく、エリシアは目を覚ましたようだ。そして、慌てて口を押さえ、ソロリソロリとベッドから抜け出し、部屋のドアをゆっくり閉めて、部屋から出て行った。


 そして、緊張のあまり上手く呼吸が出来ていなかった俺は、大きくため息を付き、思わず口にしてしまったセリフは……。


「…………くっそ、もうちょい寝とけよ」


自分でも、そんなセリフが出てしまった事に、驚きを隠せなかった。

如何だったでしょうかw この波乱、まだ終りませんw

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