―暴君と恐れられた男―
オーディアに来て二日目。俺は木々が鬱蒼と茂る樹海を進んでいた。この樹海を抜けたところに、ラジールが身を潜めているらしい。さくっと情報を仕入れて、さっさと帰ろう。そのほかの情報は十分手に入れた。恐らくこの先、アルデバランとレオニードは戦争になる。ウチが勝てば、この国はおそらくレオニードの管轄下に置かれ、新たな指導者が見つかり次第独立という形になるだろう。
まぁエリシアでないとは思う。
エルフの隠れ集落から2時間ほど移動しただろうか。薄暗い樹海の先に光が見えた。
どうやらラジールが身を潜めている山脈の麓にたどり着いたようだ。
俺は大木の陰に身を潜め、双眼鏡であたりを確認しつつ、水分を補給する。
「ふーむ、人影らしい人影も、罠もなし……か」
「ねぇ、私にもお水ちょうだい、レイレイ」
「ほらよ。……ん!?」
すぐ真隣から聞こえた声に、俺はごくごく自然に水筒を差し出してしまったが、その直後に違和感に襲われる。そして、今隣にいる人物が誰なのか理解して、すぐに血の気がサーッと引いていくのだった。
「わーい、間接キスだぁ」
「カトレア!? いつの間に!」
「んー、1時間前くらいにレイレイを見つけて、ずーっと追いかけてたよ? んふふー、私って尾行は得意分野なんだよねー」
流石というかなんと言うか。コイツのストーキングスキルは神がかり的なものがある。まさに真性のストーカー娘だ。追っ手には十分注意して移動してたはずなのに、どういうわけだか、コイツの気配に全く気付くことができなかった。
「でー? ラジールいた?」
「まだ見つけてないよ。おそらくあの廃坑の周りに立ってる小屋のどれかに隠れてるとは思うけどな」
俺はため息を付きながら、返された水筒のふたを閉める。
「えへへ、間接キッスぅ~♪」
「一生やってろ、ストーカーゾンビマスター」
俺は双眼鏡と水筒を仕舞い、廃坑へと歩みを進める。それにあわせてカトレアもてくてくと俺の後ろを歩き始めた。
「ところでカトレア。他の連中はどうした?」
「レイレイ、感謝してよね? みんな私の嘘の情報で足止め食らってるよ」
「は? どんな情報流したんだよ」
「『冥府の泉は日が沈んだと同時に沸き、午前10時を過ぎるまで現界し続ける』って情報を流したの☆ 実際は」
「朝日が昇ると同時に、冥府の泉は霧散する。お前怒られるぞ。ってか、何でお前がみんなの足止めをしなきゃいけないんだ?お前にメリットなんてあるか?」
「あるよ? レイレイからの感謝のちゅー♡」
「ハイハイ、感謝してるよ。ありがとな。ちゅーは勘弁してください」
唇を尖らせ迫る顔を右手で制し、俺は深いため息を付く。
「でもよかったー。レイレイが冥府の泉の存在に気が付いて。レイレイみたいな魔法の知識が殆どない人間じゃ、まず間違いなく泉に飲み込まれるからねー。まぁ私ほどの知識があれば、ほら! 冥府の泉の水を、使用者の魔力を全回復する『カトレア特製魔法薬』に精製することだってできちゃうんだから。ちなみに劇薬に匹敵するので、用法用量を守って正しくお使いください♡」
「おえっ。何その紫の蛍光色の、どう見ても毒薬ですっていう液体」
カトレアのちらつかせた小瓶は、どう見ても人体に悪影響を及ぼすような色と光を放っていた。そして彼女はあっさりと。
「用法用量を間違えると死にます。確実に」
「ガチの毒薬かよ!!!」
そんな恐ろしい事をシレっと言った。
「そうね。レイレイなら全ての魔力を使い切ったときに30cc。私なら100ccかなぁ?」
「何でお前は100ccなんだよ」
「魔力の器の違いよ。ぶっちゃけレイレイの魔力量は私の3分の1程度なのよ?フフフ」
「ああそうかよ」
「ハイ、気をつけて使ってね☆」
カトレアは笑顔で俺の手に劇薬を握らせた。
「え。いいの?」
「感謝のディープキッスぅ♡いっぱい舌絡めるやつ♡」
「やっぱいい返す」
そんな問答を繰り返しているうちに、俺たちは小屋の一つの中に、人の気配がするのを感じた。扉は内側から何かで押さえられ、窓も塞がれている。中の様子は伺えそうにない。まずはカメラを通して中の様子を探ってみるか。
「んもぅ、まどろっこしい」
そんな事を呟きながら、カトレアはいきなりデスサイズを取り出し、ドアを真っ二つにぶった切った。
「……おい」
「ほら、開いたよレイレイ☆」
もういい、さっさとラジールから情報を引き出してこの国から出よう。さっさと帰って熱いシャワーを浴びよう。その後のことなんか知った事か。
「フン、随分と五月蝿いノックもあったものだ。入室を許可した覚えもないが、まあいい。何用だ?」
真っ暗な部屋の中で、そいつは胡坐をかきながら、こちらを暗闇から睨みつけていた。
「ラジール皇、なのか?」
「いかにも。我はラジール=バレンタインである。……フ。フフフフフ、コレがこの国の王の姿とはな。我ながらなんとも情けない。乞食そのものではないか。くっくっく、ふはははははははは!!!」
ラジール皇は痩せこけ、ひげも伸びきり、完全に浮浪者のような姿となっていた。そこにはかつて、暴君として知られた姿はどこにもない。
「くっさ。レイレイ、後は任せるね。私こういうばっちぃのだめなんだー」
「おい、ゾンビ娘。どの口で物を言うか」
お前が扱ってるのは浮浪者どころか腐乱死体ギリギリの死体ばかりじゃないか! なんて抗議をしてやろうと思ったが、面倒だったので、そのまま見送る事にした。
「俺は、レイ=ブレイズ。エリシアの友人だ」
「くっくくくく……ふはははははは! あの小娘の友人だと? はーっはっはっはっは。で? その友人殿が私に何の用だ? え? 娘さんと結婚させてくださいとでも言いに来たか? それともあの小娘を孕ませたか? こいつは傑作よ! ふはははははははは!」
「いくつか質問をしたい。見返りにこの国から出してやる」
ラジールの下らない冗談を聞き流し、呆れながらも単刀直入に、こちらの用件を伝えた。
「フッ。もういい。全てが億劫だ。今更何処へ逃げようとも思わん。私はここで運命に身をゆだねる。質問くらい答えてやる、そうしたらさっさと立ち去れ。だがその前に、一つ聞きたい。我が妻、アリシアはどうしている? まだ生きているのか?」
「アリシア様は、……亡くなられた」
俺がそう告げると、ラジールは「そうか」と呟き、目を閉じた。その表情は、少し涙ぐんでいるようにも見えたが、気のせいかもしれない。
「……ラジール皇、なぜアルデバランの要求に従わなかったんだ? エリシアを差し出していれば、少なくとも今のこの国の惨状は避けられたんじゃないか?」
「フッ。何も状況など変わらんのだ。いや、違うな。エリシアが奴の手に渡った時点で、この大陸、いや、この世界は奴のものになるだろうよ」
「意味がわからない。いくら皇女とは言っても、女一人だぞ。一体何が変わる?」
「『悪魔の翼、イービル・ウィング』を知っているか?」
「何故、今おとぎ話の話が出てくる? ……力無き人間に涙した神が与えた力が、世界を滅ぼす争いを起こした。……戦争を戒める子供の為の、この大陸の人間なら皆知ってる物語だろう? 全く戒めになっていないがな」
「おとぎ話?くっくっく、そうだろうなぁ、普通はそう思う。世界を揺るがすほどの力など存在するはずがない。あって欲しくないと思うのは当然だ。残念ながら事実だ」
「お前一体、何を言っているんだ?」
「我々の歴史が始まる遥か昔、ある文明が栄えていた。その文明はあるエネルギーを発見し、瞬く間に発展していった。そしてついにその文明は、そのエネルギーを兵器へと変えた。その兵器の名は『エンゼル・ウィング』。空を翔け、地上に火の雨を降らせ、世界を焼き尽くした。光り輝く純白の翼は、やがて漆黒の色に染まり、人々から『悪魔の翼、イービル・ウィング』と呼ばれた。いくつもの国を滅ぼし、大陸を越えて、全世界を炎に包んだイービル・ウィングが最後に滅ぼしたのは、皮肉にもイービル・ウィングを手にしていた人間達だった。イービル・ウィングの所有権を巡り、人間たちの醜い争いが起きたのだ。人間達は、かつて苦楽を共にしたはずの仲間同士が殺し合い、そして自滅した。やがてイービル・ウィングはこの世界のある場所へと封印された。雲より高い天空の峰、光の届かない闇の谷の底。そう、全ての生物を寄せ付けない魔境、『霊峰エンゼルクレイドル』。そこにイービル・ウィングは封印されている」
そんなおとぎ話、この大陸に生きる人間なら誰もが知ってるおとぎ話だ。母親が眠る子供に聞かせる子守唄、『エンゼルウィング』。優しいメロディーで紡ぐその歌は、子供達の心に刻まれ、その歌詞は大人になり理解する。
戦争を戒め、二度と繰り返してはならないのだと伝える為のおとぎ話であり、それを聞かされて育っても、やはり人間は争いを止められないのだと。
「ふぅん? 良いだろう。100歩譲って、エンゼルクレイドルにその兵器が封印されてたとしよう。で、だからどうした。それがなんで、エリシアに繋がるんだ?」
ラジールは表情一つ変えずに、ただ淡々と告げた。
「あの娘がイービル・ウィングの封印を解く鍵なのだ」
「……」
俺はあまりにもふざけた作り話に、我慢の限界が来た。最初からこうすればよかったんだ。
「ラジール皇、失礼だとは思うが、ちょっとこの首輪をつけてもらうぞ」
俺はアイテムポーチから『真実の首輪』を取り出し、すばやくラジール皇に取り付けた。
「何をする小僧、これはあまりにも無礼ではないか?」
「失礼無礼は承知の上だ。とりあえず答えてくれ。今の話、冗談だろ? 別に敵意はないんだから素直に話してくれ」
この首輪をつけてる以上、俺の質問には真実しか語れない。このまま情報を全部荒いざらい引き出してやる。
「これはアリシアが私に打ち明けた真実だ。そもそもアリシアは、『精霊の巫女』と呼ばれる『イービル・ウィング』の封印を施した大魔導士の一族の末裔だった。しかしアリシアは殆どその力を引き継がなかったらしい。だが、エリシアは違った。エリシアには、封印を解くための力がある」
おいマジか。何か急に眩暈がしてきた。俺の脳みその理解度を遥かに超えてるぞ……。
いやいや、冷静になれよレイ。俺らしくもない……。
「はは、そうかそうか、アリシア様も人が悪い。旦那にそんなばかげた嘘を信じ込ませるだなんて。だいたい封印を解く力だと? あいつは確かに筋は良いが、魔術師としては半人前以下だぞ? どうかしてる」
あきれ果てる俺をよそに、ラジールは不敵な笑みをこぼしながら続けた。
「フッ。その昔、精霊の巫女は、森羅万象の精霊達の力を借り、イービル・ウィングを封印したそうだ。精霊の巫女は、精霊は勿論、動物や植物達と言葉を交わし、心を通わせたという。アリシアは見たそうだぞ。小鳥や動物達と、エリシアが会話するところを」
「ハハハ、あいつはど天然だから、動物やら花やらに話しかけててもおかしくねーよ」
ああ、確かに言われてみればあいつ、猫やらティアマトに楽しそうに話しかけてるのを見たことがあった。アレを見たときは、心底天然で不思議ちゃんな、脳内お花畑のお姫様なんだなと呆れたっけか。
「フッ。ならば本人に聞いてみるといい。アリシアも気になって確かめたらしいが、自慢げに『ええ! すごいでしょお母様! 私、この子達とおしゃべりできるの! 頭の中に、この子達の声が聞こえてくるのよ!』と顔を輝かせてたというぞ。クックック、アリシア本人は、『もしそのことが、封印を知る者に知られたら……』と凍りついた事も知らずにな! 本当に愚かな娘だとは思わないか?」
「……マジか」
首輪の力は正常に作動しているはずだ。ならばコレは真実という事になる。時に真実ってのは作り話よりタチが悪いとは言うが、これ、悪い冗談にもほどがあるだろう。
「で、その過去のガラクタが欲しくて、エリシアをアルデバランは付狙ってんのか? はぁ、どいつもこいつもおかしいだろ……」
「ふっふっふ、過去のガラクタぁ? その背中に二本もぶら下げてる大層な剣を、貴様はガラクタだと思ったことがあるか?」
その瞬間、俺の背筋にぞわっとしたものが走った。俺の背中にあるのは、風の精霊剣、シルフィードと、炎の精霊剣、イフリート。
精霊剣や神刀、妖刀、神器の類の製法は未だかつて解明されていない。どんな魔術や科学技術を持ってしても、神の時代に作られたとされる武具を作る事はできなかった。いつだって、こういった精霊剣や神刀は、迷宮奥深くに封印されていた。まるで、決して解き放ってはいけない禁忌のように。そしてその理由が今、わかった気がしたんだ。
「そうだ。精霊剣や古代魔法、オーパーツとされるような現代科学や現代魔法で再現できない、失われし秘術。その頂点に君臨するのが、『イービル・ウィング』の存在だ。もし、『イービル・ウィング』とともに、その秘術を解き明かしたのなら、その国全ての兵士や魔術師が、精霊剣を持ち、古代魔法を操るようになり、再び世界は火の海になる。理解できたか?」
「本当に、エリシアなのか? 本当にエリシアが『イービル・ウィング』の封印を解く鍵なのか!? その方法は!?」
「古代の文献には『精霊とともに歌え』としかなかったそうだ。だが、歌うだけで封印はあっさり解かれてしまうそうだ。……だが、あの娘を殺せば、何人たりとも封印を解く事はできんだろうな」
「……何?」
「精霊の巫女の力は血によって受け継がれる。しかも、確実に遺伝するわけでもなく、エリシアのように隔世遺伝により開花する事もある。だが、今エリシアを殺せば、封印は永遠に守られるだろう。なにせ、アリシアには姉妹が居らず、アリシアの子も、エリシアのみ。お前が孕ませてしまっていたら、その子供ごと殺せばいい」
「テメェ! 仮にもお前、エリシアは娘だろ!? 娘をなんでそんな風に言える!」
俺は思わず、ラジールの胸倉を両手で掴み、絞め殺しそうになるくらい締め上げた。
「フン、貴様も知ってるんじゃないのか? あの娘には、私の血など通ってないことくらいな」
そんな事、関係あるのか?エリシアは、この男を父だと思ったことないのだろうか。
この男は、本当にエリシアを娘だと思っていないのだろうか。
俺は、俺は『あの人』を本当の……!
いや、今はそんな事どうでもいい。
「もう、十分だ。約束どうり、お前をこの国から出してやる」
「フン、キサマの顔、見覚えがある。レオニードのガキの駄犬だな? 放せ、もういいと言ったはずだ。……もう、うんざりだ。うんざりだ!!! 鬼と呼ばれようとも、守ろうとした国は荒れ、国民共はアルデバランの甘言にそそのかされ、私に弓を引いた! 兄者の子なんぞさっさと明け渡してしまえばと、思わなかったとおもうか!? ああ、思ったぞ!!! 疎ましく思わないはずがなかろう!!!……私は、もう疲れた。このまま野垂れ死ぬつもりであったが、そうも行かなくなったようだ。レオニードの犬よ! その目に焼き付けよ! これが暴君と恐れられた、愚かな男の最期よ!!!」
奴は懐に忍ばせていた短剣を引き抜き、高らかと掲げ、そのまま自身の胸へと突き刺した。
「ラジール皇!」
「ごほっ! くっくっく、あっけないものよ、人の生など。何人も殺してきたキサマならわかるだろう? ごほっごほっ!」
ラジールはそのまま横たわり、うつろな目で天井を見つめ呟いた。
「ああ、アリシアよ。私は、お前と同じところには……行けそうにもないな。せめて、もう一度だけでも……。アリシア……」
俺は、ゆっくりと、ラジール皇の首から真実の首輪を取り外す。この男の、最期の真実、本音を耳にしてしまった。俺は、この男を暴君としてしか知らなかったのだろう。いや、もしかしたら、ラジールという男を本当に理解していたのは、アリシア王妃だけだったのかもしれない。暴君と恐れられ、恐怖政治によりこの国を支配してきた男は、たった今、目の前で、愛する亡き妻の名前を呼び、息を引き取った。
「ラジール皇、せめてあんたの眠りが、安らかであるように。……大丈夫、あんたの奥さんは、きっと待っててくれてる。お前が心から愛した女で、エリシアの母親なんだろ。絶対待ってるよ……」
俺はラジールの虚ろに開かれた瞼を閉ざしてやり、胸に突き刺さった短剣を引き抜いた。
「……終った? 死んだの? そいつ」
「カトレア、お前何処まで聞いた?」
「なーんも聞いてない。ぶっちゃけ、この任務自体、興味ないんだよね。レイレイが参加するから、デートのつもりで参加したのに、レイレイってば、ぜーんぜんかまってくれないしぃ?」
多分、カトレアは全部聞いてた筈だ。それでも黙っててくれるって事なんだろう。……条件はつくだろうが。
「そいつは悪かった。帰って新年あけたら、なんか飯でも食いに行くか」
「勿論、奢ってくれるのよねー? レイレイ♡」
「何でも奢ってやるし、遊びにも付き合ってやるから、一つ頼まれてくれないか?」
「レイレイが私に頼みごとぉ? もぅ、しょうがないにゃあ♪ なぁに? あんまりエッチなのはダメだよ? あーでも、レイレイに迫られたら拒めなぁい♡ やぁん♡ だめだよぉレイレイぃ♡♡♡」
「この状況でどうしてそっちに行き着くわけ? 死者に敬意を……って、お前に求めるのは間違いだろうけど聞いてくれよ。ラジール皇の亡骸を、アリシア皇后の傍に葬ってやりたい。何とかならないか?」
せめて、亡骸だけでもアリシア様と同じところに。そう思ったのだが。
「ヤ」
カトレアはそっぽを向き、頬を膨らませて断った。
「そこをなんとかさぁ」
「じゃあちゅーして? すっごくエッチぃキス」
「……やっぱいいや、火葬して灰だけ隣に葬ろう」
「ちょっとレイレイ! 私はレイレイに沢山沢山尽くしてるのに、どうしてちゅー(すごくエッチな)もしてくれないわけぇ!?」
「黒魔術に長けた人間と過度の直接的接触は避けよ。アサシンの鉄則だろ」
黒魔術なら唾液を触媒にして滅茶苦茶な主従関係を契約させることが出来る。もちろん、カトレアほどになればそれこそ、貞操どころか魂ごと持っていかれてもおかしくない。そんな奴とキスなんてできるか!
「ぶー。レイレイってホント最低。ま、精々美味しい高級料理ご馳走してよね?」
カトレアは闇の中から空の棺を召還した。俺はその中に、ラジール皇を納棺し、フタを閉める。
「さんきゅな、カトレア」
「約束破ったら、ぶっ殺して納棺して脳みそは瓶詰めにしてやるんだからね」
「こわっ」
再び棺は闇の中に消え、跡形もなくなった。
「さて、ユキカゼ班長にはどう言い訳しようかな」
「んー、発見した時にはもう自害した後だったでいいんじゃない?」
まぁ、それが一番妥当だな。あの人にウソの報告をするのも気が引けるが、まぁ仕方がない。俺は連絡水晶を取り出し、ユキカゼ班長に繋いだ。
「班長、レイです。ラジールを発見しましたが、既に自害した後でした。聞こえますか? 班長?」
『…………』
水晶からは何も聞こえてこない。おかしい、班長ならすぐに反応してくれるはずなのに。
『……へぇ、レイって言うんスか。ども、久々ッス、兄さん♪』




