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Aerial Wing -ある暗殺者の物語-  作者: ちゃーりー
皇女の居る日常
27/119

―戦場指揮官エリシアⅠ―


「……こちらレイ。ターゲット……でいいのか? 一応補足した。今画像をつなぐから確認してくれ」


 俺は現在、コルトタウンの公園の、広場にある一本の木に身を隠しながら、ターゲットを補足していた。



『えっと、エリシアです。今画像照合するね……うん、ターゲットで間違いないと思う。どう? 確保できる?』


 通信機から流れてくる音声は、いつもならマスターなのだが、今回はエリシアがオペレーターだ。

今回エリシアには、戦場指揮官としての実務経験を積んでもらうという事で、まずは簡単なクエストを、ギルドの司令室から俺へと、状況に応じて指示を出すという訓練だ。


 しかし、よりによってこんなクエストかよ。ガキの使いじゃあるまいし……。しかも速攻で終わらせずに、焦らしてクリアしろってどういう指令だよ。ほんっとに人使いが荒い……。


「勿論捕まえるだけなら1秒かからない。それじゃあお前の訓練にならないとのことなんで、適当に泳がせて確保する。俺はターゲットの動きに合わせて動く。その都度報告入れるから、お前はその先、俺にどうすればいいか、指示を出せば良い。じゃあ始めるぞ?」

『了解です。おねがいね、レイ』

「あいよ」


 俺は木から広場へと降り立ち、ゆっくりと歩いてターゲットに近づく。すると、ターゲットが俺に気がつき一目散に逃げ出した。


 追跡開始だ。


 俺は一応小型発信機を投げ、ターゲットの背中に貼り付ける。


「エリシア。発信機を取り付けた。そちらで確認できるか?」

『えーっと、あ、これですか? ハイ。大丈夫レイ、バッチリだよ』

「了解、追跡を続行する」


 通信機から、拙さがバリバリ伝わってくるが、バックにマスターがちゃんと着いているんだろう。

とりあえずは問題なさそうだ。


 ターゲットは建物と建物の間を潜り抜け、路地裏を疾走する。俺は民家の屋根を飛び越えつつ、ターゲットを見失わないように追い続けた。


「エリシア。ターゲットはコルト南の住宅街を南西に進んでる。路地が入り組んでて確保が面倒だ。なんか手は無いか?」

『えー? 面倒って。んー……。あ、2ブロック先が空き地になってるよ? そこに追い込んだらどうかな?』

「そこ、本当に大丈夫か? 地図上じゃ確かに空き地だけど、あそこは確か……」

『んー? あ、近所の子供たちの遊び場になってて、追い込みは難しいのね…。あ! レイ、それ以上真っ直ぐ進ませないで! 大通りに出ちゃったら大変なことになりかねないわ! 先回りして!』

「了解」


 俺はわざとターゲットの前に降り立つ。するとターゲットは驚きのあまりに身をすくませ、すぐにUターンして、再び疾走し始める。


『こちらエリシアです。先ほどレイがつけた発信機から、生態データをアップデートできました。どうやらターゲットは、特定の民家に潜伏することが多いみたい。現在地のすぐ近くなので、多分追い詰められたターゲットはそこに逃げ込むはず。先回りして待ち伏せして下さい。レイの端末に、今、位置情報を送信しました。確認してください』


 俺は自分の端末に送られてきたデータを確認する。


「あー、ここか。ま、納得だわ」



 俺はすぐにその民家へと先回りして、住人であるお年寄りの女性に事情を説明する。


 そして、彼女の庭先にある罠をしかけた。


「ご迷惑をお掛けします……」


 丁度ガーデニングの休憩をしていたお婆さんに、俺は謝罪した。


「いいえぇ、たまにはこういうハプニングも、良い刺激になるわ」


 お婆さんは、快く快諾してくれた上に、俺にお茶まで出してくれようとした。まぁ、そこは丁重にお断りしたのだが、本当に人の良いお婆さんだ。まぁだからこそ、ターゲットがここを潜伏場所にしたのだろう。


「ん、来たな……」


 端末に送られてくる発信機からの位置情報が、俺の位置情報と重なる。俺は物陰に姿を隠し、様子を伺った。


 そしてターゲットは、ゆっくりと庭へと侵入し、俺の仕掛けたトラップに気がついた。


 もちろん、この罠は発見してもらってこそ、効果を発揮する罠なので、問題はない。


 そう、それはターゲットに限らず……。


『猫』ならば飛びつかずには居られないであろう代物、マタタビの袋詰めである。


『にゃーーーーーーー!』


 今回の標的が、ものすごい勢いで巾着袋に飛びつく。


 ゴロゴロと喉を鳴らし、掴んで放さないといった感じだ。


 俺はすかさず首根っこを掴み、そのでぷっとした体を持ち上げた。


「ターゲット無事確保。3丁目のおばさんの猫、捕獲完了。おばさんに捕まえましたよって連絡よろしく」


『お疲れ様、レイ。協力してくれたおばあさんにもしっかりとお礼を言って置いてね」

「わかってるって。あと、謝罪もな……」


 俺の仕掛けたトラップは、効果を発揮し過ぎたようだ。ターゲットの『ゴローちゃん』以外の野良猫たちも、続々と集まってきた。


「あらあら、まぁまぁ。みんな、まだご飯の時間じゃないでしょう?」

「いやー、すみません」


 しかし、お婆さんは嫌な顔一つせず、猫たちの頭を順番に撫でてやっている。


「いいえー。私はこの子達が大好きだから、会いにきてくれたのは嬉しいわ。その子、やっぱり飼い主さんが居たのね、きっとさぞや心配していることでしょう。しっかりと、お家に送ってあげてくださいね」


「了解です、ミセス・ローズ。ご協力に感謝します」


 ローズお婆さん、近所じゃ有名なお婆さんだ。数年前、旦那さんが他界してからというもの、捨てられた子猫などを保護し、獣医の指示の元、適切な処置をして、適切な躾をし、時には里親を探すという心優しいお婆さんだ。

 彼女のその献身的な行為は、コルトタウンに住む猫好きの人々に賞賛され、今ではローズガーデンと呼ばれる、オープン猫カフェが、コルト中央にあるという話だ。

 ちなみに完全非営利営業だというから、頭が下がる話である。ちなみに、マスターはその事業に多大な寄付金をしている。マスターは完全に猫派なのだ。



『レイ、三丁目のおばさんと連絡が取れました。すぐギルドに迎えに来てくれるそうなので、ゴローちゃんを連れて帰還してください』

「了解。これより帰還する」


 俺は通信を切り、改めてゴローちゃんをジーっと眺める。丸々と太っているゴローちゃんは、ふてくされたような顔でこちらを睨んでいた。


「なるほど。ゴローちゃんだ」


 なんとなく、顔と名前が一致していた。





―エアリアルウィング―



「グォロォォォちゅわぁぁぁん! 探したのよぉぉ、こんなに痩せこけちゃって! ママ本当に心配したんだからぁぁぁ!!!」


 俺とエリシアは流石に顔を見合わせ、『嘘でしょ?』というリアクションを取ってしまう。 

つまりあのデブ猫は実際、さらに太ってたとでも言うのだろうか……。


「ありがとうねお兄さんたち、本当に助かったわ」

「いいえ、大した事じゃないですよ」

「もうママに心配かけちゃだめだよ? ゴローちゃん」

「なぅ」


 エリシアに頭を撫でられたゴローちゃんは、なんだか嬉しそうに目を細めていた。

ゴローちゃんはおばさんに抱かれ、家に帰っていく中でも、ずっとエリシアだけを見つめ、エリシアはゴローちゃんに向かって手を振っていた。


 ……まるで猫と会話してるみたいだなんて思い、俺はエリシアの見えないところで鼻で笑ってしまう。


「お疲れ様、レイ」

「疲れるかよ、あんな任務」


 俺は率直に、そしてぶっきら棒にそんな感想を口にしてしまったが、エリシアは特に気にする様子もなく、笑って応えた。


「ふふふ、そうだね。でも、おばさん嬉しそうだった」


 夕日に照らされるエリシアを見て、ふと呟いた。


「やっぱ、髪、もったいなかったんじゃないか?」


 エリシアの手配書が出回って1週間。彼女は腰まで下がっていたロングヘアーを、肩までばっさり切ってしまったのだ。


「ううん、いいの。これは私の、決意の表れだから」


 エリシアは短くなった髪の先端を、慈しむように、指に絡めて触れていた。


 その姿は、なんだかとても儚く、そしてどうしょうもなく、美しく見えてしまった。


「ふぅん、決意ねぇ?」


 まぁ、コイツにとっては新しい生活どころか、新しい世界で生きていく事にしたのだから、そういう願掛けも必要なのかもしれないな。気分転換にもなるだろうし……。


「…………」

「……ん? なんだよ」


 気がつくと、エリシアが思慮に耽る俺の顔を、下からじーっと覗き込むように眺めていた。


「レイってさ、もしかして髪の長い女性のほうが好きなの?」

「……ハイ?」


 唐突に、エリシアの口から飛び出た発言に、脳の理解が追いつかなかった。気がつけば、俺は間抜けな声を上げて首を右に傾けていた。


「だってね? だってね? マスターが私の髪を切ってくださったけど、鋏が入った瞬間、鏡に映ったレイの顔が、『ええぇぇぇぇ!?』って顔してたよ?」


 いや、確かにまぁそんな顔はしたと思うが……。


「いや、そりゃおまえ、『どれくらい切る?』『思いっきりお願いします!』『OK☆』のやり取りで、腰まであった髪を、いきなりばっさり肩まで躊躇無く行ったら、誰だって驚くだろうよ」


 俺の中での本心には、殆ど耳を貸していないのだろう。エリシアは人の顔を覗き込みながら、悪戯っぽく笑い、まるで畳み掛けるように追求してくる。


「ふぅん? ホントかなぁ。私ちょっと昔に、親友の女の子から聞いたことあるの。男性の中には、女性の髪が好きで好きでたまらない! っていう、髪フェチっていう趣向の男性が居るって! レイってばそうなのかなーって思っちゃった♪」

「あっあのなぁ! 人を変態みたいに言うなよ……」

「ほんと? ほんとに違うの? レイ、私の髪の毛欲しかったりしない? こっそり私の切った髪、持ってたりしない? きゃー♡ そんなレイ、こわすぎぃぃぃ!」


 いやいやいやいや、無いだろ。普通に無いだろそんな俺。


「んなわけねーだろ。はぁ、アホらしい。一生やってろ、ド天然」


 俺は呆れてため息をつきながら、ギルドの中へと戻ろうと歩き出す。


「ひっどーい! わたし天然じゃないもん!」

「ハイハイ」


 天然な奴ほど、絶対に言うようなテンプレ否定をスルーして、俺たちは順番にギルドの扉をくぐった。


「おう! お帰りエリシアちゃん。レイは帰ってこなくてもいいぞー?」

「うるせーよ馬鹿グレン」


 グレンの野次を無視して、俺は執務室でマスターにクエスト完了のハンコを押してもらい、報酬を受け取る。


 今回のクエスト、Eランククエストじゃ、大した報酬はもらえない。今回も7000n※レオニード王国通貨need(日本円と同額)にしかならなかった。


 まぁ基本中の基本だからな。これだけもらえただけでもラッキーな方なのだ。



 そして、広間でグレンの顔を見た時に、ある約束を思い出す。


「グレン、お前晩飯食ったか?」

「ん? いんや? まだだけど?」

「そっか。なら行くか? 『天々』」

「あ! 忘れてたぜ! あぶねー。タダ飯逃すところだった! ニッシッシッシッシ! じゃあ、レイ君にご馳走になろうかな?」


 なんてことだ、律儀に約束なんて守るんじゃなかった。こいつのアホ度を完全に計算していなかった。


「ちっ。言うんじゃなかった」


 俺は後悔を口に出した。


 そんなこんなで、俺はグレンと天々へと向かうのだった。



―高級焼肉店『天々』―



「いやぁ、タダ飯より美味い飯ってないでゲスなぁ! わっしゃっしゃ!」


 ビール片手に焼肉を平らげていくグレン。

かれこれ一時間。恐ろしいペースでこいつは焼肉を平らげていた。そろそろ4万オーバーといったところだろうか。ああ、切ない……。4万あったら投げナイフを何本購入できるだろうか? 新しい薬品だって購入できるかもしれない。


「あーそうかよ、俺はこんな苦虫のような焼肉を食うのは初めてだ……」

「そんな陰気な顔するなよ。お前、結構溜め込んでるんだろ?」


 ゲラゲラと笑いながら、グレンはビールをあおる。


「次に欲しい剣を手に入れるのに、多額の資金が必要なんだよ」


 俺はサニーレタスで肉を巻き、味噌とよばれる調味料につけて口へ運ぶ。


「……お前、精霊剣二本も所持してるくせに、まだ欲しいの?」

「それは間違いだ。入手はしたけど、封印されてる精霊と、俺の相性が悪くて使えない精霊剣が、あと3振ある。実にもったいない話なんだけどな。次のは精霊剣よりも格上。神刀の類だな」


 俺の話を絶句しながら聞いていたグレンだが、神刀を狙っているという話を聞いて、ついに飲んでいたビールを噴出した。


「おいおい冗談だろ。それ値段つくの?」


「つかないな。その神刀の封印されているダンジョンへ入る為の通行料が法外な値段するんだよ」


 俺は肉の追加注文をしつつ、霜降りの肉を網に並べていく。


「どこだよそれ」

「霊峰エンゼルクレイドル」

「はぁ!? あの邪竜の繁殖地で有名なエンゼルクレイドル!? 馬鹿かお前死ぬぞ!?」


 霊峰エンゼルクレイドル。天使の揺り篭と言われるその場所は、その名前から想像もつかないほど邪悪で、世界で最も冥府に近い場所と言われる。

 

 その霊峰の頂上は雲より高く、谷は光すら届かない。そこでは神が残したとされる武具やアイテムが多く発掘されている反面、一流の冒険者でも簡単に命を落としてしまう恐ろしい場所だ。


「大丈夫だよ、山には登らず、その下の『ヘルゲート』っていう洞窟のダンジョンに行く予定だから」


 行き先を聞いて、顔を真っ青にしたグレンが捲くし立ててくる。


「ヴァカだろ! おまえヴァカだろ! ヘルゲートこそ一番足踏み入れちゃいけないダンジョンだろうが! モンスターがぎっしり詰まったような死の遺跡だぞ!? あっという間に囲まれて、いくつのパーティが全滅したと思ってるんだ!?」

「真正面から行ったらそりゃ殺されるだろうな。だが俺はアサシンだ。もちろんコソコソいくさ。ちなみに、俺の師匠はあそこに行って帰って来てるぞ」

「そりゃお前……、ゼクスさんなら全然ありえるだろ」

「ま、今の調子で金を貯めたって、最低5年は掛かる。その間に修行ってやつかな」


 俺は焼肉を飯に乗せ、飯と一緒に口へ運ぶ。


「やっぱ高級店ってだけあるな。油のつき方が違う。苦虫は撤回するわ」


 肉を口に含んだときに、じゅわっと溢れ出す肉汁に、飯が絡んで、なんとも言えない美味さをかもし出していた。これは飯が何杯でもいけそうだ。


「そーいやよぅ、エリシアちゃんどうよ」


 グレンがトングでホルモンをひっくり返しながら、ぽつりと呟いてきた。


「ん? あー、まぁ戦場指揮官としてはこれからの経験次第だし、もう回復魔法の初歩は出来るようになったみたいだぞ? いっちゃんは最近修行のペース上げたよな? やっぱエリシアを意識して焦ってるのかな」

「かもなぁ。焦ってもしょうがないと思うし、いっちゃんは十分すぎるほど、努力してる。誰が見てもそう思うさ。ジークに、あまり無理しないように見てやってくれと、俺から言って置くわ。いっちゃんの訓練バディだしな。でも俺そこが聞きたかったんじゃないんだなぁ」


 グレンは再びぐびっとビールを飲み干し、お替りを注文する。


「じゃあなんだよ? 後現状としては、手配書の有効期限まであと4時間ってくらいか?」

「だーかーらぁ、お前が一人の男として、エリシアちゃんをどう思ってるかをだなぁ!」

「え。ド天然」

「そりゃお前のことじゃヴォケーーーー!!!」


 どう思っているかという率直な意見を述べているのに、なぜか興奮ぎみにつっこんでくるグレン。


 一体なんだってんだ?


 グレンは俺になんか説教を始めたが、俺は興味ないので完全スルーを決め込み、皿に残った肉を一度にどばーっと網に並べた。


 するとそこへ……。


「失礼します。エアリアルウィングの方でしょうか?」


 スーツ姿の胡散臭い兄ちゃんが、俺らのテーブルの前に来た。


「あン? そーだけど?」


 グレンが訝しげに、返事をした。だが、グレンが返事をする前に、俺は即座に理解した。こいつは堅気の人間ではない。


「ああ、なるほど。さっきから周囲の視線が集中しているなとは思ったよ。てっきり、グレンの食い方が尋常じゃないからだと思ってたが、どうもそうじゃないらしい」

「ん? どういうことだよレイ」


 俺は焼けた肉を頬張り、グレンに告げる。


「囲まれてんだよ」

「ふむ? で? あ、こらそれ俺の肉だぞ!」

「時々居るよな。そうやって誰の肉だ彼の肉だって、勝手に決めて文句言うやつ」


 グレンも俺も、全く意に介さず食事を続ける。


「……では、単刀直入に言わせていただきます」


 今までニコニコしてた兄ちゃんが、いきなりコメカミに血管を浮かべた極悪人面へと豹変する。


「エリシア皇女は何処だ」


 そのドスの聞いた声にも、俺たちは一切動じず飯を食い続ける。まぁ無視するのも、余計に五月蝿そうなので、無駄だろうけど、一言だけ告げてやった。


「「知らね」」


 そして案の定、その程度では引き下がらない胡散臭い強面の兄ちゃん。


「もうネタは上がってんだよ!……なぁに、タダでとは言わねぇさ。報酬の3分の1をてめぇら二人にやろう。エリシア皇女を渡せ!」


 俺たちの周りにヤクザみたいな奴らがぞろぞろと集まる。おっと、訂正しよう。ヤクザみたいではない。ヤクザだった。


「すいませーん、ビールお替りー。って店員逃げてない!? おーい、おねーさーん! ビールちょーだいよぅ!」

「もういいじゃんかグレン。俺の財布も、今日はそんなに厚くないぞ?」


 俺は伝票に書かれた値段を見て、ため息をついた。


 刹那、ガッシャンという食器が割れたような大きな音を立てて、俺たちのテーブルに、深々と奴の獲物であろう刀が突き刺さる。


「てめぇら、どうやら痛い目を見ないと分からないらしいな」


 おかげでテーブルは滅茶苦茶。焼いてた肉は煤だらけになった。


「……こいつらさぁ、俺らが誰だか、わかってねぇらしいぞ? レイ。どーする? ちょっと教育しちゃう?」


 どうやらそのようだ。少なくとも俺が奴らの立場なら、グレンにちょっかいなんて出そうとも思わない。正直に白状しよう。白兵戦において、俺がコイツに勝てる確率なんてほとんど無いと言っていい。殺るなら暗殺しかないだろう。


「ま、食後の運動としゃれ込むか?」


 俺の提案に、グレンはため息をついた。


「全く。俺はまだ食い足りないってのに。あーあー、最高品質の肉が煤だらけだぜ。もったいない。……んじゃ、せーのでいくぞ?」


 俺たちはテーブルの両端をつかんだ。もちろんテーブルは金具で固定されてるが……。


「「せーの!!!」」



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