―プロローグ―
はじめまして、ちゃーりーと申します。まずはじめに、自分の作品に目を止めて頂いた事に感謝したいと思います。どうもありがとうございます。長い作品だとは思いますが、もし付き合っていただければ幸いです。
──この世界には、科学と魔術が混在する。
そんな世界には、人間だけでなく、エルフや獣人とよばれる異種族。そしてモンスターや精霊。ドラゴンなどの幻獣も存在し、多種多様の文化、そして生態系を築いている。
その世界を、人はイグニスと呼んでいた。
そんなイグニスにおいて、最も広い面積を持つ大陸。ラグナ大陸がこの物語の舞台である。
ラグナ大陸は、イグニスと言う世界の縮図と言ってもいいだろう。たった一つの大陸に、多種多様の種族や人種が、それぞれの文化、文明を発展させてきた。
科学文明、魔法文明。または、その両方を取り入れた文明など様々ではあるのだが、当然大小さまざまな国が乱立した。
そして彼らは当然のように土地や富を奪い合い、殺し合った。何千何百年と、幾度も戦争を繰り返し、幾つもの国がぶつかり合い、消えては拡大し、そして分裂する。
宿命付けられたかのように、争いが繰り返されてきたラグナ大陸であったが、ある時レオニード帝国という国家が幾多の小国を飲み込み、統一するに至った。
しかしその統一は、人々が待ち望んだ平和とは程遠いものであった。
レオニード帝国のレオニード至上主義思想は、他種族他民族を不当に虐げるものであり、到底受け入れられるものではなかった。そのため、レオニードに対し不満を持つ国々は連合国軍を結成し、レオニード帝国に対して反旗を翻したのだ。
当然。当事のレオニードの帝王。ルキフィス=レオニードは、全軍を持ってしてこれを制圧しようとした。
帝国軍と連合国軍の真っ二つに割れ、ラグナ大陸史上最悪の大戦の火蓋が切って落されようとした。──まさに、その前夜。
『帝王ルキフィスの暗殺による崩御』
まさに青天の霹靂。突如として両軍に知らされたその一報に、大陸に生きる全ての人々が耳と目を疑った。
その暗殺の首謀者こそ、ルキフィスの一人息子であるはずのロキウス=レオニード王子であり、彼が作り上げた最強の部隊、『特殊任務部隊アサシン』によるものであったからだ。
彼らはその名の通り、諜報と謀略。そして何より暗殺を得意とし、白兵戦などの戦闘技術や魔術、そして重火器や兵器といった科学技術にも精通するレオニードが誇る最強の精鋭部隊だ。
レオニードがラグナ大陸を統一できたのも、彼らの暗躍によるものが大きかった。そんな最強の部隊を、ロキウスは父であるルキフィスへと差し向けたのだ。
こうして、世界大戦と呼ばれたであろう戦は回避され、現在。レオニード帝国はレオニード王国と改名され、周辺諸国と和平を結ぶ事により、『地域限定的』な平和を享受することとなった。そしてアサシン達は、今日もどこかで暗躍を続けている。
──『彼』もまた、そんなアサシンの一人だった。
無造作な髪形をした黒髪に黒い瞳の彼は、竜の革製の黒いプロテクターの数々を乱雑に脱ぎ捨て、ソファーに気だるく寝転がりながら、レオニード王国に普及しはじめた最新科学技術の結晶である『テレビ』から流れる『ニュース』をぼーっと眺めていた。
彼こそがこの物語の主人公、レイ=ブレイズである。そして彼が抜け殻のように呆けているその場所は──。
「お電話、ありがとうございます! 冒険者ギルド、『エアリアルウィング』マスターの、セイラがお受けいたします♪」
彼の名は、レイ=ブレイズ。職業は『冒険者』にして、『元暗殺者』。特殊任務部隊アサシンのメンバー『だった』青年だ。
「あ、ギルド連盟の! はい、お世話になっております! ──はい。え? はぁ、またですか……。ええ、今からですと、30分以内にはなんとか。ええ、それでは後程……。はい、失礼いたします。──レイちゃーん? お・し・ご・と・でーす♪ 内容は、要人である人質グループの奪還と、犯人グループの制圧です♪ はい、聞こえたらさっさと仕度してねー」
「──チッ。またかよ……。最近多くないですか? その手の案件」
彼は気だるそうに上体を起こし、慣れた手つきで装備を整えて行く。そして最後に、先日購入したばかりのダガーをクルクルと指先で弄びながら腰の鞘に納め、ソファーに掛けてあった漆黒のフードマントを羽織り、彼は今日も仕事へ向かう。
「コストも犠牲も最小限に押さえられて、確実に事件を解決できるって、信頼してもらえてる証拠じゃない。がんばってね☆」
「コスト押さえさせないでください。成功報酬の上乗せを請求します」
「そうしてあげたいのは山々なんだけどねぇ、先方、お金ないのよねぇ。あ、ちなみに場所はリブール大使館よ」
「あーもう! あの国はもっとまともな警備つけられねーのかよ! 今月だけで何度目だよ!」
「だから言ってるでしょ? お金ないのよ、あの国は……。ほらほら、行ってらっしゃい!」
「ったくもう。イエス、マイ・ロード」
彼はまだ知らない。やがて彼は、一人の女性と出会う事になる。
──これは、とある冒険者ギルドに所属する、ある暗殺者の物語だ。