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第二章:未知の世界

診察がおわって席に戻り、再び眠りに着こうと思ったが、そう簡単にいくものでもない。好奇心と不安感がせめぎあって、とても眠っていられる心理状態ではなかった。


「今さら色が見える、なんて言われてもなぁ………」


頭を抱える、という言葉の意味がわかった。人は大きい悩みを抱えると頭を抱えるのだ。わりと真面目に。そんな状態の灰に近づく影があった。


「あの………もしかして(かい)くんじゃない?」


少し驚いて顔をあげる。そこには同い年くらいの少女が立っていた。


「そう………ですけど、どうして俺を?」


見た目だけ言えば、結構、いや、かなり可愛い部類に入るであろうその少女は、俺が"淡墨 灰"だと知るとホッとした様子で続けた。


「やっぱり灰くんだったか!いやぁ、久しぶりだね。どう?元気にしてた?」


ものすごい勢いでまくし立てられた。


「あれ、どうしたの?反応無いけど………。もしかして、覚えてない?」


ご明察である。


「ごめん、あんまり昔のこと、覚えてなくって………」


「えぇー、そんなぁ。菜乃花(なのか)って言っても覚えて………ない?」


「………小学校のとき、一緒だった?」


恐るおそる聞いて見た。そういえば、小さい頃よく話しかけてきてくれた女の子が居たような気がした。反応は良好、合っていたようだ。


「そうそう!こんなところで会うとはねぇ。なんかあったの?なんかお悩みの様子だったけど」


「今日から検査入院なんだよ」


「それはアレ?例の………」


「うん、色覚障害の。それで、手術してみないかって言われたんだけどさ」


「えっ、いいじゃん!受けてみたら?」


簡単に言ってくれるものだ。俺は医師から説明されたリスクを説明した。


「ふぅん、失明ね。確かにちょっと怖いかも」


「そうだろ?今まで"白"ってのと"黒"ってのだけの世界で生きてこれたんだし、失明するくらいならこのままでいいんだよ」


そう、色のある世界とやらは気になるが、わざわざリスクを冒す必要は無いのだ。俺はそう思っているが、彼女は俺と反対の意見を述べた。


「でもさ、このまま色が見えずに一生を終えるより、少しでも可能性があるなら、手術を受けた方がいいと思う。今はわからないと思うけど、この世界は君の思っている以上に綺麗なんだよ?」


菜乃花は世界の美しさを重視する性格だった。色々なものごとに美しさを見出だし、それを言葉にすることのできる少女であった。


「そう………なのかな?」


「きっとそうだよ!手術、受けた方がいいって!」


しかし、やはり一歩を踏み出せない。色を見る理由が、今の灰には見出だせなかった。


「灰さーん、検査の時間になりました。脳神経外科までお越し下さーい」


待合室にアナウンスが鳴り響く。


「あっ、もう行かないと」


「そっかー。うん、じゃあまたねー」


こうして灰はその日、菜乃花と別れた。ちょうど入れ違うように菜乃花の母親らしき人がやって来たようだった。


「菜乃花、あの男の子は?」


「あ、覚えてない?小学校で一緒だった灰くんだよ。そうそう!その灰くんなんだけどね…」


灰と反対方向へ歩みだした朝比奈親子だが、菜乃花の足取りはおぼつかなかった。

インスピレーションが降っている間に書き上げてしまわねば。

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