3.ディベート部の実力
「先輩、どんな作戦なんですか?早く教えてくださいよ。」
「落ち着け松田、まず俺たちの目指す最終的な目標を設定する。」
「目標?」
「ああ、一つ目は異世界人に頼らない世界にすることだ。その為に異世界人をこの世界から追い出す。二つ目は王様に喝を入れる。」
「でも先輩、異世界人が居なくなった後にまた魔王が現れたりしたらこの世界は滅亡しちゃいますよ。あと王様に喝を入れる理由も僕にはわかりません。」
「この世界の人達が本当に魔王に勝てないって思うか?俺はそうは思わない。工夫して、団結して、努力すればこの世界の人達だけでも勝てると思うんだ。そして人達が一つになる為には強力なリーダーが必要だ。だからあの腑抜けた王様に喝を入れるんだよ。」
「先輩の言いたいことはわかりました。でもそもそもどうやって異世界人を追い出すんですか?」
「そこはまだ決まってない。」
「…」
「…」
「へ?いやさっき[勝てば官軍作戦]とか言ってたじゃないすか。」
「あー、あれはなんかノリで言っちゃった。要はどんな汚い手段でもいいから異世界人追い出そーってこと。」
「ノリってなんすか!何も考えてなかっただけじゃないですか!」
「うるせー松田!ほとんどこの世界の情報もない状態で作戦なんか立てられるわけねーだろ!文句なら対案出してから言えよ!」
「あっ先輩逆ギレっすか。やるならやりますよ。俺これでもムエタイやってましたから!先輩くらい余裕ですよ!」
「俺だって格闘技くらいやってたわ!ディベート部舐めんなよ!」
「それって言葉の格闘技じゃないですか!くらえ!タイキック!」
二人は部屋のベッドの上で取っ組み合いを始める。
そこにドアを叩く音が、
コンコン、ガチャッ
「山崎さん、松田さん、ちょっとお話があって、入りま……」
ガチャッ
ドアが閉まる。
「ちょっと待ってぇぇぇ!無言でドア閉めるな!」
二人はすぐにケンカをやめタケルに近づく。
「すっすいません!僕そういう趣味ないんでっ!本当勘弁してください!」
「「俺(僕)にもそういう趣味ねえよ!」」
二人はただケンカしてただけだと伝える。タケルも一応納得する。
「それでタケルさん。話ってなんですか?」
「お二人はまだこの世界に来て間もないでしょう?だから色々知りたいことがあって。」
「知りたいこと?何ですか?」
「お二人の能力ですよ。この世界に来た時、何か戦う力をもらってるでしょう?」
(先輩どうします?僕等なんも能力ないって正直に告白しますか?)
(いや、ここは俺に任せろ!)
俺はある秘策を思いつく。
「タケルさん、能力を知りたいってなら広いスペースで手合わせでもしないか?」
「…わかりました。ではついて来て下さい。」
タケルに案内され3人は城の中庭に着く。
(先輩、本当に大丈夫何ですか?まともにやりあったらゴリゴリの文系の先輩に勝ち目ないですよ?)
(任せろ!ディベート部をなめるな!)
二人は中庭の中央にある程度離れて立つ。
「では山崎さん行きますよ。まぁでも能力を知るのが目的なので山崎さんから攻めて来ていいですよ。」
「攻める?もうそんなのとっくに済ませたよ。」
「どういうことですか?僕はまだ傷一つ付いてませんよ!」
「お前は、この戦いが一対一で始まったと思っているだろう?それは違う、本当はこの戦いは百対一で始まった。」
「何を言ってるんです!最初っから一対一ですよ!もし百対一ってんなら残りの九十九人はどうなったんですか!」
タケルは少し苛立ち始める。
しかしその態度はすぐに怯えに変わる。
「九十九人は俺がすでに過去で倒した。俺の能力はバックトゥーザ○ーチャー、過去や未来に好きに移動できる。」
「なっなんだと⁈じゃあ俺が残り九十九人を覚えてないのも…」
「そうだ、過去で倒した。そいつらは過去で消滅したからお前の記憶から消えたんだ。」
「クッソ、そんな能力強すぎる。僕のドラゴンブレス(国一個滅ぶくらいの威力)でも絶対防御(核爆弾100個くらいなら防げる)でも勝てない、能力を得る前の僕を倒されたら終わりだ。」
タケルはその場に崩れ落ちる。
「僕の…負けです。」
「お前も頑張った方だと思うよ?あとはせいぜい努力しな。」
こうして俺はハッタリのみでタケルを倒した。
ちなみにガチでやりあってたら絶対負けてた。
「先輩流石っすね!正直ディベート舐めてましたよ。でも相手もよく信じましたね。」
「信じるに決まってんだろうが、こんな荒唐無稽な話でもチート能力を持っているタケルには信憑性のある話に聞こえるんだよ。」
「あの…山崎さん。」
(やばっ、聞かれてたか⁈)
俺の心配をよそにタケルは急にお辞儀をする。
「僕を弟子にして下さい!」
はい?
読んでくれてありがとうございます!
最近短編も書いてみました。
5分もかからず読めると思うのでよかったら読んでみて下さい!